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大河ドラマと梅里様  作者: 今西薫
48/50

47 京に刀伊の件が届く、道長ひたすら心配、内裏では初めてのことで様子をみたいという意見。乙丸「帰りたい!」

ドラマのネタバレをしてますので、お嫌なかたは回れ右を。

私見がかなり入ってますので、それも嫌な方は回れ右を。

第四十七回 哀しくとも


「うん? パイか?」

「ガレット・デ・ロワ、です」

「んー?」

「中身はアーモンドクリームを焼いたものですけど、中に陶器の人形が入っていて、それの入っているのを選んだらラッキーだとかいうお菓子です」

「へえ、陶器の人形が入ってるのか」

「いえ、ブランデーに漬けた干しあんずを入れてみました」

「おお、面白いな」

「ガレット・デ・ロワではないんですけど、似たようなお菓子を取り上げた小説で、そういうのを読んだので、やってみたくって」

「じゃあ、アンズが入ってたらアタリだな!」

 とても嬉しそうに言う梅里ばいり様に申し訳なく思う。

「それが、アンズって聞いたら味見がしたくなって、全部アタリになるように入れてしまいました」

「………」

 いわゆるジト目で見てくるが。

「だって、食べたかったんですもん」

 開き直って言い切った。

「ま、分からんではないな」

「ですよねー」

 梅里様は食べ物にはおおらかなので大丈夫だと思っていました。



「ええと、今回は、続きだよな。周明(ジョウミン)の胸に矢が刺さったあと。倒れた周明に、まひろは悲鳴を上げて駆け寄るが、逃げろ、と言う。通常時なら、もしかすると治療できたかもしれんがまだ戦のさなかだ。まひろでは周明を抱えては移動できないし、乙丸でも無理だ。闘っている武士たちに頼むわけにもいかん。離れようとしないまひろを無理やり引き剝がして乙丸は立ち去る。結局、周明を助けることは出来なかった。隆家(たかいえ)たちも、賊と闘うのに必死で、それどころではなかった」

 ああ……

「隆家たちは、無事賊を追い払った。まひろは、大宰府に戻り隆家に世話になっていた。この旅に出たばかりの溌溂とした様子は消え失せ、ただじっと座っている。周明を目の前で殺されてしまったことがまひろの心を苛んでいることは間違いない。隆家も見舞い、ここにずっといても良いとまで言う」

「親しい人を目の前で亡くしてしまったんですものね」

 うん、と梅里様はうなずいた。

「だが、隆家が京へ戻ることになった。その際に一緒に戻らないかと声をかけられる。残るつもりなら、次の者に託すが、と言う。まひろは返事をしないが、残りたそうな気配を察知して、乙丸が、自分は帰りたいと言う」

 乙丸……!

「それを聞いて、まひろは、なら乙丸は先に帰りなさいと言うのだが、乙丸は、まひろと一緒に帰りたいと言う。駄々っ子のように帰りたい帰りたいと言うんだ。隆家もまひろも、乙丸の気持ちが分かり、互いに顔を見合わせる」

 ううう。涙が…

「まひろは帰ることにする」

 グッジョブ、乙丸!



「一方、内裏では、隆家からの報せで大騒ぎだ。隆家は、頼通(よりみち)だけではなく、実資(さねすけ)にも同じ内容を送っていたのだが、頼通たちは陣定にかけるが、なにせ経験のないことだ。様子をみてはどうだ?という結論になる。距離もあるから、もう終わっているかもしれない、という意見も出る。そこへ実資が登場する。自分が到着していないのに陣定が始まっていることに怒るが、結論を聞いてさらに怒る。実資は同じ内容の報せをうけ、先に道長に報せにいっていた。越前の宋の商人の時でさえ、もし越前の港が宋に開かれれば、そこから京に攻めこまれたら大変なことになると帝を説得している。当然、大宰府という遠い土地のこととはいえ、様子見をする、という結論にはならない。各街道に武者を配置して守りを固めるという、実資の意見を支持する。実資は、道長の支持を得て陣定へ向かうが、やりすぎだ、と他の公卿達は言い、結局、様子見という結論になる」

 京から遠い土地のことなど、京から出たことないような公卿達には分からないということなのだろう。

「そして当然だが、勝ったという報せはまた時間を置いて届く」

 時差!

「ナレーションであったのだが、報せが届くまでの間に公卿たちの興味はかなり薄れていてな、褒章を出すべきかということにかなり乗り気にならない」

「え、そんなものなんですか?」

「うん。中には襲来があった日、京に報せが届いた日、時差を計算して、勝手にしたことだという意見も出る」

「えー」

「SNSでは、なんでも勝手に行動して褒章を要求されても問題が生じるので、当然の意見という投稿も見られた。まあ、分からぬでもない」

「そういうふうに言われたら確かにそうかもしれないですけど…」

 だって、距離が、時間がそれを許さないじゃないのよー

「ちなみに、実資も怒っていた。命がけで国を守った者たちに褒美を出さなかったらこの先誰も闘おうとはしなくなると力強い言葉で言っていた」

「実資!」

 思わず叫ぶと梅里様は苦笑する。

「実資が道長に事の次第を報告していると、そこに公任(きんとう)がやってくる。実資はここで退出するのだが、公任は道長の態度に怒りだす。公任は、隆家に褒美を出さなくても良いと言っていたのだが、実資の味方をする道長を見たのだな。公任としては、隆家は道長の政敵だから褒美を与えて力を付けさせないようにしたいと考えたらしい。だが道長は、国の危機を救ったことを褒めるべきだと言う。言い合いになりかけたところに、斉信(ただのぶ)がやってきてなだめるのだが、要するに危機感がないが故なのだろうとは思うな」

