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異世界転生したらTSして『貝使い』なる能力をもらった。でもこの身体、何か訳ありみたいで……?  作者: 四葦二鳥


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第25話 巨蜘蛛への挑戦

 錬金した物は、リュックサックのような物だった。肩にかける部分が革で出来ており、リュック本体の部分は小さい翼が二本生えている。また、底から巻貝が二個突き出している。俺の前世の人間が見たら、ジェットパックに似ていると思うだろう


「姫様、それは新しいカバン……でしょうか?」


「いや。これは『跳躍ユニット』だよ」


 この『跳躍ユニット』は、ジェットパックのように大量のガスを一気に噴射して大きく跳躍する道具だ。空中で方向転換することも出来る。


「実は跳躍するんじゃなくて、空を飛ぶための道具にするつもりだった」


「空を飛ぶ!? すごいですわー!!」


「まぁ、失敗したんだけどな」


 ガスガイが召喚出来るようになってから、俺はジェットパックのアイディアを思いついた。それでキャンプ中時間があるときにちょっとずつ試作を重ねたんだけど……。


「全然飛べなかったんですの?」


「飛ぶだけなら出来た。『飛ぶだけなら』ね」


 実際に自分が使ったわけではなく、ハミットに頼んでシミュレーションの真似事みたいなことをしていた。ハミットは錬金した物について性能をある程度把握出来る能力があるらしいから。

 結局、ジェットパックは空を飛ぶだけなら出来たが、姿勢制御がうまく出来なかった。空を飛びながらバランスを取り、行きたい方向へ進むという重要な事が出来ず、解決方法も見いだせなかったのだ。

 そして噴射するガスを一瞬だけ、大量に出すことで大きくジャンプし、さらにスポット的なガスの噴射で空中で方向転換程度ならできる『跳躍ユニット』のアイディアを思いつき今日に至る、というわけだ。


「戦闘を始める前に、少し慣らし運転しよう」


 俺は背負っていたストレージバッグを降ろしてパールに預け、代わりに跳躍ユニットを装着する。そして魔力を跳躍ユニットに注入し、ガスを噴射!俺の身体が大きく浮き上がった。大体あの洞窟の天井近くまで飛び上がっただろう。


「成功ですわ!!」


 パールの歓声が後ろから聞こえる。このまま何もしなければ落ちるだけだが、少し方向転換してみよう。

 跳躍ユニットに少々魔力を流すと同時に、身体を右に向ける。すると噴射されたガスの反動で右に移動することに成功した。

 地上が近づくと、ガスが自動で噴射され衝撃がやわらぐ。しかもゆっくりとした動きでなくスピーディーに着地できたから、戦闘中の素早い動きも出来るだろう。


「姫様、いかがですか?」


「勝機は見えた。あとはなんとか突貫でこいつを使いこなせれば勝てると思う」


 そして俺は30分ほど跳躍ユニットを使いこなす練習をし、ある程度慣れてきたところでトラピースパイダーに挑んだ。

 普通の人なら使いこなすのに最低二週間はかかるとハミットに言われたので、30分で使いこなした俺は貝使いのバフも働いているのだろう。

 

「パール、これを」


「姫様、これは……?」


 俺がパールに渡したのは、口径が大きい拳銃のような道具だった。


「『アカリガン』。ちょっと改造を加えたアカリガイを射出する道具だ。発射されたアカリガイは壁や天井にめり込んで照明になってくれる。洞窟の中は暗いから、よく見えずに攻撃を受けるかもしれないからな。その対策だ」


「わかりましたわ!」


 そして俺はパールに合図をし、一斉に洞窟へ突入した!


「まずは明かりを確保しますわ!!」


 パールがアカリガンを連続で放つ。壁や天井にめり込んだアカリガイは洞窟内を照らし出し、ナイター球場のように強烈な光が満ちた。


「悪いが、今夜の俺達の寝床のため犠牲になってもらうぞ、トラピースパイダー!」


「ギギ……ギギィ!!」


 トラピースパイダーは新しい獲物が入ったとでも思ったのか、発達した跳躍力で飛び跳ね、俺の視界から消えた。


「跳躍はお前の専売特許じゃないぞ!!」


 俺は跳躍ユニットに魔力を流し込み、高く跳躍した。

 そこで見たのは、ビルの間を駆け抜けるスパイダーマ〇のように糸を器用に使い、俺の背後を取ろうとしていたトラピースパイダーの姿だった。


「残念。その奇襲は失敗だ!」


 跳躍ユニットのスラスターからガスを噴射し、空中で方向転換してトラピースパイダーの方へ飛んでいく。


「くらえ!!」


 俺はトラピースパイダーの体めがけてナタを振るった、が……。


「……硬いっ」


「ギギィ!」


「うわっ!?」


 トラピースパイダーの体は硬く、ナタでは体の表面にちょっと傷を付けただけだった。ハモノガイ製の刃物だから多少なりとも傷つけられたが、普通の武器ならかすり傷すら付かなかったかもしれない。

 そしてトラピースパイダーは俺に体当たりを決行。そのままもつれ合い、地上に落下してしまった。


「ギギ……」


「姫様から離れてください!」


 俺を組み敷いたトラピースパイダーはその鋭い足で俺を貫こうとしたが、パールが水の杖でトラピースパイダーを押し流してくれたので助かった。


「すまん、パール!」


「お気になさらず! 後ろはお任せ下さい!!」


「任せた!」


 ……さて、ナタが効かなかったのはトラピースパイダーの硬い体のせいだろう。虫らしく外骨格で体の表面が硬そうだからな。

 だとすれば、体の表面が硬くても内部までダメージが通る武器――打撃武器が有効だろう。

 そう思った俺は、パールにある物をお願いした。


「パール、預けたストレージバッグからハンマーを出してくれ!」


「ハンマー……あれですわね!」


 俺は持っているナタを滑らせるようにパールへ投げ渡した。逆にパールはストレージバッグを、バケツで水を撒くような動作で目当てのアイテムを投げ渡した。

 俺はそのアイテムをキャッチし、軽く振った後構えた。


「さて、こいつの初陣だ――『ツツミハンマー』!!」

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