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Brave seven 〜導かれる運命〜  作者: Yori Yori
第1章 旅立ち
7/10

#6 難聴の村長

今回は少し暗い内容となります。

 

 俺たち家族は村の広場に来ていた。

 何故かって?村の自警団の団長さんの息子が家に来て、急いで広場へ集まってくれと各家に声を駆け回っていた。自警団の団長さんが会議に参加していたらしく、村の決定事項として村全体で逃げる事が可決した。その為の連絡係に自警団を動員していた。


 父さんの推測は正しく、早めに行動した事もあり、すぐに家族で移動する事が出来た。

 母さんを呼びに行く事は面倒であると思われたが、母さんは起きていた。精霊の声は聞こえなくとも、何が嫌な予感がしたそうで、寝付きが悪かったんだそうだ。

 メイリンも同様な事を言っており、起きていた。


 ティアはと言うと、何故か居た。

 その事を尋ねると、恐らくフィオさんが、精霊の縁リンクを切ったのだろうと。


 俺はその言葉に疑問を浮かべた。

 精霊達は精霊同士で繋がっており、それの大元が大精霊のフィオさんである。

 フィオさんはこの場所に限定しているのではなく、特殊な空間に存在しているため、この地に顕現するには神木による媒介が必要になるとの事。その神木を媒介としていたのはティアも同じで、その神木が影響を受けた事でフィオさんの顕現状態は解除された。

 であるならティアも顕現状態が解除されるそうなのだが、現にこうしてこの場に居ると言う事を考えると、縁が切られた事により、完全独立となったと考えた方が良さそうだ。


 そうした疑問がどうやら顔に出ていたらしく、ティアは続けた。

 恐らく旅に同行させる為に既に独立して行動できるようにされていたのだろうと。

 また、ティアは「解放された!」と喜んではいたが表情は笑顔とは言いがたい歪なものだった。例えどこまで酷い愚痴をこぼしても、ティアからすれば母の様な存在なのだろう。

 だとすれば、少なからず心配をしているのではないだろうか。


 どんな種族であっても、親を思う気持ちは変わりはないのだろうか、と不意にそんな事を考えてしまう。


 今回この広場に集まった村人、総勢54名。

 その全員が漏れなく、この村に迫る危機から逃れるために集合していた。

 そして逃走の為の移動手段は馬車である。

 これも村中から集めたが、7台しか集まらず、どれも野菜等の農作物の運搬に用いる為の馬車で、人が乗れる様な空間など無いに等しい代物であった。

 そんな状態であるにも関わらず、逃走の準備は着々と進んでいく。

 そんな中、冷静に指示を飛ばしている人物がいた。


「皆さん落ち着いて!慌てずに、馬車一台につき8人乗る事が可能です!

 その内御者が出来る方は御者席の方へ着く様にしてください!御者台には一台につき2人居れれば幸いです!

 皆さん!皆漏れる事なくこの村を一時的に離れるのです!生きていれば、何とかなります!ですから皆さん、生きる事を諦めないで下さい!」

 

 そう村人を元気づけながら村長代理が指示を出していく。村人達はその言葉に希望を持ちながらどんどんと馬車へ乗っていく。

 俺たち家族は父さんの馬車に優先的に乗せて貰っている。父さん、母さん、俺、メイリン、リョウ、アイさん、後は何故か村長と、村長の次に長寿な自警団長のカルロスさんだった。

 

