44 頼通摂政に、そして望月の歌
ドラマのネタバレをしてますので、お嫌なかたは回れ右を。
私見がかなり入ってますので、それも嫌な方は回れ右を。
第四十四回 望月の夜
「うん? チョコクッキーか?」
「焼きショコラ、です。溶かしたチョコに粉を加えて、絞り出して低温で焼いたものです。バリバリ食感が美味しいですよ」
ということで、飲み物はコーヒーです。ちょっと濃い目に入れてみました。
「うん、美味いな」
3センチほどにバラ絞りをした焼きショコラを、皿にではなく、保存用の瓶に入れてそのまま提供している。お茶のセッティングとしては手抜きにもほどがあるが、多分、やめられない止まらない系なので良しとした。
梅里様は瓶をかかえてそのままバリバリ食べている。
「ホワイトチョコでも試してみたんですけど、製菓用のものじゃないからか、絞り出せる硬さにならなくて」
「ホワイトチョコも美味そうだな」
目がキラキラですよ…
「またちょっと試してみますね」
実際、諦めきれない部分があるんだよな…
「さて、今回は、『望月の夜』というサブタイトルだ」
「あ、この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも 無しと思へば、でしたっけ」
社会とか国語とか、やたら出てくる道長の和歌だ。
「それを道長が詠んだ。ちなみに、この和歌は道長の手によって書かれた物は残っていなくて、実資の日記にのみ残されていたものだそうだ。だから、『このよ』の部分は夜なのか世界のほうなのかは実際のところは分からないというのが、SNS情報だ。聞いた実資は世界のほうだと思ったようだな」
え、そうなんですか。
娘を入内させて孫を帝にして政治を行って栄華を誇っていたその時のことを詠んだのだと習ったような…。
「この歌は、道長の娘の威子(たけこ)が中宮となり、三条帝の中宮となった姸子(きよこ)は皇太后、そして国母となった彰子(あきこ)が皇太后になったことを祝う宴で、急に歌を読みたくなったと言って歌った歌だ。道長は実資(さねすけ)に返歌を頼むんだが、実資はすばらしい歌なので返歌などできないから皆で唱和しようと言って、出席者皆で唱和する」
これは、実資、逃げたんだな…
「ここでまひろが、あの六条の屋敷での夜を思い出す」
「え」
それは、そうなると解釈が確かに変わる。
「倫子はにこりとほほ笑む。姸子と威子は不機嫌になる。まあ、自分たちを道具として使って得た地位で、望月のまま欠けないとか言われてもな」
つまり本当に、聞いた人によって解釈の異なる歌なんだ…
「そこに至るまでに、まず帝は退位。耳もさらに遠くなり、受け答えも頓珍漢なものになってきた。本人も気づいてはいる。そこで味方を増やそうと、道長を準摂政に据えたり、自分の娘を道長の息子頼通(よりみち)と結婚させようとする。だが、前回あったように、頼通は今の妻一筋だ。どうしてもというなら、二人で遠い国へ行くと言う。道長には耳に痛い話だな」
確かに。
「彰子に話すと、逆に彰子から怒られる。女子を道具のように考えている、心があることを考えているのか、と。そばに控えるまひろに意見を求めれば、道長のように二人の妻を等しく扱う人は少ない、と返答される。道長は押し黙る。まあ、道長の最愛はまひろだからな。等しくと言ってもな…」
うん、説得力はないというか、本人にとっては耳に痛い話なんだろうな…
「彰子は、胸を張って断れば良いと言う。だが、そう簡単な話でもない。仕方なく道長は、頼通に、病になって出仕できないことにしろと言う。こちらから断れる話ではないのだ、と。頼通はそれで納得する。結局、帝は退位し、道長の孫、敦成(あつひら)親王が即位。だが、まだ七つとかそこらだ。政治のことなど分かるはずもない。奏上された言葉に対する返答は道長が考え、帝の耳元で囁く」
なんか、絵的に非常に反感を買いそうな感じがする…
「これに、公任(きんとう)が苦言を呈す。準摂政となって政を行い、陣定にも出席する。欲張り過ぎだと」
「確かに、陣定に出れば道長の意見は蔑ろにされないし、奏上する意見もそのままですもんね」
梅里様は一つうなずく。ついでに、焼きショコラを一つ口に入れる。バリバリと噛んで飲み込んで。
「だが、道長はどちらも辞することにする」
「おお」
「その気持ちをまひろに伝えに行く」
「何故!」
思わず叫んでしまう。
「まあ、偉い人になって世の中を変えてとまひろに言われたことを覚えているからだろうな…」
何故か遠い目をする。
「話を聞いたまひろは、頼通に道長の気持ちは伝わっているのかと訊ねる」
「道長の気持ち?」
なんだっけ?
「民を思いやる心、だそうだ」
あー
「道長も何のことか分からずまひろに問い返す。そこで言われて、どうだろう?とか言い出す。そして、伝えたところで何になろうとか言い出す」
………あーーー
「さらには、まひろの『源氏の物語』も人の一生は虚しいという話だったではないかと言い出す」
遠い目をするはずだ。
「まひろは、すぐに伝わらなくても、時を経ればいずれは伝わると思うと、自分はそれを念じていると言う。道長は話を終わらせるためなのか、おまえだけはそれを念じていてくれ、と言う」
うわ、テキトー
「そこにな、倫子(ともこ)がやってくる」
「え」
「何をしているのかと問われ、道長は政の話だと言って去っていく」
確かに大きな意味で政の話だけど、うーん。
「で、倫子は残るんだ」
ひえええー
「どうも、まひろに頼みごとがあったらしい。道長のことを書いて欲しいと頼むんだな。『枕草子』みたいな感じのものが欲しいと思ったらしい」
「まひろはなんて?」
「即答はしなかったな。考えてみてと言って倫子は去っていく」
「ちなみに、倫子は気づいているんですよね?」
「いるだろうな。政の話だと言ったあと、藤式部には政の話をするのね、とか言ってるからな」
わー
「うん?」
気が付いたら瓶の中身が空になったらしい。さすがに大量に食べたと自覚があるのだろう、空の瓶をじっと見ている。
「まだありますよ?」
ぱっとこちらを見る。
「梅里様は食べる量を気にしなくてもいいのだから、食べたい分だけ食べればいいじゃないですか」
笑いながら言うと、
「いや、でもなあ…」
「作るのは好きなので全然かまいませんよ」
というか、食べてくれる人がいると、作るのに罪悪感がないので助かります。
「そうか?」
「そうです。私は食べる量を気にしないとダメだけど、作りたいケーキを作ってたら、食べなきゃいけないので大変なんです」
「なるほど」
納得したのか、お代わりというように瓶を突き出してきた。
「はい、承知しました」
にっこり笑って受け取ったのだった。




