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大河ドラマと梅里様  作者: 今西薫
47/50

46 隆家、道長からまひろのことを頼まれていた、刀伊からの襲撃、まひろ松浦へ向かう

ドラマのネタバレをしてますので、お嫌なかたは回れ右を。

私見がかなり入ってますので、それも嫌な方は回れ右を。

第四十六回 刀伊の入寇


「今日はシュトーレンですよー」

 最近はシュトレンとも言うけど、先にシュトーレンで覚えたのでそう言ってしまう。

「シュトーレンということは、一切れだけか?」

 悲壮な顔をする梅里ばいり様。

「6個作ったから、大丈夫ですよ」

 レシピの関係で、どうしてもたくさんできてしまう。クリスマスまで毎日ひと切れずつ食べるというものらしいが、気にしなくてもいいと思っている。

「今年はスパイスを入れてみました。シナモンとカルダモン」

 レシピの半量だけ。スパイスを入れる甘いお菓子というのに馴染みが無くて、つい控えてしまう。

「まあ、まずはひと切れ」

 1センチ強ほどにカットして皿に載せる。クルミとレーズン、あとオレンジピールを刻んで入れてある。生地はなかなか固めにできたので、まあまあ成功な感じではある。シュトーレンの唯一の欠点は、表面の粉砂糖だと思う。ぽろぽろ落ちるので、食べる時に気を付けなければならない。

「うん、スパイスがいい感じだな」

 パクパクパクと三口ほどで全部を口に入れて、噛んで飲み込んで感想を言う。そして、期待のまなざしで私を見る。もうひと切れですね、はい。



「さて、今回は大宰府だ。周明(ジョウミン)と再会したところで前回終わり、その続きからだな」

 うん、確かそうだった。

「周明は、まひろを認めると去ろうとするが、まひろがそれを呼び止める。周明としては、刃物を突き付けて脅した記憶が先にあったらしい。恨んでいないのかとまず訪ねていた」

「ああ…。でも、その程度で恨むようなまひろじゃないですよね」

「うん、目の前で大切な人を殺されたわけではないからな」

 つまり、道兼とは違う、という話で。

「これまでのことを互いに話しながら大宰府政庁へと案内する。宣孝(のぶたか)の働いていた場所ということで、周明からの提案だ。着いてみると、今の周明の師である医師と会う。まひろが覚えていた宋の言葉で挨拶をする。ずっと使っていなかっただろうから、大したものだ。そのあと、隆家(たかいえ)とも会う。周明の師が、隆家の目を治した縁で、二人は顔見知りだ。最初、周明の恋人と思ったようだが、まひろが自己紹介すると、すぐに藤式部だと気づく。道長から連絡があって、もてなすようにと言われていたらしい」

 ……過保護…

「ちなみに、双寿丸(そうじゅまる)とも再会する」

「まあ、大宰府に行くって言ってましたもんね」

 双寿丸。でも、ここで何かあるってことではあるよね…。

「まあな。あと、隆家から、道長が出家したことをきかされる。さすがのまひろも驚いた様子であった」

「そりゃ、びっくりですよねえ」

 おそらく、まひろは自分が原因だとは思わずに、何かあったのだろうと思うのだろう…

「隆家は、好きなだけ大宰府にいれば良いと言う。道長からわざわざ頼まれたというのもあるのだろうが、夫が赴任していた土地だからとはいえ女の身で来るのは大変だっただろう、と」

「隆家って、良い人だったんですね」

 考えてみれば、伊周(これちか)と花山院の車に矢を射た後からはわりとまともだった気もしてくる。御嶽詣ででは伊周を止めているし。

「うん。双寿丸の主人が、仲間の大切さを教えてくれた、と言っていたぞ」

 おお、ここで繋がるとは。

「結局、大宰府の町は周明が案内してくれた。乙丸が共として一緒に来ていたのだが途中できぬへの土産として紅を買ったりしていたな。そろそろ松浦へ行こうと思うと言うと、周明が途中まで送ってくれることに。だが、大宰府から出立したその日に、隆家へ報せが入る。壱岐から、賊に襲われたという報せだ。老いた者と幼い者は殺され、それ以外は連れ去られ、食べ物は盗られた、と」

