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転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
11章 魔闘祭編

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第11章ーおまけ2

 「…………え?」


 その言葉を聞いた瞬間。


 拙者の思考は、完全に止まった。


 ――試合に、出られない?


 一体、誰が?


 そんなことを考えるまでもない。


 医務室の寝台で眠っている、サダメのことでござる。


 「…………」


 拙者は、眠り続けるサダメへ視線を向ける。


 先ほどまで、普通に話をしていた。


 いや――普通、というのは少々違うか。


 身体はボロボロだった。


 一回戦でも限界寸前まで追い込まれ、準決勝ではさらに激しい戦いを繰り広げた。


 それでもサダメは立ち上がった。


 何度倒れても。


 何度傷ついても。


 最後まで諦めず、勝ち上がった。


 だから拙者は、当然のように考えていた。


 ――決勝で、サダメと戦う。


 それが当たり前だと思っていた。


 互いに全力を尽くし、互いの持てる力をぶつけ合う。


 そして、どちらが強いのかを決める。


 魔闘祭に出場した時から、ずっと楽しみにしていた。


 それなのに――


 「サダメは……決勝に、出られぬのでござるか?」


 自分でも驚くほど弱々しい声が漏れた。


 「ええ。残念だけどね」


 医療班の女性は、静かに首を横へ振る。


 「もう限界がきてるのよ。身体的にも、精神的にも」


 「…………」


 「一回戦の時点でも、かなり疲弊していた。そこから準決勝まで戦ってるんだから、これ以上無理をさせるわけにはいかないわ」


 そう言われ、拙者は言葉を失った。


 確かに、その通りでござる。


 サダメの身体は、見るからに満身創痍だった。


 それを見ていなかったわけではない。


 むしろ、誰よりも近くで見ていた。


 それでも――


 「しかし……決勝までは、まだ一時間あるでござる」


 決勝戦は、試合場の修繕や選手の休養を考慮して一時間後に予定されている。


 ならば。


 その一時間で少しでも休めば――


 「一時間じゃ足りないわ」


 「……っ」


 あっさりと否定された。


 「今の彼に必要なのは、少し休むことじゃない。ちゃんと身体を休めて、眠って、回復することよ」


 「…………」


 「それに、理事長からも許可をもらっているわ。医療班としては、これ以上彼に戦わせることはできない」


 理事長殿まで……。


 そこまで聞いてしまえば、反論などできなかった。


 サダメ自身が戦いたいと言ったとしても。


 拙者が戦いたいと願ったとしても。


 今のサダメを戦場へ戻すことが、正しいとは思えぬ。


 「念のため、睡眠促進の魔法も施してあるからね。少なくとも、あと四、五時間は起きないと思うわ」


 「なんとっ!?」


 思わず声が裏返った。


 そこまでしていたとは。


 「…………そう、でござるか」


 拙者は寝台の方へ視線を戻す。


 サダメは何も知らず、静かに眠っている。


 その寝顔を見ていると、胸の奥が妙に重くなった。


 決勝を戦えない。


 その事実が、悔しくないと言えば嘘になる。


 拙者は、サダメと戦いたかった。


 強くなったサダメと、真正面から刃を交えたかった。


 勝ちたかった。


 そして――


 負けたなら、心の底から悔しがりたかった。


 だが。


 「……無理をしてまで戦ってほしいわけでは、ないでござる」


 口に出した言葉は、自分自身に言い聞かせるようだった。


 サダメが元気になれば、それでいい。


 そう思っている。


 思っている、はずなのに。


 「……でも」


 どうしても、納得できぬ。


 せっかくここまで勝ち上がったのだ。


 あと一試合だった。


 あと一試合だけだったというのに――。


 その時。


 ピンポンパンポーン。


 「ッ!?」


 突然、医務室に設置された拡声器から電子音が鳴り響いた。


 嫌な予感がした。


 そして、その予感は――最悪の形で的中する。


 『えー、魔闘祭《マジル・フェスティバル》実行委員会よりお知らせです』


 嫌な予感が、確信へ変わっていく。


 『本日一時間後より予定しておりました魔闘祭決勝戦ですが――』


 「…………」


 拙者は息を呑んだ。


 『サダメ・レールステン選手の出場が困難と判断されたため、マヒロ・トーエン選手の不戦勝となりました』


 「…………」


 頭の中が、真っ白になる。


 『よって、この後の予定を繰り上げまして、表彰式を執り行いたいと思います』


 「…………」


 不戦勝。


 その四文字が、何度も頭の中を駆け巡る。


 不戦勝。


 つまり――


 拙者の勝ち。


 魔闘祭優勝。


 念願だった大会の頂点に立った。


 それなのに。


 「…………嬉しく、ない」


 ぽつりと呟いた。


 勝った。


 確かに勝った。


 だが、これではない。


 拙者が欲しかったのは、こんな勝利ではなかった。


 「…………」


 気が付けば、膝から力が抜けていた。


 そのまま、ぺたんと床へ座り込む。


 「マヒロ?」


 ミオが心配そうに声を掛けてくる。


 だが、今の拙者には返事をする余裕すらなかった。


 「…………納得いかぬ」


 拳を握る。


 「納得いかぬでござる……!」


 そして――


 「納得いかぬでござる~~~!!!」


 拙者の悲痛な叫びが、医務室いっぱいに響き渡った。


 サダメは、まだ眠っている。


 当然、返事はない。


 ……それが、余計に悔しかった。

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