表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
10章 迷宮~血戦編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

610/630

第10章ー67

 さらに数日後——私は迷宮から戻り、かつて身を潜めた洞窟へと再び足を踏み入れていた。


 薄暗い空間の奥、見慣れた気配が一つ。


 「んで、どうだった? 伝説の龍殿にはお会いできたのかな?」


 壁に背を預けたベルダンディーが、待ちかねた様子で口を開く。相変わらず気楽な調子だが、その目にはわずかな興味が宿っていた。


 「ああ。対面は果たした」


 私は短く答える。


 「だが、氷漬けの状態だった。傷もまだ癒えていない。万全を期すには、しばらく時間が必要だろう」


 「へー……っていうか、本当にいたんだ? 人間の与太話かと思ってたけど。いいな~、それなら僕も一緒に行けばよかったよー」


 「……確かに、見目は絵で見る以上に美しかった」


 脳裏に、あの姿が蘇る。


 銀の鱗。鏡のように光を反射する翼。凍てついた空間の中でなお、神秘性を損なわぬ存在感。


 だが——


 「戦闘経験は浅い。おそらく、生まれて間もない段階で瀕死に追い込まれたのだろう。知識も不足している」


 現実的な評価を下す。


 「適切に導けば戦力にはなるだろうが……過度な期待は禁物だ」


 「ふーん。そんなもんか」


 ベルダンディーは肩をすくめ、あっさりと興味を引っ込めた。


 ……まあ、こいつらしい反応だ。


 だが、私としては収穫はあったと考えている。


 戦力として完成するまでには時間がかかる。数百年単位は覚悟せねばならんだろう。


 それでも——確実に“芽”はある。


 傷が癒えた暁には、こちらに加わると約束も取り付けた。


 長期的に見れば、十分すぎる成果だ。


 「して、お前の方はどうだった?」


 今度はこちらから問い返す。


 「戦力になりそうな輩は見つかったか?」


 ベルダンディーもまた、この数日、各地を回っていたはずだ。新たな同胞の芽を探すために。


 吸血鬼族は、有性・無性の双方で増えるが、それだけではない。濃密な魔力の塊から、自然発生的に生まれる個体も存在する。


 だが——それは極めて稀だ。


 「いーや。こっちはぜんっぜん駄目だったね」


 案の定、彼は苦笑混じりに首を振った。


 「そもそも僕らみたいなのがポンポン生まれるわけないし。期待薄だったしね」


 「……そうか」


 予想通りの結果だ。


 やはり、数日で戦力を整えるなど甘い考えだったか。


 だが、焦る必要はない。


 時間はいくらでもある。


 「……そういえば」


 ふと、思いついたように口を開く。


 「お前は子を持つつもりはないのか?」


 ベルダンディーは有性生殖が可能だ。実力も申し分ない。容姿も整っている。


 望めば、いくらでも子孫を残せるはずだ。


 だが——


 「ん? 僕が?」


 彼は一瞬きょとんとした後、軽く頭を掻いた。


 「んー……考えたことなかったかもなぁ」


 あっさりしたものだ。


 「女の子が嫌いってわけじゃないけどさ、やっぱり前線で戦ってる方が楽しいし。それに、今さら相手探すにしても……あの時の未亡人たちに手を出すのは、ダンディーに反するからねー」


 「……お前の言う“ダンディー”という基準が、私には理解できん」


 率直な感想を述べる。


 何を基準にしているのか、本気で分からない。


 「ええ?! ダンディーかだって?! そうさ! なぜなら僕の名は——ベルダンディ~~~~~~!!!」


 「……」


 ……やはり、意味は理解していないな。


 むしろ、わざとやっているのではないかとすら思えてくる。


 この妙な聞き間違いも含めて。


 だが、今さら矯正する気もない。


 「それを言うならさ」


 と、今度はベルダンディーがこちらに視線を向けてきた。


 「君こそどうなんだい? 自分の強い遺伝子を残したい、とか思わないの?」


 「ふん。馬鹿を言うな」


 私は即座に否定する。


 「貴様も分かっているだろう」


 「あっ……そういえば」


 ベルダンディーの表情が、ようやく理解に至ったというように変わる。


 そう——


 私には、その選択肢が存在しない。


 何故なら、私には生殖する術がないのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