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転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
11章 魔闘祭編

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第11章ー109

 全身を覆う、真紅の鎧。


 肩から腕。


 胸から腰。


 そして脚に至るまで、身体を覆い尽くす赤い装甲。


 その姿は、騎士が身に纏う鎧にも似ている。


 だが――明らかに違う。


 普通の鎧なら、これほどまでに身体へ密着した形状にはならない。


 無駄な装飾を極限まで削ぎ落とし、細身に仕上げられた装甲。


 鋭く、それでいてどこか獣のような力強さを感じさせる。


 そして、最も目を引くのが――胸部だ。


 そこには、炎のたてがみを思わせる獅子の頭が刻まれている。


 「……獅子……?」


 思わず呟く。


 だが、それだけではなかった。


 背中。


 そこに浮かんでいるのは――巨大な太陽の紋様。


 まるで本物の太陽を閉じ込めたかのような、強烈な光を放っている。


 その光は、吹き荒れる吹雪すら照らし出し、白銀の世界を赤く染め上げていた。


 「……なんだよ、それ」


 無意識に、一歩後ずさる。


 理解できない。


 どうして人間が、こんな魔力を扱える?


 炎の魔力だったはずだ。


 それが今は、まるで別物になっている。


 熱い。


 だが、ただ熱いだけじゃない。


 魔力そのものに、圧倒的な密度を感じる。


 どうして――。


 「その姿は……一体、なんなんだ……?」


 自分でも驚くほど、声が震えていた。


 その問いに答えるように、レールステンがゆっくりと顔を上げる。


 真紅の兜。


 その奥から覗く瞳が、真っ直ぐにこちらを捉えた。


 その瞬間――。


 「【上限解放アミリースファースト】」


 「……何?」


 背中の太陽が――。


 ギュルンッ!


 大きく一回転した。


 その瞬間。


 ドンッ!!


 空気そのものが震えた。


 白銀の世界を覆い尽くしていた猛吹雪が、一瞬だけ赤く染まる。


 同時に、レールステンから放たれる魔力が一気に膨れ上がった。


 「――ッ!?」


 背筋に悪寒が走る。


 これは――まずい。


 理屈じゃない。


 魔力を感知した瞬間、身体が勝手に危険を訴えた。


 今の奴は、さっきまでのレールステンとは明らかに違う。


 別次元だ。


 まるで、何かの枷が外れたように魔力が膨れ上がっている。


 「ぐっ……!」


 俺は反射的に迎撃態勢へ移った。


 考えている暇なんてない。


 あの鎧。


 あの魔力。


 そして、今の変化。


 どう考えても、ただの防寒具じゃない。


 むしろ、あれは――。


 「身体能力強化の魔法……か?」


 鎧そのものが、装着者の身体能力を強化している。


 そう考えるのが一番自然だ。


 だが、それだけじゃ説明がつかない。


 あれほどの魔力を放ちながら、奴の身体からは限界を迎えているような気配がない。


 むしろ逆だ。


 今まで以上に、力を引き出している。


 変化する魔力。


 身体能力を強化する鎧。


 この二つが揃った以上――。


 「……本気を出さなきゃ、マズい」


 認めたくはない。


 だが、そうするしかない。


 俺は両手へ魔力を集める。


 「……遮れ、氷結の盾よ――【氷柱の大盾アイル・ヒュールド】!」


 ズズズズズッ!!


 地面から巨大な氷柱が幾重にもせり上がり、瞬く間に目の前へ分厚い氷壁を形成する。


 同時に、右手へと氷魔力を集中。


 「氷槍ひょうそうに穿て――【氷点無槍アイグニル】!!」


 直後。


 空間に無数の氷槍が生み出された。


 鋭く尖った氷の穂先。


 その一本一本が、触れたものを凍結させるほどの冷気を纏っている。


 「――行け!」


 俺の合図と同時に、無数の氷槍が一斉に飛翔した。


 狙いはレールステン。


 四方八方から逃げ場を奪うように、次々と氷槍が奴へ迫っていく。


 これなら――。


 いや。


 これで倒せなくてもいい。


 少なくとも、動きを止めることができれば。


 その隙に次の一手を――。


 「……っ」


 魔力が一気に削られていく。


 連続して魔法を使った影響だ。


 正直、かなりキツい。


 だが、それは向こうも同じ。


 いや――むしろ、奴の方が消耗しているはずだ。


 これまでの戦闘で、あれだけ身体を酷使している。


 そのうえ、今は新しい魔力まで使っている。


 いくら鎧で強化されていようと、長くは持たない。


 ここを凌げば――。


 「はあああああっ!!」


 「――ッ!?」


 その瞬間だった。


 レールステンが吠えた。


 逃げない。


 避ける気配すらない。


 「……何を――」


 無数の氷槍が、一斉に奴へ殺到する。


 一本。


 二本。


 三本。


 十本。


 数え切れないほどの氷槍が、真紅の鎧へ向かって突き進む。


 当たる。


 そう確信した。


 だが――。


 「……は?」


 次の瞬間。


 レールステンが右腕を振り抜いた。


 ――ドゴォッ!!


 一本目の氷槍が、砕け散った。


 「……え?」


 続けて。


 ――バキィッ!!


 二本目。


 ――ガシャァン!!


 三本目。


 拳。


 ただ拳を振るっているだけだ。


 それなのに、迫り来る氷槍を一つ、また一つと叩き折っていく。


 「馬鹿な……」


 氷槍は、一本一本が決して脆いわけじゃない。


 それどころか、俺の魔力によって強化されている。


 まともに受ければ、簡単に砕けるようなものではない。


 なのに。


 奴は避けることすらしない。


 防御することすらしない。


 ただ拳を振るうだけで――。

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