表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
10章 迷宮~血戦編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

611/631

第10章ー68

 私には、生殖器が存在しない。


 それは、生まれついての“欠落”だった。


 吸血鬼族の中には、例外的に無性生殖が可能な個体も存在する。だが、それはあくまで“女”に限られた特性だ。男である以上、いかに力を持とうと、単独で子を成すことはできない。


 つまり——


 私は、子孫を残せない。


 それだけでも十分に致命的だというのに、加えて私はブラッドフィールド家の一人息子だった。


 ……皮肉なものだ。


 今にして思えば、父が私に対して冷淡であった理由の一端は、そこにあったのかもしれない。血を繋ぐことのできぬ後継。期待する価値すらないと見なされていたのだろう。


 だが——


 「……」


 どうでもいい。


 今さらそれで同情する気など、微塵もない。


 「はあ……僕達の計画、幸先悪いですなぁ」


 隣で、ベルダンディーが大袈裟にため息をついた。


 先ほどの話を受けてのことだろう。子を成せない——その事実は、確かに我々の計画において小さくない障害となる。


 「構わん」


 私は淡々と応じる。


 「もとより、長期を見据えた計画だ。今さら一つ二つの問題で揺らぐものではない」


 むしろ、想定の範囲内だ。


 「焦る必要はない。いずれ、新たな戦力も加わるだろう」


 自分に言い聞かせるようでもあり、事実を述べているだけでもある。


 だが——


 「はっ。第一歩を踏み出すのは、何百年後になることやら」


 ベルダンディーは鼻で笑い、肩をすくめた。


 ……否定はできん。


 現実として、その可能性は高い。


 耳が痛い話だが、目を背ける理由にもならない。


 「……引き続き、戦力の確保は最優先事項とする」


 私は話題を切り替えるように言った。


 「だが、今すぐに動く必要はない。私は——時が来るまで眠りにつく」


 銀鏡の翼龍。


 あの存在が回復するまで、時間は必要だ。


 ならば、その間に無理に動くよりも、一度時をやり過ごす方が合理的だろう。


 「お前はどうする、ベルダンディー?」


 問いかけると、彼は顎に手を当て、少し考える素振りを見せた。


 「そうだな~……僕はもうちょっと動いてたいかな」


 やがて、いつもの調子で答える。


 「じっとしてるの苦手だしさ。いろんなとこ回ってみるよ。もしかしたら、面白いものが見つかるかもしれないし!」


 ……やはりか。


 予想通りの返答だった。


 「何かあったら起こしてあげるよ~!」


 軽く手を振りながら、気楽に言い放つ。


 「そうか。なら頼む」


 私はそれを受け入れた。


 こいつは、止めたところで止まる男ではない。ならば好きにさせて、その代わりに成果を期待する方がいい。


 それに——


 何かあれば、起こしてくれると言うのなら。


 それで十分だ。


 私はゆっくりと目を閉じ、意識を沈めていく。


 時間を超える眠り。


 再び目覚めるその時まで、世界は動き続ける。


 その間に、何が起きるかなど——


 この時の私は、考えもしなかった。


 いや。


 考える必要すら、感じていなかったのかもしれない。


 だが——


 それが、運命の分岐点となる。


 そうなることを、この時の私は、まだ知らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