第14話 夢の浴室と水回り
続いて水回りを整えていこう。
最初に着手したのは洗面所。流しは付いているのだが、その上にあるはずの鏡がないので鏡をはめ込んでいく。
「鏡を作るには『スガタミガイ』を素材にして下さい」
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スガタミガイ
人間の身長ほどある細長い二枚貝。内側が鏡のようになっており、さながら姿見のよう。鏡の素材になる。
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スガタミガイをレンキンガイに突っ込むと、洗面所の鏡のスペースにピッタリはめ込めるサイズの鏡が出来上がった。枠がなく、装飾が一切無い家庭でよく見る洗面所の鏡だ。この鏡を洗面所の流しの上に設置した。
「流しの隣に謎のスペースがあるんだが……」
「洗濯機のスペースですね。排水用の穴があるでしょう?」
確かに、言われてみれば家で見かける洗濯機用のパンに見える。真珠質で出来ているからめちゃくちゃ綺麗で、洗濯機のパンとは思えなかった。
というわけで、洗濯機を作っていく。材料はフンスイガイ、モーターガイ、デンチガイ、チャッカタツムリ、それとフレーム用の貝殻。これをレンキンガイに突っ込み錬金すると――。
「お、ドラム式洗濯機か!」
出てきたのはドラム式洗濯機。フレームに貝殻がモザイク画のように敷き詰められており、貝殻1つ1つがボタンになっている。
ドラム式洗濯機って大きいからなかなか家におけないし、値段も高いから手が出せなかったんだよなぁ……。それが異世界で手に入るなんて、つくづくチートだな。
洗濯機はストレージバッグに一旦収納し、洗濯機のパンの上に置くように取り出す。自動的に排水パイプが排水溝にハマる位置に置けるようになっているので、面倒な排水ホースの接続作業をやらずに済む。
「この洗濯機は乾燥機能も付いているので、洗濯物を干す作業も不要です」
「おお、凄いな。かなり楽が出来そうだ」
素材にチャッカタツムリがあったら温水を使うのかなと思ったけど、熱風を出すのに使うんだな。
「次はトイレを作らないか? そろそろ作っとかないとヤバいかも……」
「ああ、確かにそろそろ尿意を催し始めても不思議ではない時間ですね。それでは作っていきましょうか」
相変わらずデリカシーもクソもないド直球な物言いをスルーし、俺はトイレを錬金する準備を始めた。
「今回は家に設置するトイレですからね。温水洗浄トイレを作っていきます」
「おお、一気に機能的になったな!」
今までは多少機能を追加したとは言え、基本的に穴に直接排泄するだけだったからな。本格的な便器が出来るだけでもありがたい。
「マスターは、便器の本体がどのような素材で出来ているかご存じですか?」
「確か――陶器だっけか?」
「正解です。なのでドロウミウシが必須の素材となります」
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ドロウミウシ
湿地帯に住むウミウシ。分泌する粘液と泥が作用し、焼き物に最適な粘土を身体に纏っている。陶磁器の錬金素材。
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ドロウミウシはその名の通り、泥を身に纏ったウミウシだ。この泥が陶磁器に最適らしい。
その他にフンスイガイ、チャッカタツムリ、モーターガイ、貝殻をレンキンガイに加え、錬金する。
しばらくすると洋式トイレが出来上がった。本体とタンク部分が陶器、便座部分が貝殻由来の真珠質で出来ているトイレだ。ちなみに蓋が貝殻の形になっていてちょっとした遊び心を感じられる。
このトイレをストレージバッグに入れ、家に運び込もうとしたが――。
「お待ちください、マスター。センイガイを使ってトイレットペーパーを錬金しましょう」
「今まで見たいに海綿シートを使わないのか?」
「海綿シートを保管する水槽がないのです。また多機能で使いやすくなった分パイプが詰まりやすくなったので、海綿シートよりも水に溶けるトイレットペーパーの方が良いのです」
まさか、便利になった分デメリットが出てくるとは……。まぁハミットの言うことは納得できたので、トイレットペーパーを錬金した。もちろん、思いっきりフワフワにして肌触りを良くしたけどな。
その後、俺は改めてトイレを家に運び込みトイレのスペースに設置。トイレットペーパーも設置し、トイレの設備を整え終えた。
「さて、トイレも出来たことだし、さっそく使ってみるか」
「このトイレは温水洗浄機能付きです。温水でウォシュレットが使えますし、便座も暖かくなります」
「マジかよ、それは楽しみだな」
なんでも、フンスイガイモーターガイと違っては水の出力の細かい調整が出来るため、ウォシュレットの装備が可能になったそう。まぁ、今回は小の方だからウォシュレットは使わないけどな。
早速スボンとパンツを脱ぎ、便座に座る。
「あー、楽だー」
かがまずに座って用を足せるようになり、姿勢が非常に楽になった。それに便座が暖かいので、お尻が冷えないのもありがたい。
チョロロロロロ……。
排尿をした後トイレットペーパーでおまたを拭いたのだが、非常に肌触りが良い。デリケートゾーンの肌を傷めず優しく拭けて、心地よい。
小休止を挟み、いよいよ最後の水回りを整える。
「最後、浴室を作るか。まさか部屋が丸々欠落しているとはな……」
浴室は洗面所の隣にあるという前世の住宅でよく見られる構造と同じなのだが、なんと扉だけ付いていて内部は何も無いのだ。どこに湯船や鏡を配置すればいいかという目印すら無かった。照明だけは付いているが。
「マスター。ここはちょっとした裏技を使いましょう」
「裏技?」
「家具や設備の配置を少し楽にする程度の裏技ですが。まずは素材をレンキンガイに入れてください」
浴室に使う素材はフンスイガイ、水槽、チャッカタツムリ、デンチガイ、センイガイ。水槽はキャンプ生活で使っていた物の予備があったのでそれを入れる。
後はそのままいつも通り錬金していたのだが……。
「今ですマスター、ストレージバッグをレンキンガイに被せてください!」
「え、何? どういうこと?」
俺はハミットの言われるがままに、ストレージバッグを開きレンキンガイに被せた。すると次の瞬間、ストレージバッグに何かが入った感覚がした。
「第一段階は成功ですね。では、浴室のスペースまで持って行きましょう」
「あ、うん」
言われたとおり浴室に行き、入り口でストレージバッグを開けた。
「うわっ!?」
ストレージバッグを開けた瞬間、何かが飛び出た。すると、浴室がいつの間にか完成していた……。
「成功ですね。どうしても同じスペースに複数の物を設置しなければならない時に使える裏技です」
「錬金された物を直接ストレージバッグに入れて、指定の場所で開くと自動的に設置される仕組みか……」
改めて完成した浴室を見渡す。床や壁はタイルだが貝の形になっていてカラフルだし、湯船はムール貝のように細長い。シャワーは手持ち出来るタイプで、どうやらセンイガイから防水繊維を作り出してホースにしているようだった。
シャワーヘッドもよく見たら丸い貝みたいなデザインになっており、浴室のあらゆるものが貝づくしだ。
そして窓が付いているのだが、なんと湖が見渡せる。湯船に入りながら綺麗な湖を見ることが出来るという、かなり贅沢な作りになっていた。
「なかなかいい風呂になったじゃないか」
「お褒めいただき光栄です。あとは色々と細々した物を作りましょうか。まだ浴室の鏡などが足りませんので」
その後、俺達は生活に必要な細かい物を何種類か作り、一日を終えた。




