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あの日凍える霊山で異世界人と出会った僕は………  作者: 青井銀貨
第2章 異世界から大都会東京へ
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25話 ~土門~

 


「あーもう終わってんの?悪りぃな、寝過ごしちゃったよ」


 鎌苅かまがり 土門どもんが頭を掻きながら港区の路地裏に入っていくと、そこには血と武器と色とりどりの男たちが転がっていた。


「あれ?なんかおかしいな。おいあんた、ここで何が起こったのか知ってるか?俺は今日仕事を頼まれてきたんだけどつい寝過ごしちゃってな。たぶん終わってるだろうけど一応行ってみるかと思って来てみたらこんなことになってるんだけど」


 月の光に照らされている背中は立ち上がり振り返り、目が合った瞬間に土門の体には電流が走った。


「これ、あんたがやったの?」


「そうだが?」


「そうだがって、ずいぶん当たり前みたいに言うじゃん。何か普通はごまかしたりとかするんじゃないのかな。というか何その手に持ってるやつ、財布?いくら倒れて動けないからって言っても盗みは良くないよ」


「悪いことだとは思わないな。大都会東京に突然無一文で放り出されたんだからこんなことでもしないとクレープ一つ食えやしない。そもそもこいつらは俺に襲い掛かってきた悪党だ、これくらいのことはされても当たり前だと思うね」


「そうか………金ないのか、それは俺もいっつもだから気持ちは分かるよ、分かるし実は俺もそんなに悪いことだとは思ってないんだよね、正直言うとだよ。さっきは勢いで責める感じで言っちゃったけどさ。だってそいつらがろくでもない奴らなのは俺知ってるし、武器もこれだけ転がっているわけだからさ。金ないってのマジできついよね、でさ、いくら入ってた?集めたら結構な金額になったんじゃないの?」


「お前はこいつらの仲間か?」


「仲間じゃないな。仕事があるから来てくれって言われてきたんだよ、俺は店の用心棒とかを仕事にしてんの。今回は仲間の敵討ちでどうしてもけじめを付けなきゃならないから来てくれって言われてね。それにしちゃあ結構しょぼいんだよ、前金で3万しかくれなかったんだから。ちゃんと来るかどうか信用できないとか言っちゃってさ」


「ならその3万を置いてとっとと失せろ。そうすれば見逃してやってもいい」


「はっ!」


 土門は嬉しそうに笑った。


「言うね言うね良いよ君!」


 自分の太ももをバシバシ叩きながら喜んでいる。


「3万でしょ?そんなの昨日のうちにユニコーンで全部溶かしたよ。前日全然出てなかったからいけるかと思ったんだけどさ単発単発で勝負にならなかったよ。脳汁も全然でないしほんっと最近の台はひどいよな、昔は出すときはしっかり出してくれたもんだけどね。あれじゃあ誰もやらなくなるのは当然だよ」


「随分よくしゃべるやつだな」


「あーそれね、よく言われるよ。けど俺は口を閉じてることは出来ない性分なんだな、葬式の時だって体がうずうずしちゃって我慢できないんだよね。喋っちゃいけないと思ったら余計に喋りたくなっちゃってもう大変よ。ところであんた強いね、俺とも戦ってくんない?」


 笑顔と困り顔が混ざったような表情。


「金を持っていないなら俺にとっては無意味だな」


「なんだよ金のためにやってるのかよ、ちょっと残念だな。まあ確かに俺は金ないよ。けどねぇ俺はあんたと闘いたいんだよ、ちょっとだけでいいからさ、協力してくれないかな、助けると思ってさ」


「なぜ闘うことが助けることになるんだ?」


「お!話を聞いてくれるってことは少しは前向きに考えてくれてるってことだね。いやさ、俺はもうここ最近ずっと、というか大人になってからはさ、本気で戦ったことが無いんだよ、喧嘩自体は何回もあるけどこっちが本気出すと相手がぶっ壊れちまってかわいそうだからさ、ずっと手加減ばっかしてんの。どう?めちゃくちゃ可哀そうでしょ?それがさっきあんたを一目見た瞬間に体がビリビリビリビリって痺れたんだよ、こいつは強いぞって感じたんだよ」


