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異世界転生したらTSして『貝使い』なる能力をもらった。でもこの身体、何か訳ありみたいで……?  作者: 四葦二鳥


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第39話 港町の苦境

「お久しぶりですね」


「久しぶり。こうして会話するのも初対面の時以来だな」


 イカネスからルビーハーバーの代官屋敷に案内され部屋をあてがわれた俺達は、長旅やバーナクル率いる追手を必死に逃れたりしたからか即ベッドに潜り込んで眠ってしまった。

 そして今は夢の中。対面しているのは俺と瓜二つ――というかそのまんまな姿を持つ少女。普段は俺の意識の奥で眠っている、『本来の』コーリー・ノーチラスだ。一度エメラルドの森でパールと出会った直後くらいに言葉を交わしたが、その後は特に夢に出てくることはなかった。


「無事に安全な街にたどり着き、頼れる人物と合流できたのでまずお礼をと思って」


「礼なんて言われる筋合いは無いけどな。俺はあくまで俺の意思でここにいる。自分の身を守るために行動した結果だ」


 謙遜はしたが、良い機会だからコーリーに聞いてみた。今日出会った人物についてだ。


「ところで、イカネスってどういう人間なんだ? パールは信頼しているようだが、俺は初対面だから実際にどういう人物かよく知らない」


「イカネス様は信頼できる方です。私も父上も何度もお世話になっていました。特に鑑定魔法を持っている事によるところもありますが、人を見る目は抜群です。父上が人事に迷ったときにはイカネス様が直々に面談し、鑑定魔法を行使して助言をしていました」


 なるほどね。確かに今日イカネスと出会った時も、俺を鑑定し俺の置かれている状況や素性を詳しく知り俺に適切に対応していた。人間の本質を見抜く能力が高いんだろうな。


「明日からスキルの成長を目指して特訓されるんですよね? イカネス様の助言に従えば確実に、効率よく成長できるはずです」


「そうか。なら明日からしっかりやるしかないな」


 そう言って俺は拳を握りしめた。


「さて、そろそろ目覚めの時間ですね。明日から頑張って下さい。あと最後に一言」


「なんだ?」


 コーリーは俺をじっと見つめた。


「ようやく女の子の身体に慣れてきたようですね」


「おかげさまでな。さすがに何度もトイレや風呂に入ればいい加減慣れる」


 最初はトイレや風呂でデリケートな部分を触る度に感じてしまっていたが、すっかり慣れてほとんど何も感じず、今ではほぼ流れ作業と化している。

 そういえば最初にコーリーと会話した時、感じてしまうことに関して苦言を呈されていたな。この身体でいる限り完全に無くすことは出来ないだろうが、コーリーにはもう文句は言われないだろう。


「その調子です。これからもっと女の子として振舞えるように頑張って下さいね」


 コーリーは微笑むと、後退しながら去っていった。


***


 翌朝。

 俺とパールは普段着に着替え、代官屋敷の食堂に向かった。朝食を食べるためである。


「おはようございます」


「おはようございますわ。イカネス様のおかげで昨晩はゆっくり眠れましたわ」


 食堂に行くと、イカネスと既に起床していたメイドたちが朝食の準備をしているところだった。食堂には大きなテーブルがあり、既に食器やパンなどが並べられている。


「では姫様、オイスター公爵令嬢。早速朝食をいただきましょう」


 俺達は席に着き、朝食が始まった。朝食のメニューはシンプルながらもボリューム満点だった。焼きたてのパンに新鮮な野菜とチーズを挟んだサンドイッチ、フレッシュなフルーツとミルクで作られたジュース、そしてスープが用意されていた。

 そんな中、パールが何かに気付いた。


「紅茶にコーヒー? まだ貿易が継続しておりますの!?」


「どういうこと、パール?」


「紅茶もコーヒーも気候の関係でエルマリス王国では生産出来ないのですわ。全て輸入で賄うしかない品ですの」


「ああなるほど。そういう事情ね」


 この国の貿易事情の一端が図らずもわかってしまった。さらにイカネスが説明を付け足した。


「クーデターによる政情不安定な状態が継続しておりますが、なんとか努力して貿易は継続しています。ルビーハーバーは貿易港ですので。ですが今のエルマリス王国の状態は商人や船乗りが敬遠する状態に変わりなく、貿易量は日に日に減少。加えて我々の支配領域は少なく、貿易の商品となり得る資源もほとんど無い。現在は倉庫にあった輸出予定品を細々と売り続けており――要は預金を切り崩しながら生きながらえている様なものです」


 この街の現状を改めて把握できた。とにかく貿易頼りの街であり、その貿易がままならない現状はかなり苦しいらしい。さらにイカネスの言葉を借りれば、資源がほとんど無い。つまりは限りある在庫を輸出し、そのお金で生活する――生活費がなければ街、ひいては反クーデター派は滅亡だ。


「このままではいずれ在庫は尽き、貿易ができなくなる。貿易が停止すれば我々の生活は立ちゆかなくなるでしょう。ですが、昨日姫様のことを鑑定した際に光明が見えました」


 イカネスはそう言うと俺の方を見た。


「これは姫様のスキルの特訓にも関わることですが――」


「ですが――?」


 俺はイカネスの方をじっと見つめ、続きを促した。どうやら俺のスキルの特訓が、貿易と何らかの関わりがあるらしい。ピリッとした緊張感が食堂に張り詰める中、イカネスが再び口を開いた。


「まずは朝食を食べきってしまいましょう。お話はその後です」


「あ、ああ。わかった」


 あまりの雰囲気の落差にズッコケそうになったが、イカネスの提案に従い今は食事に集中するのだった。

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