 そして、乗り込み終え、間も無く出発と言うところでこの村の老人達が突然動き出した。老人と言うには些か若いと思われるが齢50を越す者達が8人、村長の元へと集う。

 その動きには皆一様に驚きを隠せずに困惑する。

「皆の者よく聞け!」

 そこへ村長の言葉が飛び込む。


「この様な状況の中で混乱を招く様な真似をしてすまない。

 老いぼれの戯言かと思われるかと思うだろうが。だが、これは必要な事であるとワシが判断したまでじゃ。

 今回精霊様から告げられた『逃げろ』と言う言葉はとても曖昧じゃ、何かとてつもない物が来るのじゃろう。

 つまり、危機の規模は未知数である、その危機から逃れる事を成功させる為には少なからず犠牲になる者がおる事じゃろう。

 我が息子は誰一人漏れなく逃げおおせるつもりじゃった様だが、その辺りはまだ甘い様じゃの。

 しかしじゃ。ここ十数年間は、呆けたふりをして我が息子の器量を見定めておったんじゃが、想像以上に村長としての器量はワシよりも断然上じゃった。

 じゃからこの機会にワシはこの場で息子に村長を引き継ぐ。これが意味するのは皆まで言う必要は無かろう。

 ワシの周りに居る者達は、全てワシの考えに賛同した者達じゃ。

 ワシらは長い間生きた。その中で色々な事を経験し、お主らに伝えてきたつもりじゃ。

 それにもう思い残す事は無いしの。

 のう?カルロス」


「その通りですトライア村長。せがれ達には伝えるべき事は伝えました。そしてワシらは村長の若かりし頃を知る者ばかりです。当時は本当に憧れておりました、それ故に貴方と死地に向かう事が出来るなど本望とも言えましょう」

 とのカルロスの言に、老齢の男達は一様に頷く。


「本当ならばワシ1人だけで済ます予定じゃったんじゃがの、カルロスの奴めが気付きおってこんなにも集まってしもうた。

 ……カルロスの言った通りワシらは決意した。愛する守るべき者の為に!

 嘆き悲しむ者もおるじゃろう。なんじゃ、簡単に言えば本来よりも早く、全能神オルバリオス様の御許へ行くだけじゃよ」


 この村長の言葉に皆、言葉は出てこない。


「なんじゃ、そんなにワシらが心配か?

 これでも若い時は戦でブイブイ言わしておったんじゃ、まぁそんなに心配ならここに残ってくれても良いがの?

 しかしお主らが一番大事な事をわかっておるじゃろ?

 この村の掟の1つ。命を粗末にする事なかれ。

 生きていれば何とかなるのじゃ。金がなくともやりようによっては何とかなるのじゃ。

 それにお主らなら、村の復興なぞ容易いじゃろうて。じゃからワシらの事は気にせずに生き延びよ。

 これがワシらの願いじゃ」

 

 この言葉に、皆思う所があるようで反応は様々であった。

 難聴が演じられたものであったとしても、やはり村長なのだろう。


「最後に、カイン。

 お主の成人の儀の事じゃが、簡易的に済まそうと思う。……皆異論はないな?」

 そう言って俺の儀式について話を進める。

 異論はなく、頷くばかりの皆々。


「では……ソドン村の長の名において宣言する。ここにカインを1人の大人として認める!

 カインよ、これからは1人の大人としての責任がつきまとってくるが、決して1人ではない事を肝に銘じておくが良い。

 困ったときは周りに助けを求めればよい。

 どこかに助けてくれる者がいるじゃろう。

 簡単に言えば長い物には巻かれろと言う事じゃ」


 そう言って簡易ではあるが成人の儀は終えた。

 村長の言葉を素直に受け止めれる余裕など俺には無かった。

 こんな状況で大人という実感など微塵もなく、ましてただ大人と認めると宣言されただけであるなら尚更であろう。

 だけどそれで良いのだと言う事は何となくであるが察する事は出来た。

 

 そして儀式が終わった事で村長は最期の仕事を終える。

 次いで時期村長、つまり村長代理に村長職を引き継ぐ事で、この村の全責任が息子に継がれる事になるが、それも仕方がないのだろう。

 そして引き継ぎを終え、元村長率いる老人達はこの場に残り、現村長率いる、逃走組は馬車に乗り逃走を開始する。別れを惜しむ者、生き延びる事を考えるもの等、みな様々な思いを抱えながら。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 大きな切り株の上に寝そべる銀髪の妖女あり。

