第12話
「ゴブリンの大量駆除依頼がきてるぅ?」
ヴァシリッサの声がゆるく響いた。
ニーカは、はいと頷くと、手に持った数枚の通達書と報告書のまとめを差し出してきた。
「ほかのギルドにも出回ってるみたいで……この時期にめずらしいですね」
受け取ったヴァシリッサは面倒くさそうに眉間に皺を寄せると、ため息混じりに呟いた。
「なぁに……まぁた大量繁殖したかぁ〜?」
「報告書によるとその兆しはなかったみたいで、……どうも、生息地に別の魔物が住み着いたか何かで、住処を追われた群れ同士が小競り合いをしてこっちにまで流れてきたっぽくて」
ニーカが渋面で答える。ヴァシリッサの表情はそれを聞いてもあまり変化せず、あぁ……と、漏らして、すでに中身にざっと目を通しているようだった。
「……人手がぜんぜん足らなぁい、気がするぅーこれ、うちで捌ける分、キャパオーバーしてるよぉ」
ニーカが気まずげに、ヴァシリッサの半ば愚痴のような呟きを拾った。
「この時期はもう、猟期に重なってるとこもあるので、たぶん、そっちで手が回らないっぽくて……」
ヴァシリッサはさらに訝しげに、ニーカを見た。
「猟期も例年よりはやぁいじゃん〜」
めずらしい、露骨に不機嫌そうな様子のヴァシリッサに、すこし気後れする。
「……それは、そうですが」
「ニーカちゃんに当たってるわけじゃないからさぁ……。でも、無理だよ、これ無理。うち、ただでさえ、その日暮らしの冒険者やってて、複数の依頼をこなさないと生活が回らなくなる無計画なやつばっかなんだから、……どうせ他所では誰も受けないような小銭稼ぎの雑用処理してやってるのに、ここまで負担かけられるのとかぁ……舐められ過ぎでしょさすがに、もぉー」
ヴァシリッサは長い前髪をうっとおしげに弄ぶと、とりあえず、人間できるだけ集めようかぁと、言った。
「え、受けるんですか?」
「断れないじゃぁん、こんなん、……ギルド組合と王都のお偉いさんたちが決めたことなんだもぉん……はぁ、いちおークレーム入れるけどぉ……わたし、組合ってところとは、とことん相性が悪いからなぁ……」
眠たそうに目を擦ると、ヴァシリッサはニーカに向き直った。
「今日、ひさしぶりにお風呂入ろうかと思ってたのにぃ〜……」
「いや、それは入ってください」




