第11章ー46
「ぐっ!?」
足が動かねぇ。
勢いよく振り抜いた拳も、そのまま空中で止められた。
何が起きた。
俺は一瞬、自分の状況を理解できなかった。
下を見る。
膝から下が分厚い氷に覆われ、地面ごと完全に縫い止められている。
……やられた。
「チッ……」
舌打ちが漏れる。
こいつ、最初からこれを狙ってやがったのか。
俺が速度を上げ、突っ込んで来ることを見越して罠を張っていたってわけか。
「……俺が力を溜めてる間に罠を仕掛けるとはな」
怒りを押し殺しながら睨み付ける。
「見かけによらず、随分キタねぇ戦法じゃねぇか」
正面から来る度胸もねぇ。
だから足元に細工をして俺を止めた。
なるほどな。
魔力量だけは大したもんだと思ってたが、中身は案外小賢しい奴だったらしい。
「……お前は何か勘違いしてるみてぇだな」
「あぁ?」
アラガがゆっくりとこちらを振り返る。
相変わらず感情の見えねぇ顔。
その無表情が余計に癪へ障る。
「事前に罠を張ってたわけじゃねぇ」
淡々とした口調で続ける。
「お前が来る位置とタイミングを読んで、そこへ氷の魔力を流しただけだ」
「……はぁ?」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。
魔法を使ったんじゃねぇ?
罠でもねぇ?
ただ魔力を流しただけ?
……ふざけんな。
「適当なホラ吹いてんじゃねぇぞ!!」
怒鳴り声が自然と飛び出す。
「そんなもんで俺様を止められるわけねぇだろ!!」
舐めるのも大概にしろ。
負け惜しみか。
それとも強がりか。
どっちにしろ、くだらねぇ嘘だ。
俺を馬鹿にして楽しんでやがる。
「……信じるかどうかは勝手だ」
アラガは肩一つ動かさない。
「それより、今お前がやるべきことがあるんじゃねぇのか」
「……ッ!」
その言葉でようやく気付く。
氷が広がっている。
最初は足だけだったはずなのに、今は脛まで凍り始めている。
このままじゃ全身を封じられる。
クソッ。
口論なんかしてる場合じゃねぇ。
まずはこの氷を砕く。
それだけだ。
幸い、身体へ蓄えた雷はまだ十分残っている。
この程度の氷なら一撃で吹き飛ばせる。
「ぶっ放せ! 雷竜の雄叫び!!」
全身へ雷を巡らせる。
喉へ魔力を集め、一気に解き放つ。
「【雷哮】!!」
咆哮と同時に雷鳴が轟く。
電磁波のような衝撃が全身から迸り、地面へ叩き付けられる。
その振動で氷ごと粉砕する。
――そのはずだった。
「がああああああああああああああああっ!?」
全身を焼けるような激痛が貫いた。
「な、んだ……!?」
雷が。
俺の雷が。
外へ逃げるどころか、全部俺の身体へ返ってきやがった。




