第28話 砂塵の追跡劇
「クソッ、振り切れない!!」
俺とパールは自動車に乗り、ドラゴンから逃げようと必死に自動車を走らせていた。
だがドラゴンは自動車より速く、徐々にその距離を詰めていた。おまけに時節ブレスを吐き出して攻撃する。
で、そのブレスというのが……。
「砂利のブレスなんて、聞いた事ねーよ!!」
ただの砂利と侮るなかれ。砂利が高速で、かつ大量に射出されているのだ。いわばものすごく威力や弾丸数を魔改造された散弾銃のような物。
当たれば自動車ごと全身を穴だらけにされ即お陀仏だろう。
「ドラゴンは種類によって様々な属性を持つとされていますわ! おそらく、あのドラゴンは土や岩、砂に適性がある地属性のドラゴンですわー!!」
「落ち着いていれば詳しく話を聞きたいが、どんな属性にしろ当たれば終わりだ!!」
ただ言われてみれば、あのドラゴンは飛ぶのが苦手なのだと思う。一般的な鳥よりも飛ぶ速度は遅いからな。
本来であれば、あの程度の速度なら余裕で振り切れるくらいの速度をこの自動車は出せる。ではなぜドラゴンに追いつかれるくらいスピードが出ていないかというと……。
「岩が多い!!」
「全力を出せないような、いやらしい位置に置かれてますわ!!」
岩があちこちに置かれていて、進路を妨害するようになっている。しかも常に蛇行を強いられるような位置に岩があるのだ。そのせいでかなりスピードを落とさなければ前に進めない。
現在は、馬が余裕を持って走れるようなスピードしか出せていないのだ。
「パール、誘引ホラ貝を使おう」
「了解しましたわ。それ!」
パールがストレージバッグから誘引ホラ貝を取り出し起動。魔物をおびき寄せる不思議な音色が出たのを確認し、遠くに投げた。
が、しかし……。
「ダメですわ。全く気を逸らせていませんわ!」
「クッ、そんな……」
大抵の魔物はおびき寄せられるはずの誘引ホラ貝だが、ドラゴンには効かなかった。誘引ホラ貝が効かない体質なのか、はたまた別の強力な何かに引き寄せられているのか……。
「よう、いいザマだな」
突然、横の岩陰から声をかけられた。そこには馬に乗った騎兵団が俺達と併走している姿があった。
そして、声をかけた主は……。
「シェルドン……!」
過去何度も俺達を襲った、シェルドンの姿がそこにあった。
「テメェ、なんでこんな所に」
「察しが悪いな、コーリー・ノーチラス。お前らを捕まえるために決まってんだろ。そのために色々手を尽くさせてもらった」
「まさか……」
「ご明察。走りにくいよう岩を置いたのもオレ様達だし、その乗り物にも工作させてもらった。といっても、煙にドラゴンが好きなニ
オイを含む草を撒いて燃やしただけだが」
自動車に撒かれていた草は、そういう意味だったのか! そしてこの自動車にはドラゴンが好きなニオイがべったり付いている状態。誘引ホラ貝が効かないわけだ。
だが、疑問が1つ残る。
「お前ら、どうやってここまで来たんだ? ドラゴンヴェイルは危険地帯のはずだろう!」
「オレ様の部隊の中には、ドラゴンヴェイルで武者修行をしていたヤツが10人位いてな。かくいうオレ様も昔ここで修行していたのよ。部隊ごと移動するのは難しいが、少人数の工作員だけを先行させるのは可能ってワケだ。
それに魔物に出会いにくいルートも知っているから、お前らの足止めさえすればこうやって追いつくことも可能なのさ!!」
つまりシェルドンのヤツら、ドラゴンヴェイルにかなり詳しいのか。地の利があいつらにある以上、かなり厄介だな……。
「さて取引といこうじゃないか、コーリー。ここで降参し、おとなしくオレ様達と共に来るのであれば助けてやる。ドラゴンを追い払う方法を知っているからな。だが拒否するのであれば、このままジ・エンドだ。ドラゴンをより興奮させる方法も知っているからな、オレ様達は。
ボスは生きたまま捕らえるのがお望みだが、最悪死んでもいいと言っている」
シェルドンのヤツ、ニヤニヤしながらこっちを見てきやがる。こんな状況じゃなけりゃ殴り飛ばしてやるところだが……クソッ!
そして少なくとも、ヤツの提案には乗れない。シェルドンのボス、ディノフィス・アンモーンがクーデターの首魁である以上、俺の身柄を求めているのは公開処刑したいからだと簡単に想像が付くからだ。もちろんクーデターに与しなかった貴族の娘であるパールも公開処刑されるだろう。
つまり、どちらを選ぼうが俺達の結末は死のみなのだ。
クソッ、何か無いのか、この修羅場をくぐり抜ける方法は――。
「そうだ! アレがあった! パール、俺のストレージバッグからヤシオリを出してくれ!!」
「お酒を原料に作ったアレですわね!!」
「そうだ。それのニオイを風魔法でドラゴンの顔にぶつけるんだ!!」
パールがストレージバッグからヤシオリを取り出した。そしてヤシオリから発生するガスを風の杖を使って風に包み込むと、ドラゴンの顔面へ向け射出した。
ガスが入った風のカプセルがドラゴンの顔面にぶつかり、中身のガスがぶちまけれられる。
「お、ドラゴンの動きが……」
「フラフラしてますわね……」
さすがドラゴンすら吸い込んだだけで酩酊するというガス。さっきまで安定した姿勢で飛んでいたドラゴンが左右にフラフラし始め、飛んでいるのもやっとという状態になった。そして――。
「お、おい、こっちに来るな!!」
俺達にとっては運の良いことに、ドラゴンがシェルドンの部隊に向かって墜落した。さらに追い打ちをかけるように――。
「ウロロロロロロ……」
「うわあアアアァァァァァァ!!」
ドラゴンが食べたものをリバースするかのように大量の土砂ブレスを吐き出し、シェルドン達を埋めてしまったのだ。
「よし、とりあえず危機は脱せそうだな」
「そうですわね。……まぁ、ドラゴン退治というにはあまり綺麗な光景ではありませんが」
「そんなこと気にしてられる余裕はねぇよ。今は命が助かったことを喜ぼうぜ」
こうして俺達はドラゴンヴェイルでの最大の危機を脱し、北の海岸へ向かったのであった。




