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異世界転生したらTSして『貝使い』なる能力をもらった。でもこの身体、何か訳ありみたいで……?  作者: 四葦二鳥


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第24話 危険な洞窟

「おはようございますわ、姫様」


「おはよう、パール。昨日はよく眠れた?」


「はい! 温度が快適でしたわ!!」


 昨日の就寝前、俺はあるものを錬金していた。前世でよく見た家庭用空調設備――つまり『エアコン』だ。

 チャッカタツムリ、コオリガイ、ガスガイを素材に錬金することで熱風や冷気を風に乗せて放出する。しかも前世のエアコンと異なり熱交換を行うわけではなく熱気や冷気を単純に作り出すため、室外機がいらないのだ。だからテントでも設置できる。


「今日の朝食はこれだ」


「これって……フレンチトースト?」


 お、この世界でもフレンチトーストがあるのか。だがパールの話を聞くと、俺の前世と扱いが異なるらしい。


「時間が経って硬くなったパンを食べられるようにする料理法ですわ。なので庶民や貧乏貴族の食べ物、というイメージがあります

わ。まぁ、本当に庶民の食べ物かどうかはパンに浸す液体の材料次第ではありますけど……」


 確かに、養鶏技術が高くないと卵は高級品になるし、牛乳ではなく生クリームを使うと原価が跳ね上がるからな。


「貝使いの能力のおかげで高価な材料を惜しみなく使えるからな。牛乳じゃなくて生クリームを使ってるし、砂糖も入ってる」


 生クリームはミルクガイを錬金して作った。卵はエッグシェルを、砂糖はシュガーシェルを錬金して手に入れた物だ。


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エッグシェル

卵のような白い二枚貝。身は黄色く、卵に近い味がする。卵の錬金素材。

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シュガーシェル

砂糖の原料になる巻貝。氷砂糖のような結晶状の突起が特徴で、殻は糖分で出来ている。様々な甘味料や菓子の原料になる。

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 俺は焼き上げたフレンチトーストにホイップクリームを添え、粉砂糖を振りかけてメープルシロップをかけた。ホイップクリームはミルクガイから、粉砂糖とメープルシロップはシュガーシェルから錬金したものだ。


「さぁ、食べて」


「では、いただきますわ」


 俺とパールは俺が作ったフレンチトーストをフォークとナイフで一口サイズに切り分け、メープルシロップ付きを口に運んだ。口に入れた瞬間、バターの香ばしい香りとあっさりした甘さが口の中に広がる。


「んん~、美味しいですわ!! ホイップクリームのまろやかさとバターとメープルシロップの甘みが絡み合って最高!! 古いパンの再利用という固定観念が壊れていきますわ~!!」


 パールは笑顔で感想を述べてくれた。その笑顔が俺の料理を喜んでくれているという実感を感じさせてくれる。こんなに喜んでくれるなら作り甲斐があるってものだ。

 朝食も終わり、キャンプも撤収。だが俺はある物を錬金してから自動車に乗り込んだ。


「姫様、何を作っていらしたのですか?」


「ああ、これだよ」


 俺はさっき錬金して作った物を見せた。


「これは……わたくし達の身長ほどもある巨大なハンマー? ですが、頭の形が太鼓? みたいになっていますわ」


「これは『ツツミハンマー』。俺の前世の国にあった、伝統的な打楽器をモチーフにした打撃武器だ。『ツツミガイ』に柄の部分の素材にする貝殻を使って作った」


------

ツツミガイ

肩に担げるくらいの大きさの巻貝。和楽器の鼓に近く、打楽器系の道具の素材となる。

------


「ちなみに、攻撃の度に音が鳴って自分や仲間を強化することが出来る」


「用途が幅広い武器ですわね。でも、なぜ新しい武器を?」


「打撃武器が欲しいからかな。今の俺達の武器は切断武器の『ナタ』と魔法攻撃の杖各種。これからはナタと魔法攻撃だけじゃ倒せない魔物が出るかもしれないから、打撃武器が欲しいと思ったんだ。強化能力は狙って得られたわけじゃない。ラッキーとは思っているけどな」


「そうでしたの。確かに、このハンマーがあれば打撃武器として十分に機能しますわ」


 そんな会話を交わしつつ、俺達は自動車に乗り込み出発した。


***


 今日も順調な旅路だった。魔物は遠目から見ても明らかに最初の場所の魔物より強くなっていたが、風の杖を使った戦闘回避術が良く効いた。なんせいくつも相手を戦闘不能にさせる手段を持っているのだ。どれか1つくらいは効くはずだ。

 そんな順調すぎる旅路だが、夕方に近づくにつれて焦り始めていた。


「姫様、どうかなさいましたの?」


「キャンプに適した場所がない……」


 洞窟、岩場、窪地など、魔物よけお香の匂いが籠もりやすい場所が見つからないのだ。このままでは危険な状態で夜を明かしてしまうことになる。

 日が落ちかけたその時、俺は洞窟を発見した。もうここしかないと思ったので洞窟に入ろうとし……。


「お待ちください、マスター!!」


「うお、ハミット!? いきなり声を出してどうした」


「中から強力な魔力の気配が漂っています。何か強い魔物がいるはずです」


 試しにそっと洞窟の中を覗いてみると、赤と白のストライプ柄が特徴のデカいクモがいた……。


「あれは、トラピースパイダー?」


「知ってるのか、パール?」


「図鑑に書かれている絵で見ただけですが。人間を一撃でしびれさせる毒を持っていますが、あの巨体の割に毒は強くないそうですわ。得意なのは空中戦だそうです」


「空中戦?」


 空を飛ぶようには見えないが――何か魔法のような物で飛べるのだろうか?


「糸ですわ。糸を壁や天井に引っかけ空中を縦横無尽に飛び回り、避けられない角度から鋭い足で刺し殺すそうです」


「それは……厄介だな」


 本当なら魔物の巣になっているような洞窟は避けるべきだが、こちらも命がかかっている。あいつを殺して、この洞窟を奪うしかない。

 致死性のガスを洞窟内に注入する方法が手っ取り早いが、気密性が高く換気しにくい環境でソンなことをやったら、俺達もキャンプどころではなくなってしまう。対面で勝負するしかなさそうだ。


 というわけで俺はレンキンガイを緊急召喚。ガスガイとヒカクイカを素材に、あるものを錬金した。

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