第11章ーおまけ5
「え? この人達って、たしか……」
背後から一緒に写真を覗き込んでいたミオの声が、微かに震えた。
振り返ってみれば、ミオの顔からは先ほどまでの穏やかな表情がすっかり消え失せている。
血の気が引いたように、真っ青になっていた。
「ああ……」
どうやら、ミオも思い出したらしい。
そりゃそうだ。
忘れられるはずがない。
あの二人――バッドとロンドに絡まれた時、ミオも相当怖い思いをしていた。
名前までは覚えていなくても、あの顔だけは嫌でも記憶に残っているのだろう。
……そして。
「はっ!?」
写真を見つめていた俺の背筋に、別の意味で冷たいものが走った。
「あの二人が、貴方達の……」
俺は、目の前に立つ二人の老紳士へ視線を向ける。
さっきから聞いていた。
この二人は、バッドとロンドの父親だ。
つまり――。
「…………」
ヤバい。
直感的に、そう思った。
目の前の二人は、見るからに身分の高そうな人間だ。
身なりは上品で、立ち居振る舞いにも隙がない。
王族とまではいかないにしても、相当な地位にいる人達なのは間違いないだろう。
そんな人間が、わざわざ俺を呼び止めてきた。
しかも。
自分の息子が、俺とミオに何をしたのかを知った上で。
……嫌な予感しかしない。
「まさか……」
頭の中に、嫌な想像が次々と浮かんでくる。
息子が俺達にやったことへの報復。
あるいは、貴族の権力を使った圧力。
もしかすると、学園にまで何か手を回してくるつもりなのかもしれない。
最悪の場合――。
ここで俺達を脅してくる可能性だってある。
バッドとロンドがあれだけのことをしてきたのだ。
その親まで同じような人間だったら……。
「…………」
俺は無意識に拳へ力を込めた。
まずい。
何をしてくるか分からない。
しかも、ここは学園祭の真っ最中だ。
周囲には大勢の生徒や来場者がいる。
こんな場所で揉め事なんて起こしたら、せっかく皆で楽しんでいる学園祭が台無しになってしまう。
できるだけ穏便に済ませたい。
でも――どうすればいい?
相手が何を考えているのか、全く読めない。
「サダメ……」
ミオが小さな声で俺の名前を呼ぶ。
その声からも、明らかに怯えているのが分かった。
俺はそんなミオを安心させるように、ちらりと視線を向ける。
大丈夫。
何かあったら俺が――。
そう考えた、その時だった。
「…………」
目の前に立っていたグッドさんが、ゆっくりと息を吐いた。
そして。
「……すまなかった」
「…………え?」
一瞬。
何を言われたのか、理解できなかった。
グッドさんは深々と頭を下げている。
まるで、こちらに非礼を詫びるかのように。




