第11章ー25
学園祭二日目。
昨日にも増して学園内は大勢の人で賑わっていた。
朝から校門付近には来賓客の列ができており、各出店も大繁盛。廊下を歩くだけでも楽しそうな笑い声や呼び込みの声があちこちから聞こえてくる。
自分達のメイド喫茶も例外ではなかったらしい。
本来なら午前中の当番として働く予定だったが、今日は魔闘祭がある。
参加者である自分達は体力温存のため、午前中の業務からは外されていた。
正直ありがたい。
昨日は学園祭を思い切り満喫したとはいえ、その後に魔闘祭のことを考えてしまい、そこまで深く眠れたわけではない。
特にアラガの参戦を知ってからは妙に意識してしまい、何度か目が覚めてしまったほどだ。
だから今日は無理をせず、身体を休めることを優先した。
とはいえ、何もしないのも申し訳ない。
せめて売上に貢献しようと思い、昼食は自分達のメイド喫茶で済ませることにした。
教室へ向かうと、昨日以上の盛況ぶりに思わず驚かされた。
客席はほぼ満席。
店の外には順番待ちの列までできている。
呼び込みをしている生徒達も大忙しだ。
どうやら昨日の評判が口コミで広まったらしい。
ギリスケの企画力を認めるのは少々癪だが、この状況を見る限り成功と言っていいだろう。
自分は空いている席へ案内され、適当に昼食を注文する。
オムライス。
そして食後にアイスコーヒー。
前世でもよく見掛けた定番メニューだ。
異世界だからもっと独特な料理が並ぶかと思っていたが、意外と親しみやすいものが多い。
そして肝心の味だが――。
普通に美味しかった。
いや、普通以上かもしれない。
学園祭の出店ということで正直そこまで期待していなかったのだが、予想以上に完成度が高い。
厨房担当の男子達が頑張ったのだろう。
気付けば魔闘祭前だということも忘れて、しっかり完食してしまった。
「ごちそうさまでした」
思わずそんな言葉が口から出る。
満足感のある昼食だった。
そして昼食を終えた頃には、学園内の空気も徐々に変わり始めていた。
午前中までの学園祭ムードとは明らかに違う。
人の流れが一方向へ集中しているのだ。
皆が向かう先は同じ。
今日最大の目玉イベント。
魔闘祭。
その開催場所である。
「すごいな……」
会場へ向かった自分は思わず言葉を漏らした。
目の前に広がる光景は圧巻だった。
本来ここは魔法学の実技授業などで使用される広大な運動場だ。
だが今、その面影はどこにもない。
代わりに存在していたのは巨大な円形闘技場。
まるで前世で見たローマのコロッセオを彷彿とさせるような巨大建築だった。
昨日まで何もなかった場所とは思えない。
恐らく入学試験の時と同様、リーフさんが一人で造り上げたのだろう。
これだけの規模のものを一人でって。ほんと凄いなあの人。
そんな感想すら浮かぶ。
しかし驚くのは建物だけではない。
『レディース&ジェントルメーン!!』
巨大な拡声魔法を通じた声が響き渡る。
『学園祭は楽しんでるかーい?!』
観客席から大歓声が返ってきた。
『楽しんでる人も! まだ楽しみ足らない人も! 今日のビッグイベントで盛り上がっていこうぜー!!』
テンションの高い男子生徒の声。
そして隣には進行役らしき女子生徒の姿も見える。
二人とも完全にイベント慣れしている。
会場全体の空気を掴むのが上手い。
歓声がさらに大きくなる。
観客達も既に最高潮だ。
それにしても凄い人数だった。
客席を見渡す限り、人、人、人。
ざっと見積もっても一万人以上はいる。
学園関係者だけでこれほど集まるはずがない。
近隣住民や商人、冒険者なども多数訪れているのだろう。
まさしく一大イベントだった。
しかも会場内だけでは終わらない。
コロシアムの外には巨大な魔導スクリーンが四方に設置されており、そこにも司会進行の映像が映し出されている。
既に満席となった会場へ入れなかった人達は、外から観戦できるようになっているらしい。
さらに飲食店や出店の大型テレビでも中継が流されているそうだ。
どれだけ力を入れているんだ、このイベント。
思わず苦笑する。
多分ソンジさんも関わっているんだろうな。
あの人、普段はふざけてばかりいるけど、こういう大規模企画になると異常な能力を発揮する。
むしろ普段何者なのか分からなくなるレベルだ。
自分達が知らないだけで、裏では相当動き回っていたのかもしれない。
そんなことを考えていると、司会の男子生徒が再び声を張り上げた。
『さてさてさーて!』
わざとらしく時計を確認する。
『そろそろ時間も近付いてきたことだし、本格的に始めちゃおうか!』
会場の熱気がさらに高まる。
観客席から期待に満ちた歓声が上がる。
その瞬間、自分の胸も少しだけ高鳴った。
いよいよ始まる。
学園祭最大の目玉。
そして自分達参加者にとっては真剣勝負の舞台。
魔闘祭が。
『それではこれより――』
男子生徒が大きく息を吸い込む。
そして会場全体へ向けて宣言した。
『本日のメインイベント!!』
一拍置く。
観客達も固唾を飲んで見守る。
『魔闘祭を開催致しまーす!!』
その瞬間。
会場を揺らすほどの大歓声が轟いた。
自分は静かに拳を握る。
――ついに始まる。
優勝を懸けた戦いが。
そして、自分自身の覚悟を試す戦いが。




