第49話 不自然な共闘、見えざる敵
まずは3体の大型魔獣についての情報を整理しよう。3体とも海辺や海中を根城にするタイプだ。
一体目はクジラ型の魔獣、『モビーディック』。
全長は50メートル以上あり、その巨体に似合わず非常に俊敏な動きが出来る。さらに口からは強力な水流を吐き出すことが出来るので遠距離攻撃も可能だ。また、海中での機動力も高く、水中戦においては無類の強さを誇る。
二体目はアザラシ型の魔獣『トッカリ』。
『モビーディック』の次に大きい個体で、こちらも非常に俊敏かつ獰猛な性格をしている。鋭い歯を持ち、突進やかみつきなどを好んで行う上に強力な水流を吐き出すため近接戦でも無類の強さを誇る。また、外敵に対しては非常に警戒心が高く積極的に襲ってこないが、一度戦闘態勢に入ると凶暴さが増すという厄介な性質も持っている。
三体目はクラゲ型の魔獣『レスボーン』。
体長は5メートル前後で、見た目はシャボン玉のような姿をしている。触手を持ち、その触手には鋭い爪が生えている。さらにこの爪の先から毒が分泌されており、この毒を浴びると皮膚が焼け爛れてしまう。
これらの情報は監視役の兵士からもたらされ、俺にはイカネスが解説してくれた。
「まずは遠距離攻撃で撃退を試みなさい。レールガンを発射!!」
イカネスの命令で、魔獣の出現場所に近い砲台からレールガンが放たれる。
魔獣に攻撃が防がれることも無く見事命中。だが、魔獣達には多少ダメージを与えた程度だった。
「全然効いてない……!?」
レールガンの威力は高いはずなのにな。
『トッカリ』と『レスボーン』が反撃とばかりに水流を吐き出す!
だが幸いなことに、砦の結界が上手く働いたようで人的被害はもちろん、砦にも傷一つつかなかった。
すると今度は、モビーディックが水流を絶え間なく発射。トッカリは動き回りつつモビーディックの水流にかからない砲台に水流を浴びせている。
「各砲台から報告! 水流が激しく、弾が撃てないとのこと!」
「結界のおかげで無事とはいえ、この水流では相手に届きませんか……」
イカネスの言葉通り、砲台そのものは結界によりダメージはない。だが水流により弾の勢いを殺されてしまい、敵に届かない。敵に届いたとしてもコツンと当たる程度だろう。
そのため弾の無駄だと判断し、発射出来なくなってしまったのだ。
さらに、敵の猛攻に乗じてレスボーンが接近。鉤爪で攻撃を仕掛けてきた。
「鉤爪の毒で結界を破ろうとしている様ですが――姫様、どう思います?」
「結界真珠の結界は、この程度では破れない。でも、このまま閉じこもり続けるわけにもいかないだろ?」
貝使いの能力を使えばある程度なんとかなるが、物資は有限ではない。魔獣に襲われている間は安全に補充できないし、第一この遠征の目的であるアクアリウム奪還など夢のまた夢になってしまう。
さっさと魔獣を討伐ないしは撃退したいところだ。
千日手の状況をどうしようか頭を悩ませていると、パールがある事を話した。
「姫様。実は気付いたことがあるのですが……」
「なんだ?」
「魔物が行動を変える度にヴァイオリンの音が聞こえる気がしますわ」
さらにイカネスがパールの後に続いて話す。
「現在この砦を襲っている魔物ですが、確かお互いに出会えば縄張りを巡って死闘を繰り広げるほどの天敵だったはず。今のような共闘するような動きは本来あり得ない動きです」
「……臭うな」
ヴァイオリンの音と魔獣の共闘。絶対に何か関係があるはずだ。
そこで俺はレコードガイ、ホラ貝、ツツミガイを主な材料にして錬金。巨大な巻貝形のスピーカーのような魔導具を作り出し、砦の司令部の外に設置した。ここが砦で一番高い場所で、すぐ設置できる場所だからな。
そしてこの魔導具を起動させると――。
「魔獣の動き、止まりました!」
「同時に海へ引き返していきます!」
上手くいった。兵士の報告に、俺は小さくガッツポーズを取る。あの魔獣達は海に生息しているから、陸に留まる理由が無ければ海に帰るのは自明の理だ。
「姫様、これは一体何ですの?」
「音を打ち消す魔導具さ。不審なヴァイオリンの音を解析し、逆位相の音を叩き付けて打ち消したんだ」
「一部理解出来ない部分がありましたが……さすがですわ、姫様!」
パールが感嘆の声を上げる。だが同時に、ある事実を俺達に突きつけている証拠でもあった。それに素早く対応したのはイカネスだ。
「つまり、この魔獣の襲撃は人為的に引き起こされたもの。すなわち敵襲です。ヴァイオリンの音を媒介にして魔獣を操っていたようですな。全員、至急ヴァイオリンを持つ不審人物を捜索及び捕縛しなさい!!」
イカネスの命令に兵士達は素早く対応、捜索を命令した。しかし兵士たちは夜通し捜索を続けたが、結局足跡1つ見つけられなかった。