 妖女がむくりと体を起こす、ぼやける視界が鮮明になっていく。

 既視感。

 この場所に来てから何度か感じた不思議な感覚。

 それが何かは自分では分からない。

 ただ、度重なる身体の怠さ、これは元からある。その為、この地に来てから質が変わったと言うのか、今まで経験した怠さと違うという事はわかった。次いで記憶にない風景が寝ている間に想起される。その風景がこの地に似ていた。それ故の既視感。

 何故だろう、寝ている時にしか想起されない物なのに何故か懐かしさを感じるのだ。

 そして頭痛による目覚め、これが一番厄介だ。寝覚めが悪い。必然的にやる気はなくなり、苛々も募る。

 なれば部下に全て任すのも無理はないと、自分で納得する。


「はぁ、怠いわぁ…………もう一回寝ておこうかしら。終わればアルバーグの奴が起こしに来るでしょうし」


 そう言って銀髪の妖女は紫紺と赤銅色の瞳を閉じ、気怠さに身を委ねて眠気の中に堕ちてゆく。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「さぁ、我がスケルトン軍団よ!

 目標は目前です!いざ行け不死の者共よ!」


「「「「ギギギギ!!!」」」」

 吃音と共に骸骨兵士の行進が続く。


『ふっふっふっ。さすが私のスケルトン軍団よ。この50の数ならば蹂躙も容易い事でしょう。

 さあ、もうすこしで生命力の反応が密集している地域ですね。

 ここにはどれだけの人間がいる事やら。

 邪魔な精霊樹を破壊した事ですし、おそらくこの地域の人間達に精霊の加護は及んでいないでしょうし。

 まぁ例え加護があったとしても、私達の負けは揺るがないでしょうね』


「……なんて、呟いた所で誰も反応してくれる者が居ないのが寂しいですね」


 と物思いにふける。

 とにかく、あの方の為に人間の魂を多く回収しなければならない。

 さりとて、いきなり大きな都市に攻撃を仕掛ける訳にもいかない。

 そして人間達には禁術とされる生命与奪の魔法。これには我等魔族の間でも禁術とされている。

 理由としては術者の負担が大きく、制御が粗末であれば暴走し、術者含めた周囲の生命が全て無に帰す事になるからである。

 そして最近になって、安定的に行使する事が出来る方法が魔族間で発見された。

 そのため、わざわざ辺境の地にて実験を行なっているのである。

 

「しかし本当に辺境ですね。…………ん?生命力の高まりが異常な者が居るようですね。これはおもしろい事になりそうですね。さあ、そろそろ開戦と行きましょうか」


 アルバーグはそう呟きながら、楽しみを胸に抱えつつ、歩を進めていく。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「よし……行ったな」


 若い村人達の逃走が開始され、この地域から逃れた事を確認すると、元村長トライアは安堵する。


「さあ我等も一仕事しますか。先生」

「む、懐かしい呼び名じゃのカルロス。ふぉっふぉっ……げほっげほっ!」

「大丈夫ですか先生?」

「う、うむ。大事無い」

「全く……歳を召されているので、何かの病かと思ってしまうではないですか。

 この様な時にそんな心配をさせないで下さい」


 先生。それはトライアが50年程前に、王国の騎士団に所属していた時、そう呼ばれていた。

 博識であり、思慮深く、時に大胆。そこを買われ後方から指揮する軍師の立ち位置に、若輩ながらもその職に就いていた。そんなトライアを若い者達は「賢者」を筆頭に様々な呼び名で慕っていた。

 そんな風に慕われているトライアの事を邪険にする年増の雑兵も勿論いた。

 だが、その者達をも武力を用いず平和的に解決してのける様な人物を慕わずにいる者はおかしい。

 そんな考え方の人物達は年齢を厭わず、トライアを先生と慕い、集まった。

 それから15年程経過し、トライアは退軍を決めた。その際国王から領地下賜さる話が持ち上がったが、これを辞退し、村を興すことを望んだ。

 それがソドン村の発祥だ。実はソドン村はトライアの故郷であったのだが、戦乱の世にて村は壊滅し、この世には存在しないものとなっていた。

 そして、村の再興について来たのが、カルロスを筆頭とした老人達だったのだ。


 老人達は、かつて憧れていた先生と戦線を共にできる事に高揚していた。

 彼等は戦乱の世に生まれ、戦う事で身を守って来た生粋の武人達。戦う事が趣味とでも言わんばかりに死闘を前にして尚、恐れを抱くよりも、楽しんでいる様であった。

 

