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転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
11章 魔闘祭編

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第11章ー117

 「【上限解放《アミリース》・伍《フィフス》】!!」


 ――最後の段階を、解放する。


 背中の太陽の紋様が、ゆっくりと回転した。


 その瞬間。


 「……ッ!」


 全身を、凄まじい熱が駆け抜けた。


 四度目の解放でさえ十分に熱かった。


 だが、五度目はその比じゃない。


 鎧の奥に蓄積されていた太陽の魔力が一気に解放され、生身の身体へと容赦なく伝わってくる。


 「ぐっ……!」


 歯を食いしばる。


 生身の状態で受けていた頃よりは、鎧のおかげで多少マシになっている。


 それでも、熱い。


 熱いなんてもんじゃない。


 このまま数分も耐え続ければ、戦う前に俺の方が倒れてしまいそうだ。


 ……けど。


 「悠長にしてる場合じゃない……!」


 ここで止まるわけにはいかない。


 頭上では、天輪太光玉《サンライト・ヘヴール》が今も輝いている。


 その光によって吹雪は消え、ようやくアラガとの間を遮るものはなくなった。


 だったら――。


 今度こそ決める。


 「天を巡る万光よ、我が身に宿れ」


 俺は腰を落とし、右拳を強く握り締める。


 拳へ魔力を集中させる。


 全身に巡る太陽の魔力を、右腕へ。


 さらに、そこへ自分自身の力も限界まで上乗せする。


 これが最後だ。


 次の一撃に、今の俺が出せる全てを叩き込む。


 「……凍てつく壁よ、我が身を守り通せ!」


 その瞬間、アラガも詠唱を始めた。


 やっぱり、そう来るか。


 吹雪という最大の防壁を失った以上、奴だって俺を止めるために全力を出してくる。


 「闇を裂く燦きとなりて、この拳に集え!」


 右拳に太陽の魔力が集束していく。


 拳そのものが眩しいほどの光を帯び、周囲の空気まで熱で歪んで見える。


 同時に、背中の噴射口にも魔力を注ぎ込む。


 できる限り。


 本当に、できる限り全部だ。


 次の瞬間。


 背中から噴き出した炎が、一気に勢いを増した。


 ゴォォォォッ!!


 まるでロケットの噴射。


 身体が今にも前へ飛び出してしまいそうになる。


 だが、まだだ。


 まだ詠唱が終わっていない。


 まだ――。


 「堅城《けんじょう》の如き防壁を築け!」


 アラガの声が響く。


 「【無限氷壁《アイール・インフィニット》】!!」


 ――瞬間。


 目の前に巨大な氷壁が出現した。


 一枚。


 二枚。


 三枚――。


 次々と。


 まるで地面から巨大な氷の城壁が生えてくるかのように、何重もの氷壁が俺の前へと立ちはだかっていく。


 見渡す限り、氷。


 分厚い氷の壁が、何枚も何枚も連なっている。


 一枚だけでも十分すぎるほどの厚さだ。


 それを何十枚も重ねて、俺の前に並べている。


 ここまで来ると、もはや防御というより攻撃にすら見えてくる。


 正面には、難攻不落の氷の城壁。


 なら、横から回り込めばいい。


 ……いや、駄目だ。


 今の噴射量じゃ、そんな細かい軌道修正はできない。


 速度を落とす余裕もない。


 そもそも、俺自身の体力も魔力も限界に近い。


 ここで余計なことをしている時間なんて――一秒もない。


 俺は拳をさらに強く握り込む。


 いける。


 ここまで来たんだ。


 俺なら――。


 この拳なら、絶対にいける!


 「爆ぜよ!!」


 太陽の魔力が、右拳で爆発的に膨れ上がる。


 「【燦光爆拳《サンライト・インパクト》】ォォォォォォ!!」


 詠唱が終わった瞬間。


 背中の噴射口から、凄まじい炎が噴き出した。


 「うおおおおおおおおお!!」


 身体が弾丸のように前へ飛び出す。


 速い。


 速すぎる。


 視界が一気に流れていく。


 そして――。


 最初の氷壁が目前まで迫った。


 「はあああああ!!」


 俺は右拳を、全力で振り抜く。


 ドゴォォォン!!


 拳が氷壁へ激突した瞬間、巨大な亀裂が走った。


 そして――。


 バキィィィン!!


 一枚目の氷壁が、粉々に砕け散る。


 「よしっ!」


 いける!


 このまま全部ぶち抜く!


 「うああああああああ!!」


 二枚目。


 ドゴンッ!!


 三枚目。


 バキィィィン!!


 四枚目。


 ズガァァァン!!


 止まらない。


 止まってたまるか。


 俺は噴射の勢いを維持したまま、次々と氷壁へ拳を叩き込んでいく。


 「うああああああ!!」


 五枚。


 六枚。


 七枚。


 その全てを、正面から粉砕する。


 だが――。


 「……ッ!」


 ほんの僅かに、拳が重くなった。


 威力が落ちている。


 これまで破壊してきた氷壁の一枚一枚が、確実に俺の勢いを削っている。


 それでも、まだ止まらない。


 「まだだあああああ!!」


 八枚!


 九枚!!


 十枚!!!


 次々と氷壁が砕け散る。


 視界の先にいるアラガとの距離が、確実に縮まっていく。


 あと少し。


 もう少しだ。


 「はあああああああ!!」


 だが、拳の威力はさらに落ちていく。


 十枚もの氷壁を破壊したことで、最初に比べて明らかに勢いが衰えている。


 それでも――。


 「まだ……いける!」


 十一枚目!


 ドガァァァン!!


 十二枚目!


 バキィィィン!!


 そして――。


 十三枚目!


 拳を叩き込む。


 バキィィィィィン!!


 最後の氷壁が砕け散った。


 「ッ!?」


 その瞬間。


 目の前に、アラガの姿が現れた。


 「――いた!」


 ようやく。


 ようやく届く距離まで来た。


 拳の威力は、もう最初の頃とは比べ物にならないほど落ちている。


 それでも。


 まだ、拳は生きている。


 あと少し。


 あとほんの僅か。


 「届け……!」


 俺は残った全ての力を右拳へ叩き込む。


 「届けぇぇぇぇぇぇ!!」


 身体ごと前へ突っ込む。


 右拳を、真っ直ぐに突き出す。


 「はあああああああああああ!!」


 そして――。


 「がっ!?」


 拳が、アラガの腹部へ突き刺さった。


 確かな感触が、拳を通して伝わってくる。


 ――届いた。


 「……っ!」


 俺は息を呑む。


 十三枚。


 十三枚もの氷壁を、真正面からぶち抜いて。


 ようやく――。


 俺の拳が、アラガへ届いた。

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