「うーむ」


 手の平で顎を擦りながら考える。


「おっ!やっぱりあんた俺の気持ちが分かってくれるんだね、普通の人にこんなこと言っても意味わからないとか気持ち悪いとか言われるだけで相手してくれないんだよね。やっぱりわかってくれる人っているんだよね、良かったよ話してみて」


「まあ分かると言えばわかるか………」


「やっぱり!それがさぁもうストレスでストレスでしょうがないんだよ。子供のころは楽しかったなぁ、いつも大人が相手してくれてさ、ボコボコにされるときもあったけどそれでもあの緊張感はたまらなかったな。生きるか死ぬかって感じがしてさ、それなのに俺が成長したらみんなもう逃げちゃうんだよね。もう全然あの時の興奮なんか感じられないのよ。だからさ、お願いだから俺と喧嘩しようよ。金は無いけどさ。あんただって戦うのは嫌いじゃないんだろう?」


「俺は別に戦うことが好きなわけじゃない」


「本当?絶対同類だと思ったんだけどな。戦ってる時がさ生きてるって感じがしてその日の夜なんか寝付けないんだよ目を閉じるとすぐにその時の光景が浮かんできちゃってさ。こうしておけばよかった、ああ、こうされたらヤバかったな、とか。それで気が付いたら朝になってんのまたあの感覚を味わいたいんだ、頼むよ、な、この通り」


 拝むポーズを見せる。


「けどまあ少しだけなら気持ちは分かる。話してみた感じなかなか面白い奴だから少しくらいならお前のストレス発散に付き合ってやってもいい。一方的に俺がお前のことを殴るだけで終わるけどそれでもいいなら」


「えっ本当!?いいよ良いよそれくらい全然いい。ああそうだ、俺の名前は鎌苅かまがり 土門どもんっていうんだ。土門って呼んでよ、お前って言われるのあんまり好きじゃないんだ」


 口角が目の端にかかるほど笑う。


「俺の名は鳴守なるかみ 倫理りんりだ」


「へぇ、鳴守なるかみ 倫理りんりさんね、覚えたよ。なんか格好いい名前だね」


「そりゃどうも。張り切ってるところ悪いけど正直言って俺は休みたいと思っていた所なんだ。だから少しだけでよければ遊んであげるよ」


「少しだけね、分かった約束する。そっちが止めたくなったら言って、ちゃんとやめるからさ。いやマジでありがたいよ。けどもしかしたら俺が勝つっていうこともあると思うからそこだけはちゃんとわかっておいてよ、怪我しすぎたらちゃんと救急車は呼んであげるし俺はあんたから金は取らないから安心しいいよ。それに俺はこいつらと違って武器なんか使わないからさ、男同士の力比べと行こうじゃないの」


 土門は上半身の黒いTシャツを脱ぎ捨てて自分の体をバシバシ叩く。


「ほら見てよ、武器なんかどこにも隠してないからね」


「全く心配してないよ、そんな奴には見えない」


「いやー俺のこと分かってくれていて嬉しいな。それにしてもいい日だな、久々に本気で戦えそうな人がいるんだもん。どうせつまらない仕事だろうなと思ってたんだけど、いやーあいつらの話に乗っておいてよかったよ、寝坊したけど来てみてよかったよ、まさかこんなことが起きるなんて思ってもみなかった。人生ってやっぱ何が起きるか分からないね」


 分厚く引き締まったレスラーか相撲取りのような体。


「どこからでもかかってきたらいい」


 顔の前に突き出した倫理の指が土門を誘う。


「ぶっし!」


 烏が鳴く夕暮れのアスファルトを蹴り上げて重量級の体が突進した。




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