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88.癒しと浄化

 再び肉体から抜け出して、セオルの部屋に戻る。

 検証結果を報告すると、驚くでもなく頷かれた。


「多分気のせいじゃないと思うよ」

『回復量?』

「うん。でも生身と精神体の違いなのか、魔力量増加による変化なのかはわかんないけど。リリー、寝てるとき発光してたし」

『は?発光?』


 なにそれ、初耳なんだけど。

 なんでそういうこと、起きてすぐに教えてくれないんだコイツは。


『え?まぶしかった?寝れなかったんじゃない?』

「ううん。あわーく光ってただけだから、全然。寝れなかったのはリリーの寝顔が天使すぎて瞬きすら惜しかっただけだし」

『は?』

「あ、やば」

『一晩中起きてたってこと?』


 無言の肯定。

 いや、ちゃんと寝ろよ。

 何してんだ。


『今から少しくらい寝る?出勤まで時間あるでしょ』

「ううん。大丈夫」

『いや、寝不足じゃ……』

「うーん。でも全然疲れてない」

『嘘は』

「嘘じゃない。多分さ、あの発光にも癒しの効果があると思うんだよね」


 多分。

 もう一度そう言いながらも、セオルはほぼ確信しているように見えた。


「リリーとくっついて寝てたら、すっごい疲れが取れた。愛しのリリーと同衾できたことによる幸福感が理由だと思ったんだけど」

『どっ、同衾って……誤解を招きかねないからやめろ』

「はいはい。でもさ、さすがに効果が高すぎる気がして、軽く調べてみたんだけど」


 ちらりとセオルがスクロールに目を向ける。


「回復魔法をかけられたときと同じ魔力反応が確認できた」

『なにそれ、私が寝ると回復スポットになるってこと?』

「簡単に言うとそうだね。これが生身の状態でも発動するのか、近いうちに確認しておきたいな。ちなみに監視魔法で確認したけど、精神体のリリーが発光しているあいだ、生身のリリーは光ってなかったよ」


 監視魔法。

 そういえば、そんなものが仕掛けられているんだった。

 改めて実感すると気分が悪いが、今の問題点はそこではない。


『そうなると、やっぱりラナは聖女だったのかな。聖女なら癒しの力を持ってそうだし、混ざったから私にも……?でも姿絵と全然似てなかったし、よくわからないわね』

「聖女が癒しの力を持っているとは限らないしね。先代聖女は癒しよりも、浄化の力が強かったみたいだし」

『浄化?』

「うん。瘴気や魔物を消滅させる力。どっちかというと攻撃魔法だよね」


 浄化を攻撃と言っていいのかは謎だけど、先代の聖女様の功績と言えば、国内で噴出した瘴気およびそれにより集団発生した魔物の浄化が主だ。

 知られていないだけで治癒魔法の使い手だったのかもしれないけれど、真偽のほどはわからない。

 聖女についてもう少し詳しく調べてみたらわかるのだろうか?


『じゃあ、浄化の力も使えるかも?』

「試してみる価値はあるかもね。魔法省で検証してみよっか」

『行っていいの?』

「本当は数日様子を見たかったけど、状況が変わったからね。俺はこのあと子爵たちに報告に行くけど、リリーもいっしょに来てくれる?」

『わかった』

「でも一つ約束。子爵たちには絶対に触れないこと。そもそも触れられるかどうかも不明だけど、魔力を持たない無機物――枕なんかも触れたから、魔力量の少ない人間と接触できる可能性は十分にあると思う。ただ昨日の静電気みたいに、何らかの反応が起こる可能性もあるから」


 私は無言で頷いた。

 寂しいけれど、避けられるリスクはできるかぎり回避するべきだ。

 私の甘えで、家族を危険に晒すつもりはない。


「俺にはいくら触れてくれても構わないからね」


 さらりと私の髪を撫でて、セオルが言う。

 指先の感触がくすぐったくて、私は『はいはい』と笑った。

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