「さて……おいでなすった様じゃ」


 ザッザッザッ


 100もの骨の足の刻む音は、鈍く重く地に刺さる。

 皆、足音のする方へと意識を向ける。


「そうですね、先生。どうしましょうか」

「そうじゃの。とりあえずじゃが、お前らの好きにするとええ、今のお主らの状態じゃと作戦など、意味なかろう」

「……それもそうですね、私も久しぶりの戦闘に非常に昂ぶっておりますので、暴れ回りたいですね」

「ならば答えは1つじゃの。

 皆の者!これより接敵する!思う存分暴れるとしようぞ!」


「「「「「応!」」」」


 トライアの鼓舞をきっかけに、戦いの火蓋は切って落とされた。


 そんな中、トライアは冷静に現在の戦況を確認する。敵の数は50体ものスケルトン。ここまでの数を用意出来るのならば、下級の魔物。しかし侮ることは出来ない。対してこちらはトライア含め9人、いずれも歴戦の戦士達。今まで戦で相手にしてきたのは人である。その為魔物との戦闘の経験は無いにも等しい。

 そもそも、50ものスケルトンに対して精霊様がはっきりと『逃げて』と伝えてくる物なのか。

 もしくは裏で糸を引いている者がいるかもしれない、ならばそいつはどこに居るのか。

 明確な答えは出ないが、とにかく戦う事にする戦士達。

 

「ワシも久しぶりに本気を出そうとするかの」

 そう言ってトライアは、下腹部に意識を集中させ、気を練り上げていく。

 トライア考案の闘気術だ。ちなみに他8名は既に闘気の開放を終えている。

 闘気とは、魔力を魔法へ発現させる事なく、そのまま物理的な力へ転用する技である。

 魔力コントロールの苦手な者が多い戦士には、少し難しい技であったが、トライアが王国騎士団の教育に力を入れていたお陰で、騎士団に所属していた皆は闘気術の基本を身につけている。お陰で王国が戦に負ける事もなく平和な世が50年続いた。

 それほどの実績のある戦闘技術であるが、術の考案者であるトライアには魔物には通用しないかもしれないと、思案する。なにせ魔物との実践経験が無いためであった。

 しかし、四の五の言ってはいられない状況である。なれば、己の全力を持って迎え撃つ。

 これが現状で考えられる、軍師としての最適解であった。


 戦闘が進むに連れ、スケルトンの数は数を減らしていく。残り14体。


「っせぁっ!!あとどのぐらいでしょうか」

 剣にて1体を仕留め、戦士が言う。


 残り13。


「数は確実に減っている!」

 彼は手斧にて、仕留める

 

 残り12。


「まだまだじゃ!」

 彼は槍を横に薙ぎ、2体屠る。


 残り10。


「そらそらっ!だいぶ減ってきやしたぜ!」

 彼は大鎚を振り回して周囲の5体をまとめて屠る。


 残り5。


「この調子ならもう終わりですな!っと危ない危ない。そらっ!」

 曲刀で1体を仕留め、背後から飛んできた攻撃をぎりぎりで躱し、もう1体を仕留める。


 残り3。


「案外呆気なかったですね。っはぁ!」

 大斧を横一閃し、残りの3体まとめて屠る。


「いやはや、少々骨が折れましたな。

 ……先生?大丈夫ですか?」


「む。ああ、問題は無い。

 ……ただ、やはり引っかかる。」


「先生それは何故でしょうか」


「それはな——」


 トライアが説明をしようとした途端。

 バラバラになった骨が一箇所に集まる。

 そして足下には大きな魔法陣が展開されていた。

 見るも禍々しい魔力で出来た魔法陣が……

 

