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あの日凍える霊山で異世界人と出会った僕は………  作者: 青井銀貨
第1章 少年と異世界犯罪者の出会い 
11/35

11話


鳴守なるかみ 倫理りんりとユウキを待たせている部屋の隣の部屋でふたりの男が向き合っている。


「どうしたんですかケビン隊長、あまりにも対応が丁寧すぎやしないですか?いつもならあんな怪しい奴は時間がもったいないとか言ってとっとと追い返してるっていうのに」


部下のライトが眉間にしわを寄せながら一気に話し始めた。


「それには理由があるんだよ」


「なんですかその理由って。まさか隊長のスキル「危険予知」に関係あるんじゃないでしょうね?」


「お!?」


ケビンは心底驚いた顔をした。


「ライトなんだお前、気付いていたのか」


「やっぱりそうなんですね!いくら俺だってそれくらいは分かりますよ」


「予想外だ、今年一番の予想外だ」


「なんですかそれ?」


「いや、お前は釣りと女のことしか考えてないやつだと思っていた」


「なんですかそれは。めちゃくちゃ俺のこと馬鹿にしてるじゃないですか。確かに釣りと女は好きですけどほかにも色々と考えてますよ。それにあんなの誰だってわかりますよ、あの時の隊長は言葉こそ丁寧でしたけど雰囲気は戦ってる時の隊長でしたから」


「そうか、お前も成長したな。ちゃんと空気を読めるようになってるじゃないか」


「なんですかそれ、なんか急に褒められると恥ずかしいんですけど」


顔を赤くしながら頬を掻く。


「ライト、あの男には気を付けたほうがいい」


ケビンの顔が引き締まる。


「やっぱり相当ヤバいですよね。俺もなんかビリビリするんですよ、体が縮こまるっていうか」


「お前も知っての通り俺のスキルは「危険予知」ではあいつは相当危険な奴だと言っている。俺たちが二人がかりで戦っても絶対勝てない相手だ」


「やっぱりそうなんですね。隊長の「危険予知」はやっぱりめちゃくちゃ頼りになりますね」


「そんなことないさ、危険を知らせるだけの外れスキルだ」


「全然ハズレじゃないですよ。スキルを持ってるだけで凄いことなんですし、そのおかげで兵士なんて言う危険な仕事で大きなけがもなくやってこれてるじゃないですか」


「まあ確かに何度も命を救われてきたけどな………」


「それじゃああいつには早くどっかに言って欲しいですね」


「そうなんだよな、それなのに自分は落とし子だなんて言い出すし」


「あれマジでビビりましたよ、本物の落とし子なんているんですか?」


「俺はいまのところ本物だと思っている」


「マジっすか。だって落とし子って偽物がわんさかいるじゃないですか、それで相手をビビらせようとするやつらが良く使う手ですよ。それとかただ自分で自分を落とし子だと思い込んでいるやつとか」


「確かにな。しかし雰囲気が異様だ、今まで色々な人間を見てきたが、あんなにヤバそうな男は初めて見る。もし偽物だとしても用心は必要だ」


「だから隊長はあんなに丁寧に対応していたんですね」


「そうだ。それにあいつには危うさを感じる」


「危うさ?」


「そうだ、俺はこの仕事をしてきて頭がいかれているとしか思えない犯罪者を山ほど見てきているが、あいつはそういう奴らと同じような目をしている。今は大人しくしているが感情が爆発した時にはとんでもないことをやらかす人間の目だ」


「それで怒らせないように………」


「そうだ、お前も言葉には十分に気を付けろ。普通の人間だとは思わずに言葉が通じる魔物とでも思っておいたほうがいい。急に襲い掛かって来ることも頭に入れておけ」


「まじで怖いじゃないですか」


「五体満足でこの仕事をしていきたいなら危険を見極めることが何より大切だ」


「久しぶりに聞きましたよ、隊長のその言葉」


ライトは少し笑った。


「なんとかあいつには自分が落とし子だっていうことは黙っていてもらわないとな。もしそんなことが大っぴらになれば俺たちにはさらに山のような仕事がのしかかって来るぞ」


「マジっすか!」


驚くライトに自分の考えを説明する。


「貴族からの呼び出し?そんなことになったら仕事なんかできませんよ、うちらは隊長でもってるみたいなもんですから」


「そんなことはない、もしそうなったとしてもお前たちなら十分にやれるさ」


言いながらもケビンの鼻の穴は膨れている。


「うわぁ、嫌なこと聞いちゃったな。なんか今から憂鬱になってきましたよ。断るなんてできないですよね?」


「もちろん不可能だ。向こうはこっちの事情なんて考えもしないからな」


「さすがはお貴族様ですねぇ………」


「それより冒険者ギルドの奴ら遅いな、連絡はとっくにしてるっていうのに何をしているんだ?」


「ほらあれですよ、今はギルド長が呼び出しをくらってて」


「そうだった、ということはあの………」


「そうです、副ギルド長です。マジで最悪ですよね、こんな緊急事態に限って」


「そうだな、それにしても薬師の方も遅いな。ユウキが持ち帰ってきた花が街の中に持ち込んでも大丈夫なものなのか確認してもらわなきゃならないっていうのに」


「けどあれが本当に月聖花なんですかね、なんか俺のイメージでは真っ白で神々しいのが月聖花だと思ってたんですけど、めちゃくちゃ毒々しい色してたじゃないですか、真っ赤で白い斑点が付いたやつ。何か毒茸みたいでしたよ、やたらでかいし」


「けどユウキがリョウゼンフガクから持ち帰ってきたものだからな。あいつはそんな嘘をつくやつではないからあれが本物の月聖花なんじゃないのか」


「確かに嘘なんかつきそうにないですよね、そんなにガッツリかかわったことは無いですけど素直でいい奴な感じですもんね」


「偽物だろうと本物だろうと俺としては早くあの男に立ち去ってもらいたいよ、居座られてるだけでも仕事が進まなくて迷惑だっていうのに」


「そうですね………今日も残業ですか?」


「俺だってやりたくないがしょうがない。書類仕事が山ほど溜まってるんだからな」


「ほんっとなんであんなに書類が必要なんですかね、まいりますよ。まぁ俺なんか隊長に比べれば随分とマシですけど」


「同感だがしょうがない、上の奴らは書類が大好きだからな」


「人員って募集してるんですよね?やめてく数は多いですけど入って来る人数が少なくないですか?」


「もちろん募集はしてるがなにせ薄給だからな」


「そうですよね、金のことだけ考えたら仕事なんか他にいくらでもありますもんね」


ライトがため息をつくと同時にドアが勢いよく開いた。


「隊長!大変です今すぐ来てください」


新人兵士のラムシャブが慌てた顔をして入ってきて、これは何か面倒なことが起きるとケビンは確信した。



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