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Brave seven 〜導かれる運命〜  作者: Yori Yori
第1章 旅立ち
8/10

#7 悲劇の少年

 

 トライアが不穏な気配を感じた瞬間、魔法陣の上にいた骨の巨人は、トライア達に近づく。

 トライア達は己の全てを賭して迎え撃つ。


「この命に代えても、あやつらを逃すため!

  ぬおぉ!!!!」


 トライア達は己の生命力の限界を超え、爆発的な力を以って挑む。


「奥義・一切合切!!」


 そして骨の巨人へと肉薄し、同時に眩い光が放たれる。光が晴れ、そこには骨の巨人以外は見当たらなかった。


 その上空に、様子を観察していた異形の者が1人。


「まぁ、こんなものでしょうか。しかしコストがやはりかかりますな。敵を殲滅する為に、周囲から生命力を吸い取って活動せねばならないのは非常に効率的ではありますが、我等の物となった時の事を考えると、不毛の大地になる事は少々考え物ですな」


「しかし……あの魔力暴走。まさか姫があのような事を仕出かすとは。

  ……ともかく実験は中止にして、姫を迎えに行くとしますか。」


  異形の者は足下の戦闘で起きた魔力暴走には気にせず、指を鳴らす。すると足下にいた骨の巨人は霧散した。

 そしてその場を去った。周囲に大きな傷跡を残して……


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 カインは放心していた。


 突然の轟音。1人の銀髪の妖女によって起こされた惨劇。

 まったく理解が追いつかないとはこの事。

 目の前で大切な人達が蹂躙され、そして自分だけが残る。


 カインにはどうする事も出来なかった。

 考える事さえも、動く事さえも、憎む事さえ。


 銀髪の妖女が倒れたと同時にカインの意識は闇に飲まれていった。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 ある日、1人の行商人が街道を進んでいた。

 この街道は国境を超えた先の街へ行く近道となる街道。しかし戦時中に休戦協定が結ばれ、前線への補給は元より、外交には殆ど行われていないため、ここ数年その街道は使用されていなかった。

 元より整備など殆どされておらず、馬車をガタガタと揺らしていた。


 そんな中、馬が嘶いた。

 行商人は手綱を引き馬車を止める。


 行商人の目の映るのは、無残に破壊された数台の馬車。


 馬がそこに何かあると訴える様に嘶く。その先には1人の赤髪の少年が倒れていた。


 すぐさま行商人は生存確認をした。見た所、特に外傷は無く呼吸もしている。行商人は少年を担ぎ、荷台へ乗せる。

 行商人が来た街から約半日程離れた場所、現在時刻を確認する為、刻珠(こくじゅ)を確認する。しかし色は黒を示していた。仕方がなく空を見上げて太陽が真上にあることから正午であろうと推測する。

 今から急ぎ引き返しても、日を跨ぐ事になるが、そうも言ってはいられない。

 行商人は引き返す事にした。


 道中、休憩を少し挟みながら、馬を走らせつつ考える。

 赤髪の少年の正体と刻珠(こくじゅ)の色が黒を示していた事を。


 あの街道の先にはソドン村があったはずと頭の中の地図と照らし合わせる。

 確か王国の騎士団の軍師様が再興した村であったはずと。

 その村から逃げてきたのだろうか……となるとあの馬車にはソドン村の住民がいたのではなかろうか。

 少年以外に遺体は確認出来ていない。

 更に不思議な事にあの辺りには生命というものが存在していなかった。

 草木は枯れ、馬も人も存在していなかった。その中に居た赤髪の少年。

 更に刻珠(こくじゅ)の色が黒であった事。壊れたのかと思ったが、あの場所から離れた所で再度見ると、刻珠(こくじゅ)は真っ赤な色を示していた。

 つまり刻珠(こくじゅ)は壊れてはいない、ならば精霊の力が弱まっていたのだろうか。


 そんな事を考えながらも街へと向かう。

 道中、稀に魔物に遭遇する事はあったが、1匹2匹程度なら対処が可能だった。

 元よりこの近辺の魔物は、戦闘経験の無い人でも倒せる程弱い事もあり、移動中に護衛をつける事は珍しいが、流石に魔物の群れに遭遇すると手がつけられない。その為、魔除けの香を焚いて回避をする。


 王都から西に少し離れた場所にある街、ペリアという街。

 夜は深まり、刻珠(こくじゅ)は滅紫を示していた。行商人は街に入るなり、馬車を治療院へと進め、意識の無い赤髪の少年を治療院で診てもらう。


 診察が終わり、命に別状はなく意識だけが覚めない様子であった。

 引き続き治療院にて診てもらう事になったが、行商人には依頼があった。

 その依頼の破棄報告の為、商人ギルドへ報告。

 その報告によって、異常事態と判断した商人ギルドマスターは各所へ報告する。

 王国、冒険者ギルドへとその情報が伝わり、すぐさま王命によりソドン村への調査依頼が発令された。


 赤髪の少年は引き続きペリアの街の治療院にて様子を見る事になり、救護を行った行商人はペリアの街の自警団で聴取を受ける。


 後日、村へ調査に行った者達の報告によると、ソドン村の住民は赤髪の少年を残して誰一人発見されなかった。

 そして村と、少年の発見された付近、村の近辺にあった大きな切り株、その周辺の土地の生命力の喪失、精霊反応は微弱といった異常な現象が起きている事が判明した。


 そして赤髪の少年が目覚めるまで、この事件は一時保留される事となった。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 数日後


