↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
爆発系発明令嬢、アフロで王子に求婚される  作者: あざみへび
二章 王太子妃と研究者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/40

2-6 頑張れ、お父様

 ベルティエ家の朝。

 我が家の朝食は、家族揃って取る決まりだ。

 伯爵家と言っても新興の我が家は、ダイニングテーブルも小さい。朝食はお父様とお母様が向かい合い、その横に私と弟、妹が並ぶ。


 その朝食の席で、お父様が口を開いた。


「昨日、陛下から呼び出しがあった」


 私とお母様の手が止まる。

 まだ幼い弟と妹は気にしない。いや、大きい弟のほうは不穏な空気を感じ取ったか。


「お父様、それは結構重大な話だったのでは?」

「非公式の呼び出しだ。だが、そうだな、重大な話だった。来月のことになるが、王領水運整備局長に内定した」


 おや、婚約の話ではない?


「ベルティエ家に箔をつけてから、王太子殿下とオリヴィアの正式な婚約をさせたい意向らしい」


 なんと迂遠な。

 まあ、話は進んでいるのだな。

 それに何だか重要そうな話ではないか? よくわからないけど、たぶん大きな話だ。

 すると、おそらく意味がわかっているお母様が破顔した。


「おめでとうございます。出世ですね。しかも、局長ですか」

「ああ、これで私も宮廷上層部の仲間入りというわけだ。それもこれも、オリヴィアのお陰だな」

「ごめん、お父様。私はあんまりよくわかってないんだけど……」


 どうやら出世らしいが、宮廷上層部とは?

 そんな私を見て、お父様が優しく教えてくれる。


「いままで私は実務職にばかり就いていたが、今度就くのは局長。つまり、王国の主要組織の長ということになる」

「えっと……、凄いことなの?」

「そうだな。数字に追われたり、調整に走り回ったりする官吏から、サロンやパーティーでの根回しに勤しむ貴族の仲間入りした、と言えば伝わるかな?」


 えー、結構な出世じゃない?

 箔を付けさせる、って言っても相当に大きな話だ。


「なんか、ごめん。お父様にとっては苦手な仕事になる?」

「まあ、社交は得意ではないが、苦手という程でもないよ」


 静かに微笑むお父様。

 父は嬉しい時は静かになる人なので、きっと喜んでくれている。

 そんな穏やかな父の様子に、つい私も嬉しくなる。


「ただ、小さくとも局の長になってしまうからな。小さくともサロンを主催しないといけないかもしれない。そこは、頼りにしてるよ」


 と、お母様は満面の笑みで応じる。


「任せて! 華やかなサロンにしてあげるわ!」

「水運整備局だからな。あまり華やかな人は少ないかも知れないか……」


 おお、サロンの話になってる。

 なんとタイムリーな話だろう。




◇◇◇◇◇




「ねえ、お父様」

「なんだい、オリヴィア?」

「そのサロンって、どんな感じ? 主催ってことは、我が家(ウチ)で開くの?」

「どうしたんだい? オリヴィアも社交に興味がでてきたのかな?」

「実は、私も東宮のサロンに呼ばれることになって。というより、主催者側(ホスト役)をして欲しいって」

「ほう……」


 お父様が驚く。お父様のこういう顔は珍しい。

 その隣でお母様が目を輝かせる。いや、お母様が東宮に行くことはないと思うよ。


「それは大変だなあ」

「だから、私も不安になっていて……。だけど、サロンってどういうところか、あんまり良くわかってなくて」

「そうだね。オリヴィアは研究一筋だったから」


 穏やかな朝食を終えると、幼い弟と妹は侍女たちに連れられ退席。

 お父様とお母様、私で紅茶を楽しむ。


 そこで、お父様がサロンについて教えてくれた。


「まず、サロンというのは特に決まりはない。かなり自由なものだ。グランフェルドの文化なんて持て囃す向きもあるが、やっていることとしては、皆で集まってお茶をしているだけだ」