「賊って、外国の、ですか」

 歴史に詳しくない私は社会で習った元寇くらいしか知らない。

「うん、ウィキペデアで調べると、朝鮮半島の上のほうの日本海に接する範囲が赤く塗られていてな、どうもそのあたりの者たちが海賊をしていたようだ」

 梅里様はスマホを操って、地図を見せてくれる。

「報せを受けた隆家は、すぐに対処することにする。都からの返事を待っていたら間に合わないからな」

「ですよね、馬を使っても何日もかかりますもん。それが往復だから、返事を待っていたら、海賊たちに好きなように荒らされてしまう」

 うん、と梅里様はうなずく。

「賊が襲ってきた場所から、次に襲われるかもしれない場所を推測し、見張りを立てる。船が来たと報せを受けて、武者たちをまとめ向かう。戦国時代の鎧のような揃ったものではなく、いろいろバラバラでな、戦の無い時代だったのだと改めて思ったぞ」

 な、なるほど。

「小さな舟に五人ほど乗って浜に上がってくる。そこで隆家が鏑矢を射たら、賊がひるんだ」

 鏑矢。確か音の出る矢だったか。

「そこで武者たちで突撃して撃退する」

 おお。

「そしてな、想像の通り、まひろたちの向かった先にもやってくる」

「わあ…」

「隆家たちもなんとか間に合い、まひろが攫われそうになったところで双寿丸が助けに入り、周明がまひろの手を取って走り出すんだが、足元が悪くてまひろが転んでしまう。周明が手を出して立ち上がらせたところで、矢が当たる。胸に」

 と、左胸を押さえる。

「え」

「そして、待て次回だ」

「ええー」

 そんな殺生な…

「え、待って。あと2回ですよね?」

「うん、あと2回だな」

「終わるんですか?!」

われもそこは疑問だ」



「さて、京ではまだこのことは知らないのだが、倫子(ともこ)が赤染衛門(あかぞめえもん)に頼んでいた道長のことを書いたものを読んでいた。だが、遥か昔から始まっている」

「遥か昔、ですか?」

 何故に?

「赤染衛門曰く、藤原のことを描くのなら、大化の改新から描きたいくらいらしいが、それでは自分が生きている間に書き上げることはできないので、宇多の帝の代からにしたそうだ。だいたい一三〇年ほど前だそうだ」

「力、入ってますねえ!」

「うん。倫子もその情熱に圧されて、好きにして良いと、結局は返事をする」

 倫子、良い人なんだよねえ。



「そういえば、周明に送ってもらっている最中、まひろは今回の旅のことを語る。道長が出家したことをきいた時のまひろの様子が気になっていたらしく、思い人なのかと問うんだ。それにまひろは、自分に物語を書くことを与えてくれた。物語を多くの人に読んでもらう喜びも与えてくれた。けれど、もう自分では道長の役には立たない。都に居場所はない、と語る」

 そんなふうに考えていたのか。

「周明は、もう書かないのかと問い、書くことはどこででもできる、と言う」

「良い人ですね…」

「まひろの言葉を聞いて、過去の道長とのやりとりを思い出してな。まだ書いていたのかとか、もう役に立たないとか、無神経なことを言ってるんだ」

 梅里様は憤慨したように言う。

「そのたびにまひろは上手く受け流していたように見えていたが、そうではなかったのだな。好きな相手の言葉とはいえ、いや、だからか。さすが、立ち聞きの時の言葉を本人たちに言うだけある」

 ああ、地味でとかなんとかって公任(きんとう)に言われたことを、源氏の物語が話題になってきてから訪ねてきた二人に言い返した件ね。

「まひろは、きっと、自分にできることで役に立ちたいと思っていたのでしょうね」

「うん。おそらくそうなのだろう」

「それを無神経な言葉で、役に立たないと言われた」

 引き留める道長の手を振りほどいてでも離れたいと思うほどに。



「さて、お代わりですね。二切れほどカットしますから、お茶はちょっと待ってくださいね」

「うん? 別に一緒でいいぞ」

「そうですか? じゃあ、リクエストありますか?」

「うーん」

 カット前のシュトーレンをじっと見て。

「合わないかもしれないが、抹茶で」

「あら」

 それは意外なリクエスト。

「今思い出したんだが、まひろが抹茶らしきものを飲んでいたんだ。宋から入ったばかりの品として紹介されていた。慣れると美味いと勧められていたが、飲みにくそうにしていた」

「へえ…」

 お茶が中国から入ってきたのは知っていたけど、抹茶もだったのか。

「じゃあ、薄茶を点てましょうか」

「うん」

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