 赤髪の少年の意識が覚めた。

 治療院は直ちに各所へ報告を行い、少年の診察を行う。


 少年は全ての質問に無反応、食事を運ぶも自ら摂取する事は無く、口へ運ぶも開かない。

 そんな状態であった為、栄養剤の注射が行われる。


 報告はもちろん、救護活動を行った行商人の元へも知らせが来る。

 少年が目覚めるまで、一時的に保護者となった行商人は、いつ目覚めるか分からない少年の為に全ての依頼を中断した。

 行商人はその間稼ぎが無くなるが、王国から多少の支援があった為生活は何とか出来ていた。


 行商人は見舞いに来て少年の様子を伺う。そんな日々が続いていた。

 暫くして、少年の容態は悪い方向へと向かう。

 それもそのはず、食事の摂取もままならず栄養剤の投与による延命処置のみであるからだ。

 日に日に身体は痩せ細り、生命力が低下していた。


 それから数日


 行商人はこれまでも毎日、見舞いに来きて少年に声をかけていた。

 そのおかげかは分からないが、事態は好転していく。


 少年は食事を口に運ぶと口を開ける事は出来ないが、唇につけると反応を示した。


 また数日経ったある日


 少年は食事を咀嚼し、嚥下する事が可能になるまで回復した。


 また数日後


 少年は座っている事が可能になるまで回復した。


 また数日後


 少年は起立する事まで可能になった。

 歩く事はまた数日後に可能になった。


 連日、行商人は少年の介護をしていた。

 何故、この行商人はこの少年にここまでするのかは、ソドン村に住んでいた男性の話に出て来る少年に似ていたからだと、後の話で判る事になる。


 それから数日、また別の国でソドン村の悲劇と似た様な現象が発生したと報告が上がる。


 王国は警戒する様に国中に御触れを出す。


 それから少年は回復の一途を辿り、最終的には介助も必要なく、食事と歩行が可能となるが、未だ言葉は発しない。


 行商人は毎日の様に言葉を掛け続けていた。

 治療院側はお手上げ状態であった。

 意識不明の状態から回復したのだから十分に奇跡と言えるだろう。


 少年が治療院に運ばれてから、2ヶ月が経過した所で少年は行商人へと引き取られる。


 それからも行商人は仕事をせず少年の介護に徹していた。

 少年がソドン村の悲劇の重要参考人であるため、王国から支援金が出ており、生活が出来ている。


 そんな生活を行商人が続けていたある日。

 少年は言葉を発した。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 どの位の時間が経っただろうか。


「あ、あぁ」


「お! 少年! 言葉が分かるか?」


 俺は誰だろう……そしてここはどこだろう……目の前にいるのは誰だろう。


「うぅ」


「少年! ちょっと待っておけ!」


 そう言って目の前の男性は何処かへ行った。

 俺は何故こんな所にいるのだろうか。

 何故? どうして?

 あの日……

 あの日?

