第11章ー44
「いくぞ! クソ野郎!」
試合開始の合図が鳴った瞬間、俺は地面を蹴った。
最初に仕掛けるのは当然だ。
あの野郎、初対面だってのに俺様をコケにしやがった。
学園最強の俺様に向かって、あんな舐め腐った口を利く奴なんざ初めてだ。
だったら分からせてやるしかねぇ。
力の差ってもんをな。
「駆けろ、雷鳴の輪――【八卦雷道】!」
詠唱と同時に、八つの雷輪が戦場へ展開される。
地上と空中へ配置された雷の輪。
人一人が通れるほどの大きさをした輪が、俺の進路を描くように並んでいく。
これで準備は完了だ。
「俺様の速さに付いて来れるかぁ!?」
真っ先に左の輪へ飛び込む。
バチィッ!!
身体へ雷がまとわりつき、全身が一気に軽くなる。
速い。
いや、まだまだこんなもんじゃねぇ。
一つ潜るたびに身体はさらに加速する。
俺は勢いそのまま次の輪へ飛び込み、さらに次、そのまた次へと駆け抜ける。
輪を潜るたび、雷が身体へ蓄積されていく。
速度はさらに上昇。
景色が流れ、風が悲鳴を上げる。
これが【八卦雷道】。
潜れば潜るほど速くなる。
単純だが、それ故に凶悪な魔法だ。
もっとも――。
この魔法は誰でも扱える代物じゃねぇ。
雷は纏えば纏うほど肉体を蝕む。
他の雷魔法使いどもにも試させたことがあるが、最初は痺れる程度でも、すぐに激痛へ変わるらしい。
まともな奴なら何周も潜れやしねぇ。
だが俺は違う。
俺には【帯電】っていう特異体質がある。
雷は効かねぇ。
むしろ身体の中へ取り込み、力として蓄えられる。
溜め込んだ雷は魔力とは別に放出できるから、魔力を節約しながら馬鹿みてぇな威力を叩き込める。
だから俺は最強なんだ。
他の連中じゃ真似なんざできねぇ。
「きゃー!! レイジ先輩ー!!」
「頑張ってー!」
ほら来た。
黄色い歓声が耳に心地いい。
思わず口元が吊り上がる。
これだ。
この声を聞くために強くなったと言ってもいい。
最強になれば全部手に入る。
力も。
名誉も。
注目も。
そして女も。
この学園は男の方が少し多いが、その分女のレベルは高ぇ。
可愛い奴も、美人も、スタイルのいい奴も揃ってる。
そんな女どもが俺様に熱い視線を送る。
最高じゃねぇか。
最強って肩書は、やっぱ格別だ。
最近は一年がやたら騒がれてやがるが、所詮は一年坊主。
俺様の足元にも及ばねぇ。
そういや、さっき戦ってたマヒロとかいう女。
あれは中々上玉だったな。
決勝で当たるなら、面白ぇ賭けを持ち掛けるのも悪くねぇ。
勝った方が相手を好きにできる。
魔剣さえなきゃ、あんな女、怖がる必要もねぇしな。
優勝賞品が一つ増えるようなもんだ。
だが、その前に――。
「まずはテメェだ!」
視線をアラガへ向ける。
相変わらず無表情。
俺様の速さを前にしても微動だにしねぇ。
……気に入らねぇ。
その余裕ぶったツラ。
その冷めた目。
全部まとめてぶっ壊してやる。
俺はさらに雷輪を潜り抜ける。
身体へ雷が走るたび、速度は限界を超えていく。
風景が歪み、観客席が線のように流れる。
もう誰にも止められねぇ。
俺様こそ、この学園最強。
その現実を、今ここでテメェの身体に叩き込んでやる!




