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異世界転生したらTSして『貝使い』なる能力をもらった。でもこの身体、何か訳ありみたいで……?  作者: 四葦二鳥


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第62話 完全なる隠密

~少し前~


「全員、シンは持ったな?」


「はい」


「この通り」


「使い方も習熟しております」


 俺は作戦に参加する兵士に確認した。この作戦において一番重要な物は、全員確実に携帯している。


「次に、作戦用のストレージバッグは?」


「装着済みです」


「中身も確認しております」


「操作方法、設置場所共に理解しております」


 今回、ウエストポーチ型のストレージバッグを兵士達に支給している。この中には、シンと同様作戦遂行に必要な物が入っている。


「よし。ではボートに乗れ。発進後は手はず通りに」


『はっ!』


 そして各々割り当てられたボートに乗り込んだ。

 このボートは俺がこの世界に来て最初の頃に錬金した『モーターボート』をベースに、フンスイガイとガスガイを装備してスピードを強化した代物だ。今回、この改良型モーターボートを何隻か用意した。


「モーターボート起動。パール、周囲の監視は任せる」


「お任せ下さいまし!」


 俺はパールと数人の兵士と共にモーターボートに乗り、出撃した。その直後、俺はシンの力を発動させる。


「隠密魔法を一時的に使用可能にする」


 『隠密魔法』は、その名の通り自分たちの存在を気付かせないようにするための魔法だ。視覚、聴覚、嗅覚といった五感はもちろん、気配のような第六感からすらも気付かせないという強力な魔法だ。

 ちなみにパールやイカネスに聞いたところ、透明になったり音を消したりする魔法は存在するらしいが、あらゆる感覚から気付かせないようにする魔法は聞いた事が無いらしい。


「よし。目標に最短で接近する」


 標的は艦隊の最後尾、最左翼に位置する船。最右翼の船は別班が担当する事になっている。


「すごいですわ。こんなに近くを通っているのに全く警戒されていません」


「ああ。これなら作戦も上手くいきそうだ」


 最短で接近するため標的外の別の船に接近することがあったが、全く気付かれなかった。何も存在しないかのように無反応だった。

 あまり疑ってはいなかったが、シンを使って獲得した隠密魔法の効果は本物だ。


「標的の右舷に接近。パール、アレを頼む」


「わかりましたわ」


 パールはストレージバッグからドローンを取り出した。同乗している兵士も同様だ。そしてドローンを操作し大砲の砲身を出している窓から侵入させた。


「侵入成功ですわ」


「よし。ガスを起動させろ」


 今回使用したドローンには、ガスガイを素材に錬金した睡眠ガス発生装置を搭載させている。


「ドローンからの映像を確認。船室内の敵兵を無力化しました」


「甲板の様子は?」


「ドローンを飛ばします。――無力化成功。左舷側の班も成功した模様です」


 これで、この船で抵抗する者はいなくなった。ちなみに左舷側の班はガス発生装置ではなく、麻酔銃を装備したドローンを使っている。甲板のような開放空間では、ガス状だと効果が薄いからな。


「よし。では船に乗り込め。後は手はず通りに」


 俺達は船に乗り込んだ。俺は一番最後に船に乗り込み、自分のストレージバッグにモーターボートを収納してから甲板に上がった。 甲板に上がると、左舷側の班も同時に船に乗り込んでいた。兵士達はテキパキと敵兵を拘束し、船倉にぶち込む。

 同時にストレージバッグから装備品を取り出し、武装を俺が錬金したものに変え、動力のスクリューも取り付けた。

 

「艤装交換、完了しました!」


「よし。向こう側は?」


 『向こう側』とは、最右翼の船の乗っ取りを担当する部隊の動きのことである。


「右翼側のドローンが到着しました。こちら側のドローンもすでに飛ばしています」


 当たり前の話だが、左右の端に位置する船同士なのでお互いの動きを確認し合うのは容易ではない。しかも任務の性質上、周囲の船に違和感を感じさせないようにしなければならない。

 そういうわけで、お互いにドローンを飛ばし合うことで乗っ取り完了の合図にしたのである。もちろん、敵に悟られないよう艦隊の最後尾のさらに後ろを迂回させて飛ぶようにしている。


「では、次の段階に進むぞ。速度を上げ、敵旗艦と併走せよ」


 俺の命令に従い、船はスクリューを回し速度を上げた。向こう側の船も同様だ。

 そして二隻は、艦隊の先頭を航行する敵旗艦に併走した。


「照準、敵旗艦。撃て!」


 甲板に装備された大砲から一斉に弾が放たれる。敵旗艦は両側から挟み撃ちされる形で攻撃を食らい、瞬く間にボロボロになった。もう沈没寸前といった風体だ。


「後方の船に邪魔させるな。魚雷を後方へ発射だ!」


 船内の大砲は魚雷発射管に交換している。それを使い、魚雷を発射させた。後方の船はすぐさま沈没させることは出来なかったが、船底に穴が空いたはず。そのうち沈没するだろう。

 仮にうまく穴を塞げたとしても、戦闘に参加することは困難なはずだ。


「あっけない終わりですわね。海上でわたくし達を追いかけ回した艦隊とは思えないですわ」


「相手を混乱させる戦法を使ったからな。態勢が整わない状態で戦闘をやれという方が無理な話さ」


 あとは敵旗艦が沈没するのを見届ければ任務完了。晴れてアクアリウムへ上陸できる道が開かれるはず。

 だが敵旗艦が沈没する寸前、甲板から大きな影が飛び出した。その影はなんと、俺達が乗っている船に着地したのだ!


「お、お前は――」


「バーナクル・ポマチェア……」


 影の正体は、クーデター軍で艦隊を指揮していたバーナクル・ポマチェアだった。

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