表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
10章 迷宮~血戦編~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

591/642

第10章ー48

 「……ふう」


 一度、深く息を吐く。


 焦るな。

 焦れば、魔力の制御を誤る。


 ゆっくりと息を吸い、そして吐く。

 荒れかけていた呼吸を整えながら、俺は意識を内側へと向けていく。


 これからやろうとしていることは、今まで試したことのない魔法だ。

 失敗すれば、自分自身がただでは済まない可能性もある。


 それでも――やるしかない。


 マヒロが時間を稼いでくれている今、この瞬間しかないのだから。


 俺は瞼を閉じ、新しい魔法のイメージを組み立て始めた。


 イメージするのは――太陽。


 だが、ただ「太陽だ」と思い描くだけでは意味がない。

 炎魔法だけで太陽を再現するのは、あまりにも無理があるからだ。


 火は火だ。


 どれだけ巨大な炎を作ったところで、それは所詮ただの炎。

 太陽とは、根本的に違う。


 だから――


 「炎だけじゃ足りない」


 頭の中で呟く。


 その時、ふとミオの魔法が脳裏に浮かんだ。


 ミオには、風魔法と治癒魔法を融合させた魔法がある。

 二つの異なる属性を一つにまとめることで、新しい力を生み出す技。


 最初に見た時は単純に凄いと思ったが――


 今なら理解できる。


 「二つを……一つにする」


 俺が扱える魔法は二種類。


 燃え盛る炎。

 そして、輝く光。


 炎魔法と光魔法。


 似ているようで、まったく違う力。

 だが、この二つを掛け合わせれば――


 太陽に近い何かを生み出せるかもしれない。


 「できる……はずだ」


 自分に言い聞かせる。


 太陽のように激しく燃え盛る焔。

 日光のように世界を照らす光。


 その二つを、同時に存在させる。


 いや――


 存在させるだけじゃない。


 融合させる。


 「落ち着け……今の俺なら」


 深く集中する。


 すると、意識の奥で景色が変わった。


 瞼の裏に広がるのは、暗闇。


 だが、それは単なる暗闇ではない。


 広大な宇宙のような空間。


 俺の体内が、まるで一つの宇宙になったかのような感覚だった。


 もちろん現実ではない。

 魔法を組み立てるためのイメージだ。


 その宇宙の中に、二つの光が現れる。


 一つは、赤く燃える炎。


 一つは、白く輝く光。


 炎と光。


 それぞれがゆっくりと動き出し、俺の体の中心――心臓の位置へと引き寄せられていく。


 「……」


 静かに見守る。


 二つの力が、少しずつ距離を縮めていく。


 やがて、それらは触れ合った。


 その瞬間――


 炎と光は反発することなく、互いに溶け合い始めた。


 まるで液体同士が混ざり合うかのように。


 赤い炎が白い光に溶け込み、白い光が炎に染まる。


 境界線が消えていく。


 「ぐっ……!?」


 次の瞬間。


 突然、強烈な光が弾けた。


 瞼を閉じているにもかかわらず、視界が真っ白になる。


 瞼の裏側が、まるで昼間の空のように明るくなっている錯覚。


 思わず目を開けそうになる。


 だが――


 開けたらまずい。


 そんな直感が走った。


 本当に日光を直視するかのように、目をやられる気がする。


 それほどまでに、その光は強烈だった。


 「はあ……はあ……」


 呼吸が荒くなる。


 体が、急激に熱くなっていく。


 胸の奥。


 心臓のあたりが、燃えているように熱い。


 いや、燃えているのかもしれない。


 体内で――


 新しい太陽が生まれようとしている。


 そう錯覚するほどの熱量だった。


 額から汗が流れる。

 背中も、手のひらも、びっしょりと濡れていた。


 呼吸が浅くなる。


 肺が熱い空気を吸い込んでいるような感覚。


 「はあ……はあ……」


 苦しい。


 だが、ここで集中を切らすわけにはいかない。


 もし魔力制御を失敗すれば、この力は暴走する。


 それだけは分かる。


 だから俺は必死に呼吸を整えた。


 ゆっくり吸う。


 ゆっくり吐く。


 乱れた心拍を落ち着かせる。


 「……ふう」


 ほんの少しだけ、呼吸が整った。


 宇宙の中心では、炎と光が完全に混ざり合い、一つの塊になっている。


 それはもはや炎でも光でもない。


 まったく新しい存在。


 眩い輝きを放つ、灼熱の球体。


 「……よし」


 その瞬間。


 消えかけていた集中力が、ふっと戻った。


 魔力の流れが安定する。


 体内の宇宙で、その球体がゆっくりと脈動した。


 まるで――


 新しい恒星が生まれたかのように。


 「いける」


 確信が湧く。


 これは、失敗じゃない。


 完成だ。


 炎と光を融合させた、新しい魔法。


 太陽に最も近い力。


 そして――


 俺はついに、自分の内側に新たな太陽を生み出すことに成功した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