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新米たちが魔物との戦いで一喜一憂している横を通り抜け、下層へ向かう。このダンジョンは推定三十階ほどでかなりの難易度と言える。とはいえ腕利きの揃ったギルドなら時間さえあれば確実に攻略可能だろう。
しかし十年以上探索が続いているのはこのダンジョンが極めて優秀な宝が出土するためだ。例えば幻光機などもここで発見された。このようにダンジョンにはどこで、誰が作ったのか全くわからないものが見つかることがある。一部ではそれらをアーティファクトと呼ぶらしい。
そしてそういったアーティファクトが見つかるのはほぼ間違いなく都市型ダンジョンと呼ばれる、その名の通り、町や要塞だったと思しきダンジョンである。
すでに廃墟になった、わびしい街を通り抜ける。人が住んでいたようにも見えるが実際に都市型ダンジョンで人と出会ったことはないらしい。
何故こんなダンジョンの中にそんなものが存在するのか。かつて栄えた都市を再現しているだけだとも、あるいは何らかの原因で人だけがいなくなったとも、予想されているが答えを出したものはいない。
少なくとも冒険者にとってはどうでもいいことだ。
「いた。ジャイアントだ」
名前の通り、小屋さえ見下すほどの巨体がぼんやりと空ダンジョン内の空を見上げていた。ただし、あれは自分たちの獲物ではない。
「では、他のパーティーに連絡を取りましょう」
今回の探索は地下二十五階付近で行われている。このくらいの深さになると滅多に上には上がらないが、上の祭りに合わせて魔物が大量発生する可能性がある。今のところその様子はないものの、油断するわけにはいかない。
だからこそ数組のパーティーと連携を取り、確実に魔物を始末していく。
パーティーごとに向き不向きがあるので、戦う魔物を分担できる。リンクスたちは大物よりも大量の小物、しかし厄介な魔物と戦う方が得意だった。
他のパーティーがジャイアントと交戦を開始すると、その音を聞きつけたのかカタカタと軽い木同士がぶつかる音が近づいてくる。
現れたのは人間大のからくり人形のような魔物、パペットだ。
人間の形をしているが、首を真後ろに向けたり、胴体を真っ二つにされても平然と動くなど、まともな生物ではない。
しかし、この魔物の最も厄介なところは強さよりも賢さにある。
この魔物は巧みに他の個体と連携を取り、時には罠を仕掛けることすらある。戦術を理解できるのだ。こちらの言語は理解できないようだが。
ミクリ、ディアネ、ジックの三人が三体のパペットに向き合う。ジックが二人を庇うように先頭に立つ。
しかし、二体のパペットは重力を感じさせない軽快な動きでジックを飛び越し、ディアネに襲いかかった……が、ディアネが持っていたメイスで一体のパペットを吹き飛ばした。
ぱっと見てディアネが魔法使いだと思うだろう。頭の悪い獣ならわざわざディアネを狙わなっただろうが、わざと本来の役職と違う服装にしたことで敵の目論見を挫くことができた。
「はーい、これで一体目ね?」
「いえ、二体目っす」
すでに一体のパペットはミックのボウガンに胸を撃ち抜かれていた。つまるところパペットの行動はほぼ彼らの思い通りだった。
残り一体になったパペットは遁走を始めた。何故あれで走れるのかはわからないが足をあらぬ方向に曲げ、奇怪な格好のまま走り続ける。
「追いましょうか」
三人もその後を追う。
が、しかしパペットは瓦礫に足をとられ、そのまま地面を転がった。もちろんそれを見逃すほどお人よしではない。倒れたパペットに三人がそれぞれの得物を向け、
だが、不意に横合いからパペットが飛び出した。偶然ではない。転んだのも失敗ではない。わざと敵をおびき寄せ、足を止め、不意を討つ。きちんと練られた戦術だ。
奇襲をかけようとしたパペットはそのまま、
真一文字に切り裂かれた。
「不意打ちを行う場合は自分が不意を討たれないか気をつけることだ」
リンクスはポツリと遅すぎる忠告を発するが無論聞こえてはいない。
パペットの奇襲を予測していたため、あえてリンクスは単独で行動していた。痕跡を探し、隠れ場所を特定した。単純だが、そうそう簡単にできることではない。
「お見事」
そう言いながら、ジックは風魔法を倒れたパペットに放つ。戦闘は終了した。




