3話 出会いのきっかけ 2
「お待たせしました。注文の品です」
アリーシャはカウンターの上に完成したタキシードを置く。
その出来映えに驚いたのかガストンは目を丸くしていた。
「素晴らしい出来だな。貴方はデザイナーの才能がある」
「ありがとうございます」
「‥‥‥」
今度はしきりにこちらを見つめてくる。
「あ、あの。まだ何か?」
「すまない。あまりにも貴方が美しかったので見惚れてしまった」
「えっ」
意外にもそんな台詞を言われたのはこれが初めてかもしれない。
「あ、ありがとうございます」
少し変わった人だな、と頬を赤くしてアリーシャは照れながら礼を言う。
そしてこの出会いがきっかけで二人のお付き合いが始まる。
この頃は互いに初々しさもあってか目を合わせるだけで精一杯だった。
「アリーシャ、これを受け取ってくれ」
手渡されたのは小さな箱、そっと中身を開けると綺麗な指輪が入っていた。
「ガストン‥‥これって‥‥」
「婚約指輪だ」
真剣な表情で彼は答えて言葉を続ける。
「私の伴侶になってほしい」
嬉しさのあまり今に泣きそうになる。
「私で良ければ‥‥‥ぜひ」
アリーシャはガストンの手をとり誓う。
生涯ずっと彼を愛し続けよう、と。
しかし世の中そう簡単には上手くいかなかった。
いったいどこで道を間違えてしまったのか。
順風満帆だった日常が儚く消え去り、すっかり恋心も冷めた。
「お客さん、着きましたよ」
いつの間にかうたた寝をしていたようだ。
御者の声で目が覚め急いで馬車から降りる。
「これはもう、要らないわね」
アリーシャは薬指にはめていた婚約指輪をためらうことなくはずした。




