表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
11章 魔闘祭編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

702/754

第11章ー43

 「ちょっ!? レイジ君!?」


 突然アラガ君へ歩み寄っていくレイジ君を見て、思わず声が漏れた。


 「大丈夫だって、ライ先。ちーっと後輩と挨拶するだけだって」


 「……」


 その言葉が信用できるなら、私はこんなに慌ててはいない。


 素行の悪い問題児が、危険視している問題児へ自ら近付いていく。


 教師として、この状況を見て嫌な予感しかしなかった。


 レイジ君は基本的には面倒見の良い子だ。


 後輩を可愛がることもあるし、実力を認めた相手には積極的に声を掛ける。


 けれど、その一方で喧嘩っ早く、相手を挑発する悪癖も持っている。


 今まさに向かっている相手は、最も挑発してはいけない生徒だというのに。


 『おーっと?! レイジ選手、アラガ選手へ宣戦布告かーー?!』


 ……お願いだから煽らないで。


 実況席で場を盛り上げようとするヒューズ君に、私は思わず額へ手を当てた。


 確かに大会としては盛り上がるのだろう。


 でも今だけは、余計な火種を増やさないでほしかった。


 「おめー、中々良い魔力してんな。噂には聞いちゃいるが、つえーんだろ? 俺様の相手にゃ持ってこいだぜ」


 やっぱり。


 身長差もあって、レイジ君はアラガ君を見下ろすような形になり、そのまま堂々と挑発を始める。


 最初から挨拶だけで終わるとは思っていなかったけれど、案の定だった。


 「安心しな。俺様はこう見えて後輩思いなんだ。胸借してやっから、遠慮なく来やが――」


 レイジ君はそう言ってアラガ君の頭へ手を乗せる。


 先輩らしく振る舞っているつもりなのだろう。


 しかし、その瞬間だった。


 「……せぇな」


 「……あ?」


 小さく漏れた低い声。


 空気が変わる。


 それまで微動だにしなかったアラガ君が、ゆっくりと口を開いた。


 「うるせぇんだよ。御託はいい。とっとと始めろ」


 「ッ!?」


 淡々と。


 怒鳴るでもなく、感情をぶつけるでもなく。


 ただ冷え切った声で吐き捨てる。


 その一言だけで、場の温度が一気に下がった気がした。


 先ほどまで余裕の笑みを浮かべていたレイジ君の表情が固まる。


 次第に頬が引きつり、額には青筋が浮かび始めた。


 ……最悪。


 私が恐れていた展開になってしまった。


 「ほぉぉぉぉ?」


 怒りを隠そうとしているのか、無理やり笑顔を作っている。


 だけど、その笑みはまるで笑えていなかった。


 あと一言。


 どちらかが余計な言葉を口にすれば、本当に試合前から乱闘になりかねない。


 『両者、元の位置へ!』


 私は慌ててヘッドセットのマイクを入れ、大きく声を張り上げた。


 これ以上好きに会話を続けさせるわけにはいかない。


 審判として、今止めるしかない。


 もっと早く割って入るべきだったかもしれない。


 そんな後悔が頭をよぎる。


 けれど、今さら考えても遅い。


 二人がゆっくりと開始位置へ戻っていくのを確認し、私は小さく胸を撫で下ろした。


 ……いや。


 安心するのはまだ早かった。


 「……お前、今の発言、後悔すんなよ?」


 開始位置へ向かう途中、レイジ君は足を止め、肩越しに振り返る。


 鋭い視線が真っ直ぐアラガ君を射抜いた。


 完全に火が付いてしまっている。


 対するアラガ君は、その視線を受けても表情一つ変えない。


 まるで最初から興味すらないと言わんばかりに。


 私は小さく息を吸い込み、二人を交互に見据える。


 そして静まり返った会場へ向け、開始の合図を告げた。


 『――試合、開始!!』


 その瞬間。


 張り詰めていた空気が、一気に弾けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