第11章ー104
「太陽の魔力……」
その言葉を口にした瞬間、背筋に冷たいものが走った。
炎と太陽。
どちらも熱を生み出す力だ。
炎は燃え広がり、物を焼き、熱を放つ。
一方、太陽はそこに存在しているだけで、莫大な熱と光を放ち続けている。
似た性質を持っているようで、その本質はまるで違う。
自分がこれからやろうとしているのは、炎の魔力を単純に強化することじゃない。
炎という性質そのものを捨てて、別の性質へと作り変える。
――太陽へ。
「……」
果たして、そんなことが本当にできるのか。
そもそも、自分の身体がそんな異質な魔力を受け入れられるのか。
考えれば考えるほど、不安が膨れ上がっていく。
もし変換に失敗したら?
魔力が制御できずに暴走したら?
太陽の魔力が身体の中で膨れ上がったら?
最悪の場合、制限魔法を解除するどころか、自分の身体そのものが耐え切れずに壊れる。
いや。
壊れるだけならまだいい。
――死ぬかもしれない。
そんな考えが頭をよぎり、思わず息を呑んだ。
「……」
怖い。
当たり前だ。
自分の命を懸けた賭けなのだから。
成功する保証なんて、どこにもない。
むしろ、失敗する可能性の方が高いだろう。
それでも――。
「……やるしかねえだろ」
自分の拳を強く握り締める。
ここで怖気づいて、何もしないという選択肢はなかった。
今の自分には、他に方法がない。
制限魔法によって魔力を抑え込まれている以上、このまま真正面から魔力をぶつけ合ったところで勝ち目はない。
なら、発想を変えるしかない。
制限魔法が自分の魔力を認識しているというのなら――その認識そのものから外れてしまえばいい。
そのために必要なのが、魔力の質の変化。
そして、自分が導き出した方法は一つだけだった。
全身を巡っている炎の魔力。
それを――太陽の魔力へと変換する。
「……本当に、できるのかよ」
思わず弱気な言葉が漏れる。
当然だ。
こんなこと、試したことがない。
いや――正確には、魔力の質を変化させること自体は一度経験している。
だからこそ、今回も可能なのではないかと思った。
だが、今回変えようとしているのは、ただの属性じゃない。
炎から太陽。
自分の身体の中にある魔力を、まったく別の性質へと作り変えようとしているのだ。
何が起きるかなんて、自分にも分からない。
「……」
それでも、やる。
やらなければ何も変わらない。
だったら――。
「……これで駄目なら、そのときはそのときだ」
腹を括る。
命を懸けた賭けだ。
だったら、最後まで賭け抜いてやる。
「……絶対に成功させる」
自分は静かに目を閉じた。




