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「快勝っすね」
「主にリンクスの手柄だけどね?」
「上手く敵の居場所を見つけれただけだ」
「謙遜なさ……む」
どうも念話で会話しているようだ。
「どうした?」
「どうも、苦戦している組がいるようです。そう遠くはないので救援に行った方がよいでしょう」
リンクスたちが慌てて駆けつけると、奇妙な魔物がいた。巨体ではあるが顔がそこかしこに張り付けられた蛙、としか形容しようがない魔物だった。
「何すかあれ?」
「見たことがありませんな」
「知らないわねえ」
「同じく」
つまり完全に初見の魔物だ。もっとも冒険者の死亡率が高いのは初見の魔物と戦う時だ。慎重に慎重を期した方がよい。
「一旦引きましょうぞ! 合流して全員で戦った方がよい!」
「了解した! 逃げるぞてめえら!」
戦っていたパーティーも同じ判断だったらしい。見た所それほど手傷は負っていない。
「別に強かねえ。ただこっちの攻撃が効いてるのかよくわからねえ。矢とか魔法が弾かれる見てえだ」
ミクトが無言で矢を放つが確かに黒い影のような壁が瞬いたかと思うと、矢が力なく地面に落ちた。
「駄目っすね」
「ミクト殿、もう少し慎重に」
「さーせん」
全員で逃げ回るがたいして足は速くないらしく、楽に他のパーティとも合流できた。総勢二十人近い数だ。
「戦力はそろったな」
この部隊のまとめ役になっている冒険者がまとめ役として話を進めるつもりのようだ。
「飛び道具が効かないみたいだけど、誰か何か作戦はあるか?」
飛び道具が無理なら近づいて斬りかかるのが手っ取り早いが、あの巨体に真正面から突っ込むのは危険性が高い。
「……作戦はある」
全員が一斉にリンクスを見る。
「どんな作戦だ?」
リンクスが提案した策は、乱暴だが確実ではある。全員がその策の実行に賛成した。
のっそりと巨体が動き回る。
「おら! こっちだ!」
各々が飛び道具で注意を引く。割合直線的にこちらを追い回すだけなので誘導することは難しくなかった。恐らくだが知能もそれほど高くない。
だからこそ、足元が何らかの液体によって濡れていることに気付かなかったようだ。
「今だ!」
一斉に火の魔法と火矢を放つ。足元の液体に、つまり灯り用に持ち歩いていた油に引火した。
「全員離れろ!」
火柱が立つ。巨体故に燃え広がるのには時間がかかったが、それゆえにそうそう簡単に消えはしない。
「石造りの町で助かりましたな」
「木が多ければ全員焼け死にかねなかったがな」
作戦は難しくはない。燃えやすいものを一か所に集めて、そこに蛙を誘導する。後は燃やせばいい。
飛び道具が効かないなら焼き殺す。シンプルだからこそ有効な作戦だった。何より、誰一人として傷ついていない。
蛙は暴れまわっているが、もはやその程度で消えはしない。だが、異変が起こった。
「「「「ギャアアアアアアア」」」」
悲鳴、だろうか? 苦悶の、悲痛な叫びが町中に響き渡る。
慌てて周囲を確認するが、やはり誰一人として傷ついていない。
「あの、魔物から?」
「正確には……魔物にある、顔から、ですかな?」
いったい何故そんなことをしているのかは誰もわからなかったが、不気味であることは確かだった。
しかし更なる異変が彼らを襲う。魔物から黒い煙がもうもうと立ち込める。
「離れろ! もっとだ!」
全員ができる限りの速さで走る。しかし、黒い煙はまるで狙っているかのように一人の冒険者に迫っていた。
リンクスである。
彼も必死で走る。何かはわからないがよいものであるはずはない。しかし、その疾走も虚しく、彼は黒い煙に呑まれて消えた。




