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転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
11章 魔闘祭編

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第11章ー24

 この男は、ただ者ではない。


 それだけは確信していた。


 実力が高いからではない。


 もちろん、それも理由の一つではある。


 だが本当に気になるのはそこではなかった。


 言葉だ。


 考え方だ。


 そして、時折見せる底知れない雰囲気。


 まるで何かを知っている人間のような振る舞い。


 教師という立場だけでは説明のつかない何かが、この男にはあった。


 おまけに伸び放題の髭。


 乱雑な髪。


 着崩した服装。


 見るからに小汚い身なり。


 その違和感も含めて、余計に怪しかった。


 「……」


 俺は無言でコールスタッシュを見つめる。


 コールスタッシュはすぐには答えなかった。


 慌てる様子もない。


 動揺する素振りもない。


 ただ静かに煙草を口元へ運ぶ。


 「フー……」


 紫煙が夕暮れの空へ溶けていく。


 沈黙。


 わずかな風の音だけが耳に届く。


 俺は返答を待った。


 しかし――。


 返ってきたのは予想とは全く違う言葉だった。


 「……探り入れんなら」


 低い声。


 どこか呆れたような口調。


 「それ相応の覚悟しとけよ!!」


 「――ッ!?」


 一瞬、息が止まった。


 聞き覚えがある。


 忘れるはずがない。


 それは以前、自分自身が口にした言葉だった。


 体育館。


 リーフ・エンドレッドと話していた時。


 俺が奴に対して言い放った台詞。


 それを今、この男がそのまま返してきたのだ。


 つまり――。


 聞いていた。


 あの場にいたのか。


 あるいは近くで盗み聞きしていたのか。


 どちらにしても気分の良い話ではない。


 「……ふん」


 思わず鼻を鳴らす。


 どうやら答える気はないらしい。


 質問に質問で返す。


 しかも挑発付きだ。


 らしいと言えばらしい。


 この男が素直に自分のことを語る姿など想像もできない。


 それに。


 これ以上追及したところで意味はないだろう。


 何を聞いても煙に巻かれるだけだ。


 だったら無駄だ。


 時間の浪費でしかない。


 俺は小さく息を吐き、その場から立ち去ることにした。


 これ以上話す価値はない。


 そう判断したからだ。


 だが――。


 数歩進んだところで足を止める。


 背中を向けたまま考える。


 このまま終わるのも癪だった。


 最後に一つくらい言い残してやるべきだろう。


 俺はゆっくりと振り返った。


 コールスタッシュは相変わらず壁にもたれたままだ。


 煙草を咥えながらこちらを見ている。


 その気の抜けた態度が気に食わない。


 だからこそ言ってやる。


 「いいか」


 静かに告げる。


 「奴は俺が完膚なきまでに叩きのめす」


 コールスタッシュは何も言わない。


 ただ黙って聞いている。


 「結局、力のない奴に魔王は殺せない」


 それが現実だ。


 綺麗事ではどうにもならない。


 覚悟だけでも。


 理想だけでも。


 世界は救えない。


 必要なのは力だ。


 絶対的な力。


 全てをねじ伏せるだけの実力。


 それがなければ何も守れない。


 何も変えられない。


 「その現実を叩きつけてやる」


 自然と拳に力が入る。


 「己の未熟さを骨の髄まで思い知らせてやるよ」


 サダメ・レールステン。


 あの男はまだ何も知らない。


 勇者になるということを。


 魔王と戦うということを。


 その先にある地獄を。


 だから教えてやる。


 現実というやつを。


 もっとも――。


 「一回戦も突破できないようじゃ話にならんがな」


 それだけ言い残し、今度こそ背を向ける。


 返事はなかった。


 振り返る気もない。


 どうせまた適当なことを言うだけだろう。


 興味もない。


 俺はそのまま歩き出した。


 背後から聞こえるのは風の音だけ。


 夕陽は既に沈みかけている。


 長く伸びた影が地面を覆っていた。


 「……」


 それでも不思議と胸の奥は静かだった。


 怒りはある。


 苛立ちもある。


 だが、それ以上に確信があった。


 俺は勝つ。


 誰が相手だろうと関係ない。


 サダメ・レールステンも。


 マヒロ・トーエンも。


 その他の参加者も。


 全員踏み越える。


 そして証明する。


 誰が正しくて。


 誰が間違っていたのかを。


 コールスタッシュが語った理想も。


 チヤドールが信じる希望も。


 全部まとめて打ち砕いてやる。


 サダメ・レールステン。


 あの男の夢は、俺が終わらせる。


 勇者になるという幻想も。


 魔王を倒すという理想も。


 全て現実の前に屈服させる。


 そして、その先で。


 俺は俺自身の目的を果たす。


 誰にも邪魔はさせない。


 誰にも否定はさせない。


 俺だけの野望のために。


 俺は進む。


 たとえ世界中が敵になろうとも。


 ――転生勇者が死ぬまで、残り3874日

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