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94.肖像画

「好みのタイプの女だったんだろ!?」

「こらっ、オスカー!リアちゃんがいる前で……え?セオル、ほんとに?」

「なっ……リアがいながらほかの女に懸想するなど」

「いや、懸想してないですから」


 お父様の難癖に、セオルが即座に否定の言葉をあげる。

 でも、本当に?

 好みだってところは、否定していなかった。

 胸の奥がざわつくような、嫌な感覚がする。

 そのとき、パチパチッと何かが弾けるような音とともに、セオルが小さく悲鳴をあげた。


「いてっ!……あいたた……」


 また静電気だろうか?

 今度はラナの悪口を言ったわけではないのに……もしかして、私がもやもやしたから?


「だからその、好みとかそういうことじゃなくて、ただ、なんていうか」

「なんていうか?」

「どことなく……リリーに似てた」

『えっ』

「白黒だったから髪色はわかんなかったけど、顔立ちとか、雰囲気とか」


 ちょっと待ってて、と言って、セオルが自分の机へと向かう。

 そして鍵付きの引き出しの中から、ペンダントを取り出した。


「持ってたんなら最初から見せろよ」


 オスカーが突っ込んだけど、セオルはスルーして私にペンダントを見せる。

 金に花の細工が施されたそれは、男性が持つには可愛らしいデザインだ。

 装飾されている花は何だろう?

 きれいだけれど、見たことのない花だ。


 開かれたペンダントの中には、穏やかに微笑む女性の横顔が描かれていた。

 確かに白黒で、ラフスケッチのように見える。

 それでもはっきりとわかった。

 ここに描かれているのは、ラナだ。

 私が見たのは泣き顔だったけれど、はっきりと確信した。

 あの人……こんな優しい顔で笑うんだな。

 絶望に顔を歪めていたラナを思い出して、喉の奥が引き攣れるような感覚がした。


『ラナは……聖女ではなかったのね』

「まぁ、聖女の姿絵とはまったくの別人だしね。でもクレイオスの遺品に肖像画が残っているってことは、聖女と同じ時代に生きていたってことじゃないかな。そして多分、聖女に近い場所にいた」

『聖女との関連が深かったから、あの指輪を通してラナとつながったってこと?』


 ずいぶん遠回りじゃないだろうか。

 それじゃあ、私にかけられた呪いとラナはまったく関連がなかったってこと?


『考えれば考えるほどよくわかんない~~』

「そうだね。父上に肖像画の女性について調べてもらってるけど、情報が全然ないみたい」

『詰んでる?』

「そうでもないよ。指輪を調べてみたんだけど、聖なる魔力が詰め込まれてることがわかった」

『詰め込まれ……え、聖なる魔力?』

「うん。聖女や聖職者が使う特別な魔力……神聖力と言ったりもするアレだね。それがパンッパンに詰まってた。よくここまで詰め込んだなってくらい。この紫の石、小ぶりだけどすごく質のいい魔石でね、たくさんの魔力を詰められるんだけど、容量いっぱいまで魔力が満ちている。普通の人間……いや、魔力の多い人間でも、一生をかけて詰められるかどうかって量だよ」


 とにかくすごくいっぱい神聖力が詰まっているってことだけはわかった。

 それはつまり、指輪は伯爵家の記録にある通り、聖女から下賜されたものだと証明されたことになるだろう。

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