表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
2章 脱出編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/761

第2章ー21

 木箱の中身は、空のものもあれば、ぎっしり詰まっているもの、わずかに残っているものと、まちまちだった。


 「……」


 一見すれば普通の光景かもしれない。それでも、私の胸には小さな違和感が引っかかっていた。だが、これだけではまだ確信には至らない。


 「そうだ。一個ずつ確認してみれば……」


 そう思った瞬間、別の検証方法が浮かんだ。列を変え、上から順に中身を確かめていけば、この違和感の正体がはっきりするはずだ。


 ――そして結果は、予想通りだった。


 三段に積まれた木箱のうち、一番上の段はまったく減っていない。だが真ん中の段はかなり内容が減り、一番下の段に至っては完全に空になっていた。


 明らかにおかしい。普通、物を取り出すなら上から使う。手間も少なく、効率がいい。それに、入り口近くの箱から取った方が移動の手間もないはずだ。なのに実際には、中央付近の、しかも下段の箱から優先的に消費されている。


 「……儀式って、供物や生贄を捧げたりするものじゃなかったっけ?」


 木箱の謎を考えるうち、新たな疑問が湧いた。絵本や漫画で見た悪しき儀式には、必ずと言っていいほど“捧げもの”が登場する。サダメは、この儀式が成功すれば半永久的に結界を維持できると言っていた。それほど大規模な術なら、相応の代価が必要なはずだ。


 「……まさか」


 そこで、点と点がつながった。


 魔造種マド・シードには膨大な魔力が宿っている。儀式に必要なのは大量の魔力。そしてサダメは“魔力コストはかからない”と言っていた――けれど、それは外部から魔力を供給していない、という意味だったのだ。


 つまり、魔造種そのものを燃料にしている。


 「ということは……方陣は、この倉庫そのもの!」


 気づいた瞬間、すべてが腑に落ちた。倉庫全体が巨大な魔方陣であり、儀式の進行とともに魔造種が少しずつ消費されている。だから下段の箱から順に空になっていたのだ。


 「方陣を止めるには壊さなきゃいけない。でも、この倉庫自体が方陣ってことは……」


 理解した途端、新たな問題が現れる。方陣を破壊するということは、この倉庫そのものを破壊しなければならない、ということだった。


 「まいったな……私一人で、ここを壊すなんて無理に決まってるよ……」


 私はサダメのように攻撃魔法を扱えない。できるのは簡単な治療と、風で物を浮かせる程度。倉庫を破壊するには、どう考えても彼の力が必要だ。


 けれど彼は今、囮役として魔物を引きつけている最中。呼び戻すわけにはいかない。


 「ダメダメ。弱気になってる場合じゃない!」


 皆の努力を無駄にするわけにはいかない。だから、自分一人でもできる方法を考えなければならない。私は頬を叩き、無理やり気合を入れた。


 「でも、時間がない……どうする?」


 現実は厳しい。考えている間にも時は過ぎていく。サダメがいくら強くても、魔物を引きつけ続ければ、いつか限界が来る。そうなれば作戦は失敗だ。急がなければならない。


 「そうだ……魔造種を全部外に出せば――」


 ひらめきはしたが、すぐに問題が見えた。ここにある木箱は数が多すぎる。出口は一つ、窓もない。風魔法で浮かせられる箱はせいぜい五、六個。すべて運び出すには、時間が足りない。しかも薄暗い倉庫の中では作業効率も悪い。


 「……やっぱり、壊すしかないか」


 遠回りはできない。倉庫そのものを破壊する方法を考えるしかない。


 「私の風魔法で壊せるかわからない。でも……一か八か、やるしかない!」


 そのとき、以前サダメから聞いた魔法の基礎を思い出す。


 ――魔法で最も大切なのは“イメージ”。


 魔力を、別の現象へと変換する明確なイメージ。それが強いほど、魔法は現実になる。


 彼が詠唱なしで炎を生み出せるのは、魔力を炎へ変えるイメージを完全に掴んでいるからだ。私だって治療魔法も風魔法も使える。ならば――嵐のような暴風を思い描ければ、この倉庫すら壊せるかもしれない。


 「……嵐が吹き荒れるイメージを」


 私は目を閉じ、手のひらに風を生む。木箱を浮かせる程度の、いつもの風。ここまでは簡単だ。


 ――ここから先は、未知の領域。


 この風を、すべてを薙ぎ払う嵐へと変える。


 そう、強く――強く思い描く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