幕間④ 「レオナルドの場合」
第二四半期の収支報告を、一人で眺めていた。
数字は悪い。一見して分かる程度には悪い。南部の織物が落ちている。税収の下方修正も、三か月で二度目だ。
問題はある。ただ、どの程度の問題なのかが判断しにくかった。財務のことは財務卿に任せている。こういうとき、誰かに「これはどういう意味か」と聞けばいい。
財務卿は言いかけた。「以前は、こういうとき……もう少し、手があったんですがね」
その言葉の続きが何だったのか、レオナルドは確認しなかった。老人が何かを惜しんでいるような口ぶりだったが、今は具体的な対応策の方が必要だった。
数字の悪化が続くなら、南部への働きかけを強化すればいい。通行税の見直しか、取引先の拡充か。いくつか手はある。
以前もこういう局面はあったはずで、そのたびに何とかなっていた。今回も同じだろう。
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部屋を出ると、廊下にエミリアがいた。
「お待ちしていました」と彼女は言った。「お顔が少し、疲れていらっしゃるようで」
「報告書を見ていた。大したことではない」
「そうですか」エミリアは少し目を伏せた。「でも、無理はなさらないでください」
その言葉の素直さが、レオナルドには心地よかった。
財務の数字のことは、明日でいい。側近に引き続き確認を指示しておけば、何とかなる。以前もそうだった。
ただ……ふと思った。
以前は、誰が確認していたのだろう。
考えかけて、止めた。誰でもいい。仕組みが動いていれば、誰が担っていても同じだ。
「殿下?」
エミリアが首を傾けた。レオナルドは表情を戻した。
「何でもない。行こうか」




