第64話 王都上陸!裏目に出る魔導具
「姫様、アクアリウムへ上陸する手はずが整いました」
「いよいよか」
クーデター軍の艦隊を壊滅させてから数日が経過した。俺達はアクアリウムへ上陸するため、船の準備や下調べなどを進めていた。
イカネスの報告によっていよいよ、上陸するときがやって来たのだ。
「ですが、状況はあまり宜しくありません。偵察隊の報告を総合すると、上陸してから王宮へたどり着くまでに苦戦するものと思われます」
「だよなぁ」
湖上から偵察した結果だが、相当な数の罠や待ち伏せ部隊が存在していることがわかった。湖に対して攻撃を仕掛ける装置が見当たらないことから、クーデター軍は完全に俺達を街の中に誘い込んで撃破する腹積もりらしい。
「あら? これは……」
「どうした、パール?」
「敵の罠についてですが、どうやら魔導具が主流のようですわ」
俺は偵察部隊の報告書をもう一度読み直した。確かに、罠の大半が魔導具らしき装置であるようだ。
おそらく、仕掛けたのはマリーナだろう。魔法研究者であったマリーナであれば、罠の装置として魔導具を利用した方が仕掛けやすいはずだ。
「となると――マナススリガイが使えるな」
「マナススリガイ、ですか?」
「ああ。マナススリガイは魔力を吸い取ろうとする性質があるからな。魔力のある方向へ寄っていきやすいんだ」
この説明を聞いたイカネスは、俺の真意を読み取った。
「つまり、マナススリガイを使って罠を見つけると?」
「そうだ。それに上手く罠に取り付いてくれれば、罠の魔力を吸い取るはず。そうなれば罠の動力源が無効化されるから、罠は発動しないはずだ」
もっとも、マナススリガイを使えば完璧に罠を防げるわけではない。マナススリガイは大型のタニシっぽい貝なので、動きは遅い。それに魔力を使わない罠はスルーするし、人間も魔法使いや魔導具を持っていない限り寄りつかない。
「移動力をカバーする方法は、簡単だけど多少はなんとかなる。けど待ち伏せはどうにもならない可能性が高いぞ」
「わかりました、兵士達に伝えます。それで、マナススリガイの準備の方は?」
「二日あれば準備できると思う」
「では、明後日に出撃といたしましょう」
こうして、俺達は明後日の朝にアクアリウムへ上陸することが決まった。それまでにマナススリガイの準備を進めておかないとな。
***
「ではこれより、アクアリウム上陸作戦を開始する!」
『ハッ!!』
俺の号令に、兵士達は敬礼で応え、モーターボートに乗り込んだ。
上陸するには大きい船に大勢乗せるよりも多数の小型ボートに分乗させる方がいい。岸や桟橋に同時に乗り付ければ、一度に上陸できる兵士も多いからな。
「イカネス、留守は任せた」
「お任せ下さい」
イカネスに留守を任せ、俺達はアクアリウムへの上陸作戦を開始した。
ブラキッシュ湖上の移動は問題は無かった。敵艦隊を壊滅させ、制水権はこちらが押さえているからな。
アクアリウムの港に接近しても、敵からの攻撃は一切無かった。
「偵察部隊の報告通りですわね。接近する船舶に対する攻撃手段をアクアリウム内に設置していないようですわ」
「そうみたいだな、パール。その代わり、街の中に罠や待ち伏せがたくさんあるはず。それじゃ、アレを投げるぞ」
『了解!!』
俺の号令で、兵士達は片手でつかめるサイズの球体を取り出した。
「一斉に投げろ! なるべく広く!」
そして俺の次の指示で、一斉に球体を港に向かって投げた。
球体は空中で破裂し、中から小さい物体が大量に放出される。
「とりあえず第1段階は成功ですわね」
「ああ。うまくまき散ってくれてよかった」
放出されたのはマナススリガイ。そう、俺はマナススリガイの遅い移動速度を補うため、広い範囲にまき散らせる小型爆弾のようなものを作ったのだ。
「十分後に上陸する。それまで警戒態勢を維持しながら待機だ」
このマナススリガイは、実はある工夫を加えている。その工夫は、俺達が上陸してから効果を発揮することになる。
「罠を見つけました、解除します」
「こちらも発見。直ちに破壊します」
「伏兵を発見! 戦闘に移行します!!」
実は今回使用したマナススリガイは、魔力を吸収すると殻が光るようになっている。この特殊仕様マナススリガイはアカリガイと錬金して生み出した。これによってマナススリガイが発光しているところに罠なんかがあると一目でわかるし、マナススリガイが魔力を吸いきって罠を動作不能にする前に兵士の手で解除や破壊を行うことが出来る。
そうすることで罠への対処時間を短縮し、進軍速度を速めることが出来る。
「しっかし、伏兵の発見に効果を発揮するとは思いもよらなかったな」
「伏兵部隊で最低一人は魔導具の武器を持っているみたいですわ。それが功を奏したようですわね」
まぁ、俺も魔導具の武器に反応して何回かは伏兵を見つけ出せるんじゃないかなとは思っていた。けど、しょっちゅう見つけ出すのは予想外だ。どうもマリーナが頑張って各部隊に魔導具武器を支給しているのが、俺達側に都合が良くなっているようだ。
「うれしい誤算だな。不意を突かれなければ負けることはない」
「なんなら、わたくし達の方が不意を突けることもありますわ」
敵の魔導具武器は、部隊に一人か多くて三人しか持っていない。しかも魔法を使えない者でも魔法が一種類だけ使えるというものだ。
対して俺達は、一人一人に銃を提供している。俺がホウシンガイから錬金した、アサルトライフルに似たような使い勝手のいい銃だ。
遠距離攻撃をするのが魔導具武器の目的なのだとしたら、同じ目的の武器を俺達は全員が所持していることになる。しかも魔法よりも銃弾の方が早いし連射も出来ることが多い。
これでは俺達の方に分があって当然というわけだ。
「この分では、予定よりも早く進軍できそうですわね」
「ああ。だが、油断は禁物だ。慣れてきて警戒をおろそかにする方が怖い」
そういうわけで、俺達は進みすぎないよう速度をコントロールしながら進軍を続けた。




