第11章ーおまけ12
学園祭が終わった後。
私達は、生徒だけが参加できる特別なイベント――後夜祭に来ていた。
会場の中央では、生徒達だけで結成されたバンドが演奏を披露している。軽快な音楽が響き渡る中、私達はテーブルを囲み、ジュースを飲んだり、クレープを食べたりしながらのんびりと過ごしていた。
メンバーは私、マヒロちゃん、フィーちゃん、そしてソンジさん。
女の子だけの、ちょっと珍しい組み合わせだ。
『結局、サダメ君起きなかったんだ』
フィーちゃんが、少し残念そうに尋ねてくる。
「うん。まあ、ひょっとしたら今頃起きてるかもしれないけど……」
私は手元のジュースを一口飲んでから、苦笑した。
「起きたばかりのサダメを連れてくるのも、ちょっと申し訳ないしね」
魔闘祭が終わった後も、サダメはずっと眠ったままだった。
あれだけ激しい試合を続けたのだから、疲れてしまうのも当然だと思う。
私も許可をもらって、サダメを寮の部屋まで送っていった。
ベッドに寝かせた後も、しばらく目を覚ます気配はなかった。
起こしてまで後夜祭に連れてくるのは、さすがに可哀想だ。
だから、そのまま休んでもらうことにした。
「今日はゆっくり休んだ方がいいよね」
そう呟きながら、私は会場を見回す。
後夜祭は学園祭とは違って、クラス単位で出し物をする必要がない。
生徒達がそれぞれ自由に集まり、好きなことを披露する。
さっきから聞こえてくるバンドの演奏だけじゃない。
魔法を使った劇や、派手な演出を取り入れたダンスまである。
普段の授業では見られないような生徒達の一面を見ることができて、会場はとても賑やかだった。
学園祭の時はクラスごとに準備するから、どうしても決められた役割がある。
でも、後夜祭は違う。
友達同士で集まって、好きなように楽しめる。
だからなのか、舞台に立っている人達も、観客以上に楽しそうだった。
そんな賑やかな会場の一角で、私達も他愛のない話に花を咲かせていた。
話題の中心は――やっぱり魔闘祭。
……と言っても、ほとんどサダメの話だったけど。
「あれだけ無茶してたもんね……」
思い返すだけでも、少し胸が痛くなる。
戦っている時は夢中だったから気にしていなかったけど、今になって考えると、本当に危ない場面が何度もあった。
それだけ頑張ったんだから、今くらいは何も考えずに休んでほしい。
『でも、サダメ君がいないとちょっと寂しいね』
「……うん」
フィーちゃんの言葉に、私は小さく頷いた。
その時だった。
「そういえば、ギリスケ殿もおらぬでござるな?」
マヒロちゃんが、周囲を見回しながら首を傾げる。
「誘わなかったのでござるか?」
「あー……ギリスケは……」
私は少しだけ言葉に詰まった。
正直に言えば、誘わなかった。
「まあ、いいんじゃない?」
「いいのでござるか?」
「だって、あいつ一人でこの中に入ったら、何し出すか分かんないし……」
私がそう言うと、フィーちゃんも苦笑する。
『うん。それはあり得る。サダメ君がいないと、セクハラとか平気でしてきそう』
「せくはら……とは、なんでござるか?」
マヒロちゃんが不思議そうに首を傾げる。
「えっと……」
どう説明したものか迷っていると、ソンジさんがあっさり口を開いた。
「お尻とか触ったり、下品なこと言ったりすることだよ」
「ソンジさん、真面目に答えなくていいですよ!?」
思わずツッコミを入れてしまう。
マヒロちゃんは「なるほど」とでも言いたげに頷いているけど……。
お願いだから、変なことを覚えないでね?
それはともかく。
サダメ君がいない理由が分かったところで、今度はギリスケの話題へと移っていった。
正直、サダメ君がいない状態でギリスケを誘うことには、少し抵抗があった。
ギリスケは悪い人ではない。
……たぶん。
でも、あの性格だ。
こういう大勢の女の子が集まっている場所に一人で放り込んだら、何をしでかすか分からない。
マヒロちゃんは、そういうことには疎い。
ソンジさんは……まあ、ソンジさんも似たようなところがある。
となると、私とフィーちゃんの二人で止めることになる。
それはちょっと、いや……かなり大変そうだった。
もっとも、ギリスケなら私達が誘わなくても勝手に来そうな気もするけど。
「そういえば、魔闘祭の時も来ていなかったようでござるな」
『ああ、そういえば……』
マヒロちゃんの言葉に、フィーちゃんが思い出したように呟く。
『なんか用事があるとか言ってたね』
「用事?」
私は首を傾げる。
そういえば、私達が参加していた魔闘祭にも、ギリスケは姿を見せていなかった。
こういうイベントなら、真っ先に騒ぎそうなタイプなのに。
もしかして、魔闘祭みたいな真剣勝負には興味がないのかな?
そんなことを考えていると――。
「ま、大方、学園中を回って、あちこちで女の子をナンパしてたんじゃないかい?」
ソンジさんが、何でもないことのように言った。
「『あー……ありえそー』」
私とフィーちゃんの声が綺麗に重なる。
……否定できない。
むしろ、簡単に想像できてしまう。
こういうイベントの日なら、普段は話す機会のない女の子とも自然に交流できる。
ギリスケからすれば、絶好の機会なのかもしれない。
「本当に、ギリスケってば何やってるんだろ……」
呆れながら呟く。
すると、ステージから一際大きな歓声が上がった。
どうやら次の演目が始まったらしい。
私はそちらへ視線を向けながら、ジュースを一口飲む。
――まあ、今は考えても仕方ないか。
せっかくの後夜祭だ。
今日は余計な心配なんて忘れて、みんなと一緒に楽しもう。
……サダメがここにいたら、もっと楽しかったんだろうけどね。




