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転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
11章 魔闘祭編

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第11章ー41

 大会は二試合を終え、一回戦も残すところあと二試合。


 会場の熱気は衰えるどころか、むしろ増しているように感じられた。


 「……」


 そんな喧騒の中、私は一人だけ胸の奥に小さな不安を抱えていた。


 理由は一つ。


 この試合に、彼が出場するからだ。


 『いやぁ、二試合目も凄い試合でしたねぇ! こんな熱戦ばかり続いたら、俺達実況の体力が先に尽きちまいますよー!』


 『皆様も水分補給や休憩を忘れずにお願いしますね。私達も一回戦終了後に少し休憩をいただく予定です』


 実況席ではヒューズ君とアルクさんが軽快なやり取りを続けている。


 その声を聞き流しながら、私は対戦表と照らし合わせ、両選手の最終確認を済ませた。


 異常なし。


 私は一足先にリング中央へと歩み出る。


 観客席の視線が自然と集まり、試合開始前特有の静けさが闘技場を包んだ。


 『さぁ、準備も整ったようですね! それでは参りましょう!』


 ヒューズ君の声が響く。


 『第一回戦第三試合! 選手の入場だぁぁぁーーーーッ!!』


 その合図と同時に、二人の選手が入場口から姿を現す。


 観客席が再び歓声に包まれた。


 『まずはこの男ッ!! 最速! 最強! 二つの称号をその身に宿す、まさに学園最強!! その強さで何人の相手を痺れさせてきたのか! あっ、女子生徒諸君は特に気を付けろよー!? この男に惚れたが最後、一生マヒらされちまうぜー!! 疾風迅雷の雷帝! レイジ・ボルデックスーーーーッ!!』


 紹介と共に、私の左隣へ一人の男子生徒が歩み出る。


 褐色の肌。


 金色の髪。


 鋭い目付きにギザギザの歯。


 耳にはピアスを付け、制服も大胆に着崩している。


 しかも両手をポケットへ突っ込んだままリングへ上がるその姿は、初めて見る者なら不良生徒そのものだと思うだろう。


 ……実際、素行が良いとは言えない。


 入学当初は私も何度注意したことか。


 制服。


 言葉遣い。


 授業態度。


 そのたびに軽く受け流され、頭を悩ませたものだ。


 けれど、彼には事情がある。


 魔法と特異体質イディオーションの影響。


 そして育ってきた環境。


 理事長をはじめ学園側が総合的に判断した結果、現在はある程度黙認されている状態だった。


 教師として思うところがないわけではない。


 だが、だからといって彼が悪人というわけでもない。


 むしろ根は意外と素直で、生徒達から慕われている理由も理解できる。


 「ははっ。ようやく俺の番かよ。長すぎて危うく爆睡するとこだったぜ」


 レイジ君は首を鳴らしながら大きくあくびをする。


 「……いや、さっきまで寝ていたでしょう」


 思わず呆れて返してしまう。


 実を言えば、試合開始時間になっても彼が待機室へ現れず、嫌な予感がして見に行ったところ、本当に寝ていた。


 まったく。


 選手を起こすのまで審判の仕事ではないと思うのだけれど。


 「はっはっは。寝てねぇって。横になって目ぇ閉じてただけだ、ライ先」


 「だから、その呼び方はやめなさい」


 何度注意したか分からない愛称。


 それでも彼は悪びれる様子もなく笑っている。


 ……困った生徒だ。


 けれど、その飄々とした態度のおかげか、試合前だというのに余計な緊張を感じさせない。


 学園最強と呼ばれるだけの実力を持ちながら、必要以上に威圧感を出さない。


 それも彼の魅力なのだろう。


 少なくとも。


 私が心配しているのはレイジ君ではない。


 『そしてぇぇぇ!! そんな学園最強へ挑むのは、この男ッ!!』


 実況席の声がさらに熱を帯びる。


 私は無意識に小さく息を呑んだ。


 ――来る。


 ここからだ。


 私が今日、一番気を揉んでいた理由。


 教師になってから何度も頭を抱えさせられた、とびきりの問題児。


 もし何か騒ぎを起こすとすれば、おそらくこの試合。


 その予感だけは、どうしても拭えなかった。


 ゆっくりと入場口へ視線を向ける。


 そこから姿を現そうとしている生徒の名は――。


 アラガ。


 この学園でも群を抜いて手を焼く、最大級の問題児である。

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