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異世界転生したらTSして『貝使い』なる能力をもらった。でもこの身体、何か訳ありみたいで……?  作者: 四葦二鳥


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第52話 陣形魔法 vs 音波兵器

 俺はヒビが入った結界を映した映像を見ながら、唖然とした。


「馬鹿な、強度にムラも無ければ弱点も無いんだぞ!? そんな結界を一撃で破壊できるわけが……!」


 イカネスの隣で観戦していたパールもまた、啞然としていた。


「そんな、姫様の結界の強度をを上回ってるというんですの!?」


 そんな中、イカネスだけは冷静に状況を分析していた。


「おそらく、魔力を一点に集中させているのでしょう」


「どういうことだ、イカネス?」


「敵が放った魔法。円錐型のように見えますが、実際には先端に魔力が集中しているのでしょう。その証拠に、先端の部分のみ色が濃くなっており、他は薄い色味になっていました」


 なるほど。あれだけの人数の魔力がたった一点に集中しているんだ。しかも一人一人の魔法の練度は非常に高い。

 なら、限定的にこの世界で最大威力の攻撃を超えても不思議ではないか。


「とりあえず、ヒビが入ってもすぐ結界は修復される。問題は……」


「敵が結界を攻略する糸口を見つけてしまったことですな。同じ攻撃を続けています」


 イカネスの言うとおり、敵はくさび形陣形を変えないまま同じ魔法を何度も放っている。しかも寸分違わず同じ場所に命中させ続けている。多人数で発動する魔法だから息を合わせないと同じ場所に狙いを定められないと思うのだが、これも敵の練度の高さの証明なのかもしれない。

 もちろん、この状況を黙って見ている訳にはいかない。


「よし、音魔法打ち消し装置を使って敵陣を崩すぞ」


「姫様がおっしゃっていた『副次効果』というものでしょうか?」


 パールの質問に、俺は『ふっふっふ……』と意味深に笑いながら答えた。


「そのそも、あの装置は敵の音魔法の『音』を瞬時に解析し、相殺する波動の音を出すことで打ち消している。つまりどんな音でも出せるんだ。ということは、こちらからの指示で好きな音を出すことも可能だ」


「な、なるほど……。ですが、好きな音を出すことと敵陣を崩すことに何の関係が……?」


「今からそれを見せる。それとイカネス、若い兵士――とりあえず20代以下の連中に『耳を塞げ』と命令しておけ」


 俺は専用のコントロールパネルを操作し、周波数のダイヤルを目一杯上げた。これで高周波の音波が出るようになる。


「それでは、起動!」


 そしてスイッチをポチリ。直後、キーンというメチャクチャ高くて不快な音が鳴り響いた。


「な、なんですの、この音は?」


「音ですか? 私には何も聞こえませんが……」


 パールはバッチリ聞こえているが、イカネスは何も聞こえていないらしい。予想通りだ。


「俺の前世では『モスキート音』と呼ばれていた、高周波の音さ。不快に感じる人が多いな。ちなみに、聞こえる音の範囲は年齢と共に狭まっていくからな。イカネスは年齢的に聞こえなくなっているんだろう」


「なるほど、ですから若い兵士に『耳を塞げ』と命じられたのですね。……自覚はありますが、他人から年齢のことを指摘されると複雑な思いになりますな」


 イカネスは非常に複雑そうな表情をしてそう言った。自分の年齢に思うところがあるらしい。


「音魔法打ち消し装置は指向性が高い。今聞こえている音は装置から漏れ聞こえているに過ぎない。装置の真正面にいる敵はモロにモスキート音を浴びて居るぞ」


「そうですわね。敵が耳を塞いでのたうち回っているのが見えますわ。魔法もあまり上手く詠唱できていないようですし」


「今が好機ですな。全軍、反撃開始! 敵を完膚なきまでに追い払うのです!!」


 イカネスの号令と共に、自軍が攻撃を再開した。大砲やレールガンを撃ちまくり、出撃したドローンからも猛攻が加えられる。敵も魔法を撃ち返したり、防御魔法で防いだりしてはいるが、完全に劣勢だ。大音量のモスキート音を浴び続けているからな、戦いに集中できないのだろう。

 

 とうとう耐えきれなくなったのか、敵の隊長であるマリーナがバイオリンを出して演奏したかと思うと、濃い黒煙が辺りに蔓延。それが晴れたときには、敵は既にいなくなっていた。


「……無事に追い払ったようですわね」


「その通りですな。我々の勝利と言えましょう」


「それと、音魔法の使い手がわかったな。まさか隊長自らが音魔法を操っていたのは少し驚いたが」


 ともあれ、俺達の勝利には変わりない。斥候を派遣し周囲を捜索して敵影が無くなったのを確認した後、俺達は勝利を宣言。砦に勝鬨が響き渡った。

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