71.違和感
コツン。
『ん?』
何か変な感触……が……?
違和感を覚えて、思わず固まる。
「ほら、よく似合う」
満足げにセオルが笑った。
でもそれどころじゃない私は、継続する違和感に口をぽかんと開いたまま、困惑の声を漏らす。
『え?ええ?』
「リリー?どうしたの?」
「っは?!?」
「あなた、うるさいですよ」
セオルが首を傾げて、なぜか伯爵が大きな声を出して、お義母さまが咎める。
伯爵夫妻のやりとりが気にならないわけではないけど、今はこっちだ。
恐る恐る指を動かすと、金属のこすれる感覚が確かにある。
『ひぇっ』
思わず腕を引き、指輪の触れていた部分を指先でこする。
「リリー?」
『なんか、それ、変』
「これ?」
『それ、あの、えっと、あ、変っていうか……ごめん、大事なものを』
「そういうのは気にしなくていいから。大丈夫?変な感じがしたの?気分悪くない?」
『だ、大丈夫。びっくりしただけ』
「びっくり?」
セオルは指輪を掲げて観察しながら「静電気かな」と呟いた。
『静電気?』
「うん。魔力の性質によっては、まれに生じることがあるらしいよ。本当に珍しい話だけど、今のリリーならありえるかなって」
『いや』
「痛かった?ごめんね、俺が」
『違くて』
「違うの?」
『さ』
「さ?」
『さわれた』
ぽつりと呟くと、セオルが「え」と目を丸くした。
正確に伝わったか不安になって、もう一度『さわれたの』と訴えた。
『コツッてなった。手を動かしたら、こすれる感じがした』
「え?え?……じゃあ、試しにもう一度触ってみて」
『う、うん』
「痛かったわけじゃないよね?」
『うん』
「でも何かあったら危ないから、指先で少し触れるだけにして」
『う、うん』
セオルの言葉にうなずきながら、恐る恐る手を伸ばす。
軽く伸ばした人差し指でそっと触れると、やっぱり感触がある。
「ええええええ!?!」
『わっ』
伯爵がまた大きな声を出すから、びっくりして指輪から手を放す。
「だからあなたうるさいですって」
「父上、ちょっと黙っててもらえます?」
妻と息子に同時に責められた伯爵は「いや、だって」とか「なんで」とかよくわからないことをぶつぶつと呟いている。
さっきから伯爵はどうしたんだろう?
不思議に思いながら、また指輪に触れてみる。
久しぶりに感じる硬い感触に、戸惑いなのか喜びなのかよくわからない感情が渦巻いている。
誰かが息を呑む音が聞こえた気がして、指輪に触れたまま顔を上げた。
セオルの肩越しに強い視線を感じ、視線の主に目を向ける。
てっきりその先にはお義母さまがいるものだと思ったのだけれど、目が合ったのは伯爵だった。
ん?視線は気のせいだったのかな?
そう思って首を傾げると、伯爵も同じ向きに首を傾げた。
依然として視線はぶつかったまま、伯爵は驚愕の表情を浮かべている。
『え?え??も、もしかして視えてますか?』
とっさに問いかけると、こくりとうなずかれた。
「は?本当に?」
「嘘でしょう?短時間で魔力が上がるはずはないし……条件に相違があったのかしら。それともあなた、何かしました?」
セオルとお義母様が口々に問いかけると、伯爵は茫然としたまま「とりあえず」と呟いた。
『と、とりあえず……??』
「お義父さまと呼んでくれないか……?」
え、今?
この状況で第一に出てくるのがそれ?




