第11章ー103
「魔力の質を変化させれば、制限は解除されるのか!?」
頭の中で一つの答えが弾き出された。
――魔力の質を変える。
それが、今の自分が見つけ出した唯一の突破口だった。
きっかけになったのは、魔妖だ。
魔妖は納刀することで、自らが纏っている魔法の属性を変化させることができる。
だが、その際には一度、現在使用している魔力をリセットする必要がある。
なぜ、そんな仕組みになっているのか。
今までは深く考えたことなどなかった。魔妖の特殊能力なのだから、そういうものなのだと納得していた。
――だが。
もしも、それが単なる属性変化ではなく、魔力そのものを一度別の状態へ変換しているのだとしたら?
「……そういうことか」
思わず呟く。
制限魔法によって抑え込まれているのは、魔力そのものではない。
正確には――現在の自分が使っている魔力の質を基準として、魔力の使用量を制限している。
ならば、その基準となっている魔力の質そのものを変えてしまえばいい。
アラガがその証明だ。
あいつも自分と同じように、ライラック先生によって魔力に制限を掛けられていたはずだ。
それなのに、魔眼を開放した瞬間、あいつの魔力量は明らかに増加した。
同じ氷属性の魔力であるにもかかわらず、だ。
人工的に作られた雪と、自然に降り積もった雪。
どちらも同じ「雪」には違いない。
だが、粒の大きさも、密度も、触れたときの感触も違う。
魔力も同じなのではないか。
属性が同じだからといって、その中身まで完全に同一とは限らない。
アラガの魔眼によって引き出された氷の魔力は、それまで制限魔法が認識していた魔力とは別物だった。
だからこそ、制限の対象から外れた。
そう考えれば、すべての辻褄が合う。
「……魔力の質……か」
自分の手を見つめる。
指先から微かに炎の魔力が漏れ出し、赤い光が揺らめいていた。
魔力の質を変える。
言葉にすれば簡単だ。
だが、実際にそんなことができる人間はほとんどいない。
そもそも、魔力の質を意図的に変化させるなんて方法は――。
「……いや」
そこで、ふと一つの記憶が脳裏を過った。
――自分は、一度だけ経験している。
魔力の質が変わった瞬間を。
あのとき、自分の中を巡っていた魔力は、確かにそれまでとは違うものへと変化していた。
ならば。
同じことを、もう一度やればいい。
「……」
ただし。
その方法には、とてつもなく大きな問題がある。
危険すぎる。
下手をすれば、制限魔法を解除する前に自分の身体が耐えられずに壊れる。
最悪の場合――死ぬ。
成功する保証などない。
それどころか、失敗すれば一瞬で命を失う可能性すらある。
それでも。
「……いや、やるしかねえ」
迷っている暇はなかった。
今の自分に残された選択肢は、これしかない。
自分の全身を巡っている炎の魔力。
それを――別の魔力へと変換する。
ただ属性を変えるだけじゃない。
炎の魔力そのものの質を、根本から変える。
そのために自分が選んだのは――。
「太陽の魔力……」




