第11章ー26
『本日、司会進行を務めさせていただきます! 魔法学園二年、ヒューズ・ジャックウェルと!』
『同じく魔法学園二年、アルク・アナスタシアがお送りします。本日はどうぞよろしくお願い致します』
魔導スクリーンに二人の姿が大きく映し出される。
まずは司会進行役の自己紹介から始まった。
片方は金髪を逆立てた如何にも陽キャといった雰囲気の男子生徒、ヒューズ・ジャックウェル先輩。もう片方は黒髪短髪で落ち着いた印象を与える女子生徒、アルク・アナスタシア先輩だ。
二人とも学園内ではそこそこ有名人で、自分も名前くらいは知っている。
特にヒューズ先輩は妙に顔が広い。
学年やクラスの垣根を気にせず誰にでも話しかけるタイプで、以前寮の大浴場で偶然鉢合わせた時にも気さくに声を掛けられたことがある。正直、ああいうノリの人は少し苦手なのだが、不思議と嫌味がなく、話していて悪い気はしなかった。
一方のアルク先輩は図書委員を務めているらしく、自分は図書館で勉強していた時に何度か顔を合わせた程度だ。
もっとも、その時も本を探している時に少し会話したくらいで、特別親しいわけではない。
ただ、ミオの話によると女子寮では結構有名な人らしく、勉強を教えてもらったこともあるそうだ。
こうして見ると、確かに知的で落ち着いた雰囲気がある。
テンション全開のヒューズ先輩と、冷静沈着なアルク先輩。
対照的な二人だが、司会者としては案外良い組み合わせなのかもしれない。
『遠路はるばるお越しくださった来賓の皆様方! 本日はご来場いただき誠にありがとうございます!』
ヒューズ先輩が両腕を広げながら叫ぶ。
その瞬間、会場から大きな歓声が上がった。
やはり盛り上げ方が上手い。
『大変長らくお待たせいたしました! 本日、皆様にご覧いただくのは、我が魔法学園が誇る若き才能達による真剣勝負!』
歓声がさらに大きくなる。
『ようやく、熱くなる戦いをご覧いただける日がやって参りました!!』
スクリーン越しでも伝わるほどの熱量だった。
観客席を埋め尽くす人々。
興奮した子供達。
談笑していた大人達。
そして出場者の関係者と思われる人達。
全員の視線が中央の闘技場へと向けられている。
『ここからは瞬き厳禁!』
ヒューズ先輩が人差し指を立てる。
『一分一秒たりとも見逃さず、最後の最後の瞬間まで見届けていただければ幸いです!!』
再び歓声。
その熱気は闘技場の外まで伝わっているのではないかと思うほどだった。
そしてアルク先輩が一歩前へ出る。
先ほどまでの盛り上がった空気を引き継ぎながらも、落ち着いた声で進行を始めた。
『それでは早速、第一回戦第一試合の選手入場です』
その言葉に会場全体がざわつく。
観客達も待ち望んでいたのだろう。
自然と自分の背筋も伸びた。
『両選手に盛大な拍手をお願い致します』
アルク先輩の言葉と同時に、大きな拍手が鳴り響く。
バチバチと耳に届く拍手の音。
地鳴りのような歓声。
期待と興奮が入り混じった空気。
それら全てが闘技場を包み込んでいた。
「……」
思わず拳を握る。
いよいよ始まる。
昨日までの学園祭とは違う。
ここからは遊びではない。
真剣勝負だ。
魔闘祭。
学園最強を決める戦い。
そして、自分にとってはコールスタッシュ先生から出された課題を達成するための舞台でもある。
優勝しなければならない。
そのためには誰が相手だろうと勝ち進むしかない。
マヒロもいる。
ミオもいる。
そしてアラガもいる。
決して楽な戦いにはならないだろう。
だが――。
だからこそ燃える。
胸の奥で鼓動が高鳴る。
ドクン。
ドクン。
まるで戦いを待ち望んでいるかのように心臓が脈打っていた。
緊張している。
それは間違いない。
けれど、不思議と嫌な気分ではなかった。
むしろ心地良い。
自分が今、この舞台の上に立とうとしている実感があった。
観客達の歓声がさらに大きくなる。
どうやら選手達が入場してきたらしい。
自分は選手控室で一人、静かに息を吐いた。
そして、闘技場へと視線を向ける。
――いよいよ開幕だ。
学園祭最大のイベント。
魔闘祭が。




