第44話 空中戦の誘い
ルビーハーバーの海岸。普段は真珠貝養殖場として普段俺がいる場所だが、今回はある目的でやって来ていた。
空には風船のように頭を膨らませたタコが無数に浮いており、足には一門のレールガンを抱えている。
「では、目標に向かって発射!」
俺は手に持った貝殻のようなデザインのコントローラーを操作し、タコたちにレールガンを発射させる。発射したレールガンは海上に設置された的を見事粉々に砕いた。
「パール、イカネス。この『ドローン』の性能はどうだ?」
「素晴らしいですわ、姫様! 空から攻撃する手段なんてほとんど無かったのに、それを可能にしてしまうとは!」
「改造次第で攻撃の他にも偵察や工作にも使えるとか。様々な用途に使えますな」
そう。俺が海岸でやっていたことは新しく錬金した『ドローン』の試運転、そしてパールとイカネスへのお披露目のためだ。
前世のドローンの様に小型で使い勝手が良い飛行体があればいいなと常々思っていたが、スキルが第7段階に達したことで『フウセンダコ』を召喚出来るようになったことで異世界版ドローンの開発に成功したのだ。
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フウセンダコ
頭部に浮遊製のガスを溜め、短距離なら空を飛べるタコ。
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このフウセンダコを素体にライデンガイとカメラガイ、コントローラの外殻用の貝殻を錬金することでドローンを作成できる。ライデンガイの電気を使った電波で通信を取りコントロールしたり、ドローンに装備させたカメラガイの効果でドローンからの映像を見ることが出来る。
更に今回、ドローンに小型のレールガンを持たせる事で攻撃手段を確保している。
「どうだろう。これでクーデター軍の侵攻を防げるか?」
実は、数日前からイカネスの密偵がある情報を掴んで報告していた。
『クーデター軍にルビーハーバー侵攻の予兆あり』。
この報告に俺達は一気に警戒心を高め、すぐに行動を開始した。ドローンをこのタイミングで錬金した理由はこれだ。しかも今回の侵攻、陸からはシェルドンの騎兵隊が、海からはバーナクル率いる艦隊が同時に攻めてくるらしい。
この情報にイカネスは首をひねっていた。なんでもシェルドンとバーナクルは仲が悪いのではないかという噂があるらしい。結局確かな証拠を掴めなかったので『噂は噂だった』ということにして、今回の侵攻の対策を練っていたのだ。まぁ、イカネスは他にも『二人が協力せざるを得ない圧力がかかった』という可能性も考慮していたけど。
いずれにしても、最悪を想定して敵が見事な連携を見せる前提で動いた方が良さそうだ。
「確かにドローンは使い勝手が良い優秀な兵器でしょう。しかし操縦者の技量次第では宝の持ち腐れです。それに有効な戦術も研究しなくては……」
「つまり、まだまだ数が必要って事だな」
ルビーハーバーの兵士の訓練用、それと指揮官クラスの人の研究用、もちろん実戦に使う分もあるから――結構数がいるな。
「とりあえず、ギリギリまで生産してみるよ」
「お願い致します。私は訓練や研究の段取りを行いますので……」
「わたくしは姫様をお手伝いしますわ!」
こうしてクーデター軍が侵攻を開始するギリギリまで、俺はドローンの生産を続けたのだった。
***
数週間が経った。まだ十分とは言えないがドローンはある程度確保できた。兵士への訓練も始まっており、最初は戸惑っていた兵士達だったが徐々に順応していった。中にはちらほら卓越した腕前を持つ者も現れている。
一定以上の操縦技術を持つ兵士は領主館に詰め、偵察用ドローンを飛ばしてクーデター軍の侵攻がないか監視している。
そして、とうとうその時はやって来た。
「報告します! ルビーハーバー近郊にクーデター軍騎兵隊を確認。シェルドンの姿も確認できました!」
「ルビーハーバー沖に艦隊を確認。バーナクル・ポマチェア伯爵の姿を確認できました」
「わかりました。各員に連絡、持ち場について下さい。ルビーハーバー防衛作戦を開始します!!」
イカネスの号令を皮切りに、ルビーハーバーを巡る攻防戦の幕が開けたのだった。




