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転生勇者が死ぬまで10000日  作者: 慶名 安
1章 転生編

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第1章ー14

 「『ふっ、今度は魔法で攻撃ですか。だが詠唱させる暇など……』」


 「【火球フレール】!!」


 「『なにっ?!』」


 エイシャが油断している隙に、無詠唱の火球を放った。

 奴は詠唱に時間がかかると踏んでいたのだろう。


 しかし今の俺は、二〇〇%の力を引き出せる状態だ。

 無詠唱魔法とはいえ、地面を抉るほどの巨大な火球を放つことも容易い。


 「『くっ!』」


 とはいえ、速度は決して速いわけではなく、油断していたエイシャにすら避けられてしまった。

 やはり攻撃魔法を当てるのは難儀だ。


 ――だが、今はそれでいい。

 おかげでエイシャと、俺の刀を奪った手との距離が開いた。取り返すなら今しかない。


 「はあああああっ!!」


 離れたことを確認した俺は、脱兎跳躍を駆使して手へと飛ぶ。


 一瞬で辿り着き、即座に刀を掴む。

 今度こそ、取り返してみせる。


 「ふんっ!!」


 「?!」


 刀に魔力を込めると、噴火のような勢いで炎が噴き出し、手の内部を焼き尽くしていく。

 これだけの火力なら抜けるはずだ。

 底なし沼のようだと比喩したが、所詮は魔法で作られた存在。魔力の攻撃に耐えられるはずがない。


 「よしっ!」


 炎で満たされた手は弾けるように消失し、俺は刀の奪還に成功する。


 ――あとは。


 「あとは、お前だけだ」


 「『……』」


 取り返した刀をエイシャへ向ける。

 さすがにもう余裕はない。この一撃で確実に仕留めなければならない。


 「炎獅子、蒼炎、光炎万丈」


 刀を上段に構え、詠唱を開始する。

 刀身へ炎が集束し、真紅の炎が次第に青白く変わっていく。


 極限まで濃縮された炎を解き放つ一振りは、赫火断刀の数倍の威力を誇る。

 その代償として、業炎刀は一度限りで砕けてしまうのが欠点だが――今は関係ない。


 「燎原りょうげんの火、劫火ごうか、業火、瞋恚しんいの炎!」


 詠唱を重ねるほど、青白い炎は刀身の内側で膨れ上がり、

 あまりの魔力に、刀が自ら震えだす。今にも砕けそうだ。


 ――頼む。もう少しだけ持ってくれ。


 「『ほう、面白い』」


 「!?」


 その瞬間、エイシャから桁違いの魔力が噴き上がる。

 奴も全力の魔法で迎え撃つつもりか。


 「『イノス・レールステン。私も全力の魔法をお見せしましょう。これで、どちらが立っていられるか――勝負です』」


 「……」


 エイシャは眼前に巨大な黒い球体を出現させる。

 ゴーレムの時よりも遥かに大きい。


 「『■■■、◆◆◆!』」


 「ッ?!」


 詠唱が始まる。

 だがその発音は、明らかに人語ではない――魔族の言葉。


 詠唱に合わせ、黒球はさらに膨張していく。

 すでにゴーレムを超える大きさだったそれは、気づけば結界の三分の一を占めるほどにまで成長していた。


 ――間違いない。規格外の魔法だ。


 あれを斬り裂き、さらに奴自身も斬らねばならない。

 ……できるのか?


 「業火滅却!!」


 ――いや、やるんだ!

 絶対に!!


 村を。

 村の人々を。

 家族を――守るために!!!


         「獅炎咆斬ライム・ロアッシュ!!!!」

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