↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
2章 脱出編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/817

第2章ー23

 「はあ……はあ……」


 「オラ、死ねや……!」


 「はあっ!」


 「ぐわああっ!?」


 「っ?! こ、このガキ……本当にただの子どもか?」


 魔物との戦いが始まってから、いったいどれほどの時間が経ったのだろう。


 体感では、一時間以上も戦い続けているような気がする。実際には、そこまで長くはないのかもしれない。


 それでも、身体に蓄積した疲労は限界に近づいていた。


 肺が焼けるように熱い。

 息を吸うたびに胸が痛み、呼吸を整えようとしても、なかなか落ち着かない。


 これまでに何体の魔物を斬り倒しただろうか。


 二十体……いや、三十体以上は確実に倒したはずだ。


 それなのに、いくら倒しても敵の数が減っているようには感じられない。


 まるで、底なし沼に足を踏み入れてしまったかのようだった。くそ。想定していた以上に多すぎる。


 「落ち着け! 相手は一人だ! ただのガキじゃねぇが、数で押し切りゃ殺せない相手じゃねぇ! 囲んで潰せ!!」


 「うおおおおおお!!」


 「くっ!?」


 魔物たちは勢いを衰えさせることなく、一斉に襲いかかってきた。


 今度は五、六体が同時に迫ってくる。


 これまでは、なるべく一対一の状況に持ち込み、確実に仕留めることで数を減らしてきた。


 だが、複数の魔物を同時に相手にするのは危険すぎる。


 今の自分には、そんな余裕はない。


 「ん゛っ!!」


 完全に包囲される前に、自分は地面を蹴った。


 【脱兎跳躍《ラジャスト》】を発動させ、迫りくる魔物たちの頭上へと飛び上がる。


 間一髪。


 どうにか包囲網を抜けることには成功したが、これで奴らに気づかれてしまっただろう。


 自分が複数の敵を相手にすることを避けている、ということに。


 「ちっ、やり損ねたか」


 「だがよ、あのガキ……ビビってやがるぞ」


 「ああ。このまま押せばいける!」


 「くそっ……!」


 案の定、見抜かれていた。


 どうする……?


 いったん距離を取るか?


 いや、そんなことをしている場合じゃない。


 仲間たちが今どうなっているのか、まったく分からないのだ。


 魔障結界は、まだ解除されていない。


 もしかしたら、作戦そのものが失敗している可能性だってある。


 それでも――。


 自分がここで逃げるわけにはいかない。


 こいつらの注意を引きつけ、ほかの場所へ向かわせない。


 それが、自分に与えられた役目なのだから。


 ……だが。


 ミオは、無事なのか?


 ラエルたちは、ちゃんと逃げられているのか?


 嫌な想像が頭をよぎる。


 今すぐにでも仲間たちのもとへ戻りたい。

 無事かどうか、自分の目で確かめたい。


 そんな衝動が、胸の奥から込み上げてきた。


 ――ダメだ。


 ――信じろ。


 今は、目の前の敵に集中するんだ。


 「よし、もう一度囲め!!」


 「っ?! しまった!」


 ほんの一瞬、考え事をしてしまった。


 その隙を、魔物たちは見逃さなかった。


 着地した瞬間、背後から気配が迫る。


 前方にも、殺気。


 「……っ!」


 ――逃げ場がない。


 背後の敵を斬り伏せて突破するか?


 いや、間に合わない。


 仮に斬れたとしても、前方の敵に攻撃される可能性が高い。


 よくて相討ち。


 かといって、前方へ突っ込むにも、着地直後で体勢が整っていない。


 「ははっ、とっとと死にやがれ!!」


 「……くそっ」


 間に合わない。


 もう、どうすることもできないのか。


 ここで終わるのか?


 ようやく見つけた、生きる意味。


 もう一度、みんなと生きて帰るという約束。


 それすら、ここで失ってしまうのか――。


 「――うおっ?!」


 「っ?! なんだ、今の音は!?」


 「……?」


 その瞬間。


 どこか遠くから、空気を引き裂くような轟音が響き渡った。


 「……っ!」


 あまりにも突然の音に、思わず身構える。


 魔物たちも同じだった。


 今まさに自分を仕留めようとしていた連中が、一斉に動きを止める。


 「な、なんだ……?」


 周囲にざわめきが広がった。


 魔物たちは互いに顔を見合わせ、音のした方向へ視線を向けている。


 自分も何が起きたのか理解できず、思考が一瞬止まってしまった。


 ――今の音は、何だ?


 「お、おい! あそこ……竜巻が出てるぞ!!」


 「はあ?! 何言ってやがる!」


 「いや、俺も分かんねぇ! けど、ほら、あそこだ!!」


 「っ!?」


 魔物の一体が指さした方向へ、自分も視線を向ける。


 そして――。


 「……なんだ、あれ」


 そこにあったのは、天へと届きそうなほど巨大な竜巻だった。


 地面から空へ向かって、一本の柱のように立ち上っている。


 その規模は、明らかに異常だった。


 こんなものが、この村で自然に発生するはずがない。


 「……まさか、ミオが……」


 思わず、そんな言葉が口から漏れた。


 あの方角には、魔造種の貯蔵庫があったはずだ。


 タイミングも、あまりにも一致している。


 ――儀式の破壊に、成功したのか?


 いや、それにしても……。


 「派手すぎるだろ……」


 あんな巨大な竜巻を生み出すなんて、いったい何をしたんだ?


 「だ、誰か状況を確認しろ――」


 「はあっ!?」


 「ぐわああっ!?」


 「っ?! しまった、あのガキが逃げたぞ!!」


 「追え!! 逃がすな!!!」


 「……悪いな」


 混乱している魔物たちの隙を突き、目の前にいた一体を斬り伏せる。


 そのまま地面を蹴り、【脱兎跳躍《ラジャスト》】を発動。


 包囲の外へと一気に飛び出した。


 ――よし。


 これで、どうにか抜けられた。


 囮の役目は、もう終わった。


 魔障結界も、じきに解けるはずだ。


 だが……。


 ――ミオが危ない。


 あの竜巻の中心にいるのが彼女なら、無事で済むはずがない。


 あれほどの魔法を使ったんだ。


 魔力酔いだって、相当ひどくなっているはず。


 それに、もし魔法を制御できていなかったら……。


 「待ってろよ、ミオ! 今、助けに行く!!」


 自分は全力で地面を蹴った。


 目指すは、夜を裂くような轟音が響く場所。


 あの巨大な竜巻の中心へ。


 ――絶対に、間に合ってみせる。


 そう自分に言い聞かせながら、自分は仲間のもとへ向かって駆け出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。