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大河ドラマと梅里様  作者: 今西薫
46/50

45 敦康亡くなる。賢子宮仕えしたいと言い出し、まひろは旅へ。道長は出家。大宰府には周明が。

ドラマのネタバレをしてますので、お嫌なかたは回れ右を。

私見がかなり入ってますので、それも嫌な方は回れ右を。

第四十五回 はばたき


「今日は、バターカステラです」

「カステラ?」

「うーん? スポンジケーキにヨーグルトとバターとハチミツを多めに混ぜて焼くんで、スポンジケーキですね。カステラというより。レシピを出した人が、バターカステラと言っているので、そう呼んでます」

 なんでも、どっかの有名お菓子の再現レシピ的なものなんだとか。

「ふわふわ、というよりはしっとり、だな」

 フォークでカットして口に入れる。ちなみに、緑茶です。

「ん!」

 梅里ばいり様の目が輝く。あ、すごく好みだったのね。

「美味い!」

「混ぜ加減が丁度よかったみたいで、しぼまなくてよかったです」

 実はしぼんでも美味しいんだけど。

「お代わりもありますよー」

 当然のように言うと、口にほおばったままうんうんと頷いた。



「今回は、まひろが旅に出たんだ」

「………旅、ですか?」

 今日は十一月三十日。あと何回で終わるつもりだ?

「ちなみに、あと三回だ」

 私の疑問が顔に出ていたのか、梅里様が答えてくれる。あと三回…。

「とうとう『源氏の物語』を書き終えたまひろは、物語の中に登場した土地と、宣孝(のぶたか)の赴任した大宰府、それから、さわの亡くなった松浦にも行きたいと言う」

「書き終えたことがきっかけなんですか?」

「さてな。いろいろなことがタイミングがあったのではないかと思うが、まず、賢子(かたこ)が宮仕えしたいと言い出した。これで収入減が出来たというのが一つ。さっきも言った『源氏の物語』の終了が一つ。もしかしたら、道長が、政治の表舞台から去ったこともあったかもしれない。旅に出るということは、彰子(あきこ)の元を離れるということだから、彰子と、道長と倫子に挨拶をする。彰子は寂しいとは言うが、帰ってきて土産話をするようにと送り出す。道長と倫子も了承する。道長は大宰府に行くのなら、使いの船があるから乗って行くがいいとまで言う。が」

 意味深に言葉を切るということは…

「まひろの部屋を訪ねて、行くなと言い出す」

 やっぱり…

「そこでまひろは、これ以上手に入らぬお方の側にいる意味は何なのでしょう、と言う」

「え、まひろの気持ちはやっぱり道長にしっかりあるんだ…」

「あったようだな。道長など、まひろの手を握って、もう会えないのかとまで言う。その手をはがして、会えたとしてもこれで終わりだと、道長を置いて去る」

 望月の歌で思うことがあったのだろうか。

 まひろに向けた歌だったとして、だが、正式な妻ではない関係に。

「そう、この時に、賢子が道長の娘であることを伝えている。やっぱり気づいていなかったようだぞ」

「……やることやっといて…」

 思わず低く呟いてしまう。

「まあ、数えるほどだしな…」

 梅里様は何故か遠い目に。もしかしたら、も思わなかったのかと思うと、私としては身勝手さを感じてしまう。

「だが、賢子が自分の娘ということより、まひろが旅に出ることのほうが道長の中では大きかったようではあるな」

 やっぱり納得いかん。

「最初に道長と倫子に挨拶した直後、倫子が道長のことを書いて欲しいと頼んだことについての返答を求める。それをまひろは断る。自分は、人の心の闇に惹かれる質なので、と。倫子はそれを聞いて了承する」

 道長の良い部分のみを記すことは出来ないと、断ったのか。

「倫子はその後、赤染衛門(あかぞめえもん)に頼む。先にまひろに頼んだことなどおくびにも出さず、あなたに書いて欲しい、と告げる」

「倫子、さすがです」

「うん」

 ひとつ頷いて。

「だが、道長は出家する」

 ………。

「うん、気持ちは分かるぞ」

「誰が見ても、まひろがいなくなったからじゃないですか!」

「倫子が引き留めても、もう決めたのだと言う。建前は、頼通(よりみち)の一人立ちのためだと言う。確かに、政治の場を退いたとしても、口出しできる立場だからな。まあ、それは出家しても変わらんが。気持ちの上では変わってくるのやもしれぬ。あとは体調不良だな。時折痛みなのかなんなのかに襲われ苦痛の表情を出す道長が描かれるが、実は頻繁にあったのやも」

「むー」

「ちなみに倫子は最初に、藤式部がいなくなったからかと問うているが、道長はスルーして答えない」

「実に見苦しいです」

 梅里様は吹き出した。



「さて、一条帝の第一の皇子、敦康(あつやす)は、妻を迎え子が産まれたのだが、二十一歳の若さで他界する」

「せっかく、おだやかに暮らせるようになったのに…」

「本人も、そのように言っていたな。それから、前回の望月の歌だが、斉信(ただのぶ)、公任(きんとう)、行成(ゆきなり)、俊賢(としかた)の四人でどんな意味だったのだろう、と話し合う。やはり、皆、解釈が違うようだ」

「そういうものなんですね…」

 つまるところ、どう解釈したら良いのか分からない歌が、道長の栄華を象徴する歌として後世に語り継がれているということなのか。



「まひろは乙丸をつれて旅に出る。須磨の浜辺を走り、大宰府の町を興味津々の顔で眺めながら歩く。そして、周明(ジョウミン)を見つける」

「え!」

 ここで? あれ?あと三回とか言ってなかったっけ?あれ?

「混乱するだろう」

 何故か胸を張る梅里様。

 ……ああ、それがあったから、あと三回と、言ったんだなと分かった。

「混乱したまま、待て次回、だ」

「なんか、いいように転がされているような気がしてきました」

 源氏物語は無事に書き終わり、あとは紫式部がどう人生を終えるのか、それを観るのだと思っていたのに。道長は史実に残っているだろうが、紫式部のことは詳しくは残っていない。どう畳んでいくのかと、思っていたのは間違いだったということだ。

「うん、実に楽しく転がされている」

 満足そうでなによりです。



「じゃあ、お代わりもってきますね」

「うん!」

 見た目まんまの素直な返事に思わず笑う。

 二切れにしようか、それとも三切れにしようか、そんなことを考えながら、部屋をあとにした。

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