「公任も斉信も、ずっと京にいるんですものね」

「うん。道長のように、死の存在を近くに考えたこともないだろう」

「なんか、国の一大事が痴話げんかに負けたような変な感じですね」

「うん? うーん、うーん?」

 梅里様は頷きかけて止まり、首を捻っていた。なんかそんな変なことを言ったかな…



「まひろが京に戻ってきた。まずは家へ。為時(ためとき)に大宰府でのことを問われたのだが、まひろは言いよどみ、双寿丸に会ったことを告げる。周明のことは言葉にできる段ではないらしい」

 まあ、そうだよね。

「それから、土御門殿にも挨拶をしに行く。まず彰子(あきこ)へ。ここでも旅の話を求められるが、『まだ…』と言い、話をすることを断る。彰子は少し驚いたような様子だったが、また女房に戻って欲しいと告げる。まひろは驚いて、賢子(かたこ)は役に立たないのかと問う。まひろとしては、自分の代わりに賢子を置いて行ったつもりだったらしい。だが彰子は、賢子はよくやってくれるが、まだまひろにそばにいて欲しいと言う。まひろは、考える時をくださいと願って退出する」

「出仕するということは、道長の側に居るということだからでしょうか」

「まひろにとって出仕するということは、物語を書く、ということなのかもしれない」

「あ、もともとそうですもんね。家で書くって言ったのに、帝の気を引くために出仕せよって言われたんですもんね」

「うん、物語を書く必要がなくなったから、出仕をやめた。賢子が出仕をしてるから、収入について考えなくてもよくなったしな」

「乙丸が帰りたいと言い張らなければ、まだ帰らないつもりだったくらいですもんね…」

 梅里様は頷いた。

「それでな、帰り際、道長と出会う。このドラマの中ではよくあるシーンんだったんだが、屋敷内に橋がかけてあってな、短いんだが、アーチ状の橋が。その橋を挟んでばったり出会うんだ。道長は剃髪していてまひろははじめて見る姿だ。道長にしてみれば、大宰府が賊に襲われたと聞いた時から、無事でいてくれと願っていた相手が目の前にいる。もちろん、隆家から一緒に戻ってきたことは聞いていただろうが、直接会うのとはまた違う。何も言えずに見つめ合っているところで、まひろに他の女房から声がかかる。倫子(ともこ)に呼ばれたんだ」

「え」

 ちょっと、情報量が多すぎませんか!

「倫子の元へ行くと、昔、初めてまひろが土御門殿へやってきた時の話をする。五節の舞姫の時に倒れた話もして、懐かしいわと。そして、それで、殿とはいつからなの、と言う」

「!」

「驚くまひろに、私が気づいてないと思っていた?と続ける」

「ま、まままま、待ってください」

 驚いて思考が追い付かない私に、梅里様はふっと笑う。

「そして、待て次回、だ」

「わぁっ」

 鬼ですか。なんですか。待って、来週最終回じゃなかったっけ? なんでそういう持って行き方する?!

「ちなみに、このシーンは予告編で流れていた」

「はあっ?!」

「頭からずっと観ているだろう? まひろはなかなか京に戻らない。ようやく彰子に挨拶したあたりで、あと五分とかそんな感じだ。予告編で観たあの恐いシーンが残り五分の間に入ってくると分かった時の恐怖!」

 無茶苦茶恐いですっ

「しかも、彰子の元を退出して次かと思ってたら間に道長を挟むんだぞ? ドキドキし過ぎて心臓が止まるかと思ったぞ」

 分かります……



 何故かすごく疲れて(いや、疲れた理由は分かっている)、ガレット・デ・ロワを切り分ける…え。

「そう言えば、食べずに始めましたね」

「うん。今日は、倫子のセリフのインパクトが凄すぎてな。先に話をしたかったんだ」

 ガレット・デ・ロワは、パイ生地でアーモンドクリームを挟んで焼き上げるという、要するにアーモンドクリームパイなんだけど、表面にナイフで飾り模様を付けるのが特徴といえば特徴なお菓子で、要するに、中に何かを埋める時も、模様を意識すれば、どこに入っているのかは簡単に分かる。なので、ちょうど真ん中にくるように切り分けて、断面を確認して、梅里様の皿に載せる。

「手で摘まんで食べてもいいですよ」

 フォークは付けたが、パイ生地はどうしても砕けてしまう。それなら、直接齧りついたほうが、砕けて残ってしまう生地が少ない気がするのでそう提案する。

「うん、そうする」

 フォークを皿からテーブルへ移し、皿を左手に持って、右手で摘まんで齧りつく。テーブルマナーなんて、気にしない。私も同じようにする。

 サックリと焼き上げたパイ生地と、バターたっぷりのアーモンドクリームの相性は抜群だ。そして、端へと食べ進め、アンズに行きついた。口の中に広がるブランデーの風味。ブランデーに漬け込んでいたせいで、ドライフルーツの食感はもう無いが、遠くに酸味が残っているような気もする。ふむ。

「アンズはブランデーの風味しか分からんが、美味いな!」

 梅里様の感想は、微妙に悲しいものだった。


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