表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
10章 迷宮~血戦編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

592/642

第10章ー49

「マヒロ……」


 思わず、その名前を小さく呟いていた。


 私たちは片隅で、ただ立ち尽くしている。

 目の前で繰り広げられている戦いを、呆然と見守ることしかできなかった。


 マヒロが戦っている。


 それも――とんでもない相手と。


 あの吸血鬼族。

 ブラムと名乗った化け物。


 強い。


 そんな言葉では足りないほど、圧倒的だった。


 マヒロは強い。

 私たちの中では間違いなく一番の戦力だ。どんな魔物が相手でも、彼女ならなんとかしてくれる。そんな信頼があった。


 けれど――


 そのマヒロですら、まともに戦って苦戦している。


 それが、どれほど異常な状況なのか。

 私には嫌というほど分かってしまう。


 私にできることは、ただ一つ。


 後ろにいるフィーちゃんたち三人を守ること。


 それだけだった。


 防御魔法を展開し、もしもの時に備える。

 それが、今の私の役目。


 だけど――


 その役目すら、意味があるのか分からない。


 なぜなら、ブラムは私たちにまったく興味を示していないからだ。


 攻撃が飛んでくる気配は、一向にない。


 まるで、最初から私たちの存在など視界に入っていないかのように。


 おそらく理由は簡単だ。


 マヒロ。


 彼女が一人で、あの化け物を相手取っているからだ。


 ブラムも、さすがに手を焼いているのだろう。


 それでも――


 胸の奥が、重く沈む。


 悔しい。


 あまりにも悔しかった。


 私の防御魔法は、決して弱くない。

 これまで何度も仲間を守ってきた自信がある。


 なのに。


 あの吸血鬼は、そんな魔法をまるで紙みたいに破ってきた。


 もし私が前に出たら?


 そんなの、想像するまでもない。


 間違いなく、足手まといになる。


 マヒロの邪魔になるだけだ。


 その事実が、どうしようもなく苦しかった。


 「……」


 拳を握り締める。


 助けたい。


 でも、助けられない。


 それが分かっているからこそ、余計に辛い。


 だけど――


 マヒロ一人で、あの化け物を倒すのは厳しい。


 いくら彼女でも。


 そうなると、頼れるのはもう一人しかいない。


 サダメ。


 彼は今、マヒロとは別の場所にいる。


 戦いに直接加わるのではなく、遠くからブラムの弱点を探っているはずだった。


 サダメは、こういう時に頼りになる。


 頭の回転が速いし、発想も柔軟だ。

 きっと何か見つけてくれる。


 そう信じている。


 「……サダメ?」


 ふと、気になってそちらへ視線を向けた。


 次の瞬間。


 私は思わず目を疑った。


 「なに……あれ?」


 サダメの様子がおかしい。


 一目見ただけで分かった。


 彼の身体が――


 光っていた。


 最初は、目の錯覚かと思った。


 戦闘の余波で、何かの魔法の光が反射しているのかもしれない。そう思った。


 だけど、違う。


 よく見ると、その光はサダメ自身から発せられている。


 身体の奥から、滲み出るような光。


 まるで――


 体の内側に、光源があるみたいに。


 「……え?」


 思わず息を呑む。


 その光は、どんどん強くなっていく。


 淡い輝きだったものが、次第に眩しさを増していく。


 サダメは目を閉じていた。


 その場から動かず、じっと立っている。


 まるで何かに集中しているように。


 魔法……?


 いや、でも。


 こんな光、見たことがない。


 炎でもない。

 雷でもない。


 神聖魔法とも、少し違う。


 だけど――


 どこか似ている。


 暖かくて、強くて、そして――


 圧倒的な存在感。


 胸の奥がざわつく。


 魔力の波が、空気を震わせているのが分かる。


 こんな魔力……サダメから感じたことがない。


 「サダメ……」


 不安と驚きが入り混じる。


 何をしようとしているの?


 大丈夫なの?


 声をかけそうになる。


 でも――


 声が出なかった。


 邪魔をしてはいけない。


 そんな直感が働いたからだ。


 サダメは今、何かとんでもないことをしようとしている。


 それだけは、はっきりと分かった。


 光はさらに強くなる。


 眩しい。


 まるで、小さな太陽がそこにあるみたいだった。


 「……嘘」


 思わず、呟く。


 その瞬間。


 胸の奥で、小さな希望が灯った。


 もしかして――


 サダメは。


 ブラムを倒す方法を、見つけたのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