 あの日とは……

 あぁ、分からない。


「少年! すまん、混乱するだろうが少し辛抱してくれ」


 男性は、白衣を着た人を数人連れて来た。

 何者だろうか。


「まずは自己紹介致しますね。私はペリアの街の治療院に勤めています医師のタハン=ランズという者です。

 貴方は数ヶ月前にそこの男性によってこの街に意識不明の状態で運ばれて来ました。

 貴方が意識を失う前に覚えている事はありますか?」


 俺は首を横に振る。


「分かりました。では次の質問を致しますね。

 貴方が目を覚ますまで、色々調べた事があります。

 貴方はソドン村の出身ですか?」


 ソドン村か……

「っ……うぁぁ!!!」

 頭が痛い……


 銀髪の妖女……


「大丈夫ですか!?」


 俺が最後に聞いたのはその言葉だった。


 次に目を覚ますと、1人の男性がいた。

 とても心配そうに俺を見ていた。

 禿頭の強面であったが、優しさが滲み出ていた。


「少年! 大丈夫か?」


 俺は首肯する。


「そうか……少年。その……悪かったな。

 目が覚めて間もなく医師を連れてきて、混乱させてしまった様だな。

 先生も言っていた通り、君は数ヶ月間言葉に反応する事がなく、言葉も話せていなかった。それが昨日になって言葉が分かるようになったんだ。

 俺はそれが嬉しくてつい…な…」


 あぁ、何だか暖かい気持ちがずっと俺の側にあったのはこの人だったのか……


「そうだ何か食べる物を持ってくるから待ってろ!」


 そう言って禿頭の男性はこの場を去った。


 俺は一体何だろうか、そういえば医師が言っていたな、ソドン村と。


 頭が痛い……


 頭の痛さと共に記憶がフラッシュバックした。


『———! 生きて』


 そう言って俺の前に立ち俺の方を見て、とても優しい顔で立つ女性、すぐさま倒れた。


 2人の男性が銀髪の妖女に飛びかかる

『———は守る!』

『逃げろ!』


 この2人も投げ飛ばされた。


 1人の女性と1人の少年は手を繋ぎ、俺の前に立つ。

『逃げるくらいなら徹底抗戦してやる』

『大事な親友だ、アイツが選ばれたんだ。こんな状況なら守らないとな』

 そんな言葉も虚しく2人とも倒れた。


 そして俺の前に庇う様にして立つ少女と何か


『大丈夫よ—————女の子は強いんだから!』

『あの人が選んだ人です。ここで護らないと意味がない』

 そう言って俺の前から消え去った。


 そこで銀髪の妖女も倒れる。


 俺の記憶なんだろうな……

 でも誰だろうか、そして湧き上がるこの気持ちは何だろう。


「少年! 食い物を持ってきた……ぞ?

 少年泣いているのか?」


 そう言われて感じた頬を伝う暖かくも冷たい雫。

 俺は泣いているのか?


「少年……少しずつでいいから食べな」


 そう言って男性は俺が食事を終えるまで側にいた。


 どんな料理かは分からない、詳しい味も分からない。だが優しい味だったと思う。


 翌日


 再びタハンという医師が来た。


「先日はすみません、いきなり分からない事を尋ねられても混乱しますよね。ですから今日は様子を見に来ただけです。調子はいかがですか?」


 調子か、調子はどうなんだろう。

 自分では分からない。

 俺は首を横に振る。


「分かりました、それでは今日はこれで失礼致します。お大事に」


 そう言ってタハン医師はこの部屋を去る。


 禿頭の男性は心配そうに俺を見る。


「少年! 今日は少し外に出ようか、散歩だ散歩!」


 そう言って俺を連れ出した。


 外はポカポカとして心地良かった。

 外には街行く人達が賑わって活気に溢れていた。


「少年、どうだ? この街は、とても良いだろう? 俺はこの街が大好きだ、雰囲気もいいし、住んでいる人達も良い人ばっかだしなあ」


「あ、そういえば自己紹介はしてなかったな。俺はランド=メイスゥンと言う。行商人さ。

 まぁ今はお前さんの世話があるから休んでいるがな」


 豪快に笑いながら言い放つ。

 この人は俺のせいで仕事がないのか……


「あ、今お前さんのせいで仕事が出来ない様に聞こえたか? そんな事は全くねぇから気にすんな! 俺は俺がやりたくてそうしてんだよっ」


 また豪快に笑う。この人、ランドさんは元気なんだな、この街と一緒だ。


「お、お前さん始めて笑ったな、良かった良かった!」


 俺は笑ったんだろうか……分からない。が、きっと笑ったんだろう、ランドさんが笑いながら言っているんだし、そうなのだろう。


「少年! 腹がへってきたろう! 飯食いに行くぞ!」


 そう言って食堂へと連れて来られた。


「女将! 邪魔するぜ! いつものと後消化に良いもので量は少なめの物を頼む!」

「お、あんたか! 最近この街にいるようだけど、その子が理由かい」

「まぁな! つい一昨日言葉に反応する様になってな! 今日は少し気分転換ってとこよ!」

「それは良かった!! なら今日はサービスだ!」

「それはありがてぇが、そこは商売人同士きっちりさせて貰うぜ、また今度頼む!」

「あんたはそう言う奴だったね」


 ランドさんはこの食堂の女将と嬉しそうに話しいた。

 それも俺の事でだ、何で他人の事を嬉しそうに話すのか、俺には不思議でならなかった。


 この時の食事も詳しい味は分からなかったが、優しい味がした。


 食事を終えたあと、俺たちはランドさんの家に帰った。

 その後もランドさんは俺に優しく話してくれた、数ヶ月前に俺を見つけた時の事、意識が無かった俺の事、それまでに何があったのか等色々と。

 俺はその中で段々と言葉を発せる様になった。

 まだ文章は話せない、返事や、単語のみでの会話である。

 何とも子供の様だと自分でも思ったが、今はそれで良いとランドさんは言ってくれた。


 翌日、またタハン医師がやって来た。


「こんにちは、調子は少し良さそうですね、何かこう曖昧ですが、これもランドさんのお陰かと」

「いや、そんなこたぁねぇです先生。少年がここまで回復したのは少年が強いからだろうよ」


 その言葉に俺は首を横に振る

「先生、ランド……ありがとう」

 少し吃音混じりの音だったが、伝わっただろうか。


 ランドさんの頬に雫が伝う。

 あぁ、良かった。ちゃんと気持ちを伝える事が出来た。


 その後もタハン医師からの質問はあったが、初日にあった様な事は起きなかった。

 しかし重要な事に俺は俺の名前を思い出す事が出来ないでいた。一緒に居たあの人達の名前も……

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