第13話 貝の家
出来上がった家の外見は、召喚したイエガイの柄と同じくピンクパールっぽい色。円柱状の本体に三角屋根が乗った絵に描きやすいシンプルな家があると思うが、その三角屋根が巻貝になったかのような姿だ。
「では中に入ってみましょう」
「あ、ああ……」
ハミットに促され、俺は扉を開けて中に入る。
「靴を脱ぐスペースがあるんだな」
「はい、マスターの前世の国のスタイルを踏襲しました。靴を脱いだ方がリラックス出来ると思いまして」
中は床も壁も天井も全て真珠質で、テントと変わらない。部屋ごとにアカリガイで作った照明が設置されているし、窓もしっかりガラスで出来ているので明るい。素材に合ったスイショウガイは窓ガラスの材料のようだ。
階数は二階建て。1階が玄関とLDK、トイレ、風呂、洗面所と部屋が1つ。二階はトイレ1つと部屋が3つ。つまり前世の住宅広告とかでよく見た、一軒家のオーソドックスな部屋構成と同じだ。
しかも水道が完備されている。この水道は家の素材になったフンスイガイによって供給されているらしい。
「排水については気にしないで下さい。そのままケンチクガイの栄養となりますので」
「そういえば、そんな説明が書いてあったな」
水も明かりも付いているのですぐにでも住めそうだが、残念ながらそういうわけにはいかなかった。
「ハミット、聞きたいことがあるんだけど……」
「はい、何でしょう?」
「家具が無いのはわかる。普通の家も家具は自分で手に入れて運び込む物だから。でもさぁ、普通備え付けてあるような物も無いのはどういうこと!?」
この家、キッチンスペースがあるのにキッチンがない。トイレスペースがあるのに便器がない。浴室スペースがあるのに湯船もシャワーもない。洗面所は流しはあるが鏡がない。とにかく備え付けてあるような設備がことごとく無いのだ。
「実は家を作る素材は最低限の物でして。最初から設置するように素材を追加して錬金することも可能なのですが、制御が難しく時間がかかるので……。後付けが可能なので一個ずつ作った方が楽かなと思った次第です」
「ああ、そうだったんだ」
家具がなさ過ぎる事に関しては納得した。ということは、とにかく生活できるように家具を作るのが次にやることだ。
そういうわけで、俺は家の隣にレンキンガイを設置。そこで家具類を作ってストレージバッグにしまい、家の中の設置したい場所で取り出すという方法を取ることにした。
「まずはLDKから作っていこう」
貝殻を材料にテーブルとイスを作成。真珠のようにツルツルでキラキラした、大理石とはまた違う高級感を持つテーブルとイスに仕上がった。これをダイニングに設置。
続いて貝殻とセンイガイを素材にしてソファを作成。センイガイを召喚出来るようになってからクッション系のものを作れるようになったが、以前のキャンプ生活では必要性を感じなかったので作っていなかったが、今回本格的な家を手に入れたので作ってみようと思ったのだ。
繊維の染色手段がないので真っ白なソファになったが、センイガイから作られてあるだけ合ってわずかな光沢がある。ソファ用のテーブルと一緒にリビングへ置いた。
「次はキッチンだな」
「キッチンでしたら、以前作成したオーブン付きコンロを素材に出来ますね。イメージとしては改良に近いです」
ハミットによると、錬金した物へさらに素材を追加して錬金することで、改良や機能を追加できる物も存在するのだとか。その1つがキッチンらしい。
俺はオーブン付きコンロをストレージバッグから取り出してレンキンガイに投入。さらにフンスイガイを追加投入して錬金した。
「お、流しが付いてる」
出てきたのは、元々のオーブン付きコンロに作業スペースと流しが接続された、家庭によくあるスタイルのキッチンであった。そして引き出しも付いているのだが、取っ手が貝殻になっていておしゃれだ。
これをストレージバッグに入れ、家の中のキッチンスペースに設置すると――。
「うわぁ、ピッタリだな!」
「綺麗に一致するように設計されていますから。それとキッチンは元々チャッカタツムリを素材にした部分があるので、お湯も出ますよ」
確かに、水を出すレバーは左右に振ることが出来、左右の位置によって冷水とお湯を使い分けられるらしい。
さらに貝殻を素材に食器棚を作り、以前から作っていた食器や調理道具を収納。さらにコオリガイを素材にした冷蔵庫も作成して設置した。ちなみに食器棚と冷蔵庫は箱形に近い巻貝のようなデザインをしており、前世では決して見ることがない意匠であった。
「キッチンは一通り完了だな」
「はい。かなり充実したキッチンになりましたね」
続いて一階の部屋を整えていく。この部屋は寝室にするつもりだ。
「本格的にベッドを作るか。テント生活していたときは海綿のマットの上にそのまま寝ていただけだったし……。サイズは余裕を持って大きめで、クイーンサイズにしよう」
「一緒に寝る人もいないのにですか?」
「うるっさいなぁ! 大きいベッドを独り占めしてささやかな贅沢をしたいだけだから!!」
そもそも、いい年したおっさんが少女になってしまった身の上だからな。ただでさえ前世で恋愛経験も無いのに、誰を恋愛対象にしていいかわからなくなったから、恋愛するスタート地点に立つことも難しいんだ。
ハミットの戯れ言をいなした俺は、貝殻とセンイガイでベッドを製作。シーツは真っ白で面白みがないがフレームは至る所に貝殻の衣装をあしらったデザインにしてみた。
俺はベッドを部屋の中央に、枕元にはキャンプしていた時に使っていたフロアランプを設置し、寝室の体裁を整えた。