 そのくらいは私も知っている。


「ただ、やはり人が集まれば、何某か偏りが出てくる。そのサロン、そのサロンで個性が出てくる」


 お父様は静かに教えてくれるが、ちょっと嬉しそうだ。


「例えば、私とマルグリットが行っているレスター子爵夫人のサロンなんかは、セント・ルディアの法服貴族の集まりだ。これが派閥みたいなものになる」

「派閥ぅ……。貴族っぽい」

「そんなに構えるものじゃない。楽しくやってるんだから」


 と、お母様が目を輝かせる。


「そうよ、サロンはとても楽しいのよ。今日も歌うんだから!」

「歌うの?」

「そう。歌うの、皆で!」

「皆で!? それより、何より、そもそも朝からお母様のその頭は何?」


 そう。

 朝からずっと気になっていた。

 お母様の頭には、朝っぱらからボリューム満点の白いアフロのウィッグが。私も未だ金髪アフロなので、我が家の食卓には大きな毛玉が二つ揺れていた。

 今日はレスター子爵夫人のサロンに行く日だったはずだけど、それで行くの?


「サロンで流行らせてるから!」

「流行らせてる!? お母様の他にもアフロがいるの!?」

「もちろん!!」


 お父様の困ったような笑顔。

 しかも、白と変化球のアフロ。もはや、レスター子爵夫人のサロンはどうなっていることやら。


「ただ、お茶してるだけでは詰まらないから、マルグリットのような華やかな女性は歓迎されるよ」

「まあ、そうかも知れないけど……」


 昔からお父様はお母様にべた惚れだからな。思うところがあっても止めはしないか。


「それにね。いまはアフロに合わせた南方風のファッションに、さらには南方の音楽に詳しい音楽家の先生を呼んで、皆で合唱してるの。楽しいわよ!」


 なんだかエラいことになってるな。

 私のイメージしていたサロンとは、どうも様相が違う。


「と、まあ、サロンというのは自由なものなんだよ」

「そうみたいですね」

「逆に真面目なサロンもある。宰相閣下のサロンなんかは、政策に詳しい人ばかりでね。学者なんかも呼んで、難しい政治議論に花を咲かせてると聞く」

「うへぇ」

「あと有名なのは、王太后様のサロンだろうな。王宮の奥で、詩歌や絵画を愛でながら、優雅なティーパーティーを開いていると聞くね」


 それ!

 私がイメージしていたサロンはそれだわ。

 でも、王太后様かあ。王子のお祖母様? いずれ私も会うのだろうか。


「うーん、王太子府のサロンはどんな雰囲気なんだろう?」

「どうだろうね。王太子殿下と仲の良い人が集まっているのは間違いないだろうし、若い人が多いだろうな」


 うーん、不安だ。




◇◇◇◇◇




 朝食を終えて、しばらく後。

 我が家のエントランスには三組の夫妻が訪ねてきた。レスター子爵夫人のサロンに一緒に向かうらしい。


「やだー、マルグリット夫人、白いアフロ!」

「さすがだわ! そんな色使いを思いつくなんて!」


 きゃっきゃ、している夫人たち。

 ソフィール伯爵夫人とデルシ男爵夫人、クジャック男爵夫人。以前からお母様と仲のよい夫人たちだ。

 それが揃いの金髪アフロでやってきたのだ。アフロが4人もいると、なかなか迫力がある。いや、私も含めれば5人だ。


 そんな彼女たちは私を見ると、するすると寄ってきた。


「あら、オリヴィアちゃん、久しぶり! 王太子殿下とのご婚約おめでとう!」

「ソフィール夫人、オリヴィアちゃんって。王太子妃になられる方ですから……」

「あら、そうね。でも、こんな小さな頃から知ってるから。水晶宮での晴れ姿、見てたわ。素敵だったわよ!」


 そう言って、きゃーきゃーと私の手を取って喜んでくれた。あの水晶宮での出来事は色んな人に見られていて、最近はこういうことが多い。

 この三夫人には子供の頃から可愛がってもらっているので、私としても嬉しいのだが、全然知らない人からも声をかけられることが増えた。


「では、そろそろ行きますわよ!」


 と、アフロ軍団のボス、マルグリット夫人ことお母様が宣う。


「ええ、参りましょう。参りましょう」

「楽しみですわ!」


 そんなアフロの女性たちを、お父様を始めとした旦那様たちが不安そうに眺めてた。


 頑張れ、お父様。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。