 トライアは考えた。

 この足下の魔法陣がスケルトンの死骸に影響しているのか、スケルトンの元々の性質なのか。

 しかし、記憶の何処にもスケルトン自体ににこの様な性質は無かったと、思い出す。

 ならばこの現象は、魔法陣によるものと考えられる。が、何が起こるのかは分からない。

 

 次第にスケルトンの死骸は全ての骨を集め終え、何かの形を成していく。

 

「お主ら!説明は後じゃ!構えろ!今度は遊びでは済まぬぞ!」

 トライアは瞬時に判断し檄を飛ばす。

 とにかく何かは分からないが、分からないなりに対策をとる。

 戦闘において冷静に状況を分析する事を重視していたトライアと、その教え子達は何が起きても良いように構える。

 そしてそれが間違いでは無かったと、確信に至る。


 魔法陣の上には骨の残骸を全て掻き集めて形を成したバケモノが居た。

魔法陣の周囲は生命の力が消えさり、周辺の精霊の力はとても弱まっていた。


 もしも仮に魔法陣の中に突っ込んでいけば、あの中に取り込まれていたであろう事は皆肌で感じていた。


 トライアは考えた。

 己の全てを投げ打って、コイツを仕留める事が出来るのか、はたまた仕留める事が出来ぬのか。

 

 その時嫌な気配を感じた……


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 宵闇の中を7台の馬車が駆ける。

 出来るだけ早く、隣街へと移動する。

 御者は交代し、隣街まで1日かかる行程を半日で済ます為の強行手段を取っていた。

 道中、食事をとることも忘れ、皆恐怖の中に沈んでいたが、希望を忘れる事も無かった為、今こうして生きている。


「あとどれくらいすれば安心出来るのか」


 誰かがそう呟いた時に轟音と共に馬車の進行は留まる。


「な!何者だ!」

 先頭の馬車に居た御者が誰何する。


「あーーーもう!!!頭痛いわ、寝れないわでイライラするぅ!!!」


 そう叫んでいたのは1人の銀髪の妖女。

 紫紺と赤銅色の瞳を瞬かせながらこちらを睨め付ける。

 途端に誰何した御者は言葉を発する事も出来なくなり、四散する。

 その隣に居た御者は何が起こったのか分からないが、全身に感じる生暖かくヌメっとした感覚に戦慄、したかの様に感じる間も無く四散した。


「なに? ゴミの分際で私に話かけるとか病気じゃない?

 しかもなに、馬車でどこまで行くんですかー?

 私のイライラの発散をさせてよぉ!!!」


 そう言って、彼女は馬車を蹂躙し始める。


 馬車は呆気なく破壊され、吹き飛ばされる。

 その中にも当然カイン達は居た。


 偶然にも直接破壊される事は無かった、吹き飛ばされた馬車に当たって潰れる。

 皆何が起こっているか分からなかった。

 いや、考えたく無かっただけかもしれない。

 

 その馬車からカインと同乗していた者はまだ無事であった為、なんとか這い出てくる。


 銀髪の妖女はその様子を見るや否や、赤銅色の瞳を瞬かせる。


しかし、カイン達は四散しない。


 少女は腹立たしく思い瞬時に迫る。


 そして先程から何故か気になる存在、赤髪の少女に目を向ける。


「くっうっ……頭が、痛いじゃない!!!」


 そう言って赤髪の少年を叩きのめそうとするが、1人の女性に阻まれる。

 その女性は少女背を向け、何かを守る様にして立ちふさがったが、倒れる。

 続けて、2人の男が少女に向けて飛びかかってきた。

 少女は尽く往なし、絶命させる。

 少女は赤髪の少年を叩きのめす事をやめない。

  苛々させる存在が許せないからだ。


 また1人の女性と1人の少年によって阻まれる。

「まったく!腹立たしい!!ソイツがイライラさせるから殺してあげるのに、何で邪魔するのよぉ!!

  もうみんな消し飛べぇぇぇ!!!!」


  そう言って少女は魔力を全方位に放つ。


 滅びの力を纏った魔力は辺りを無に帰す。


 勿論その魔力はカインの方にも飛んできた。

 だがそれを阻む者が居た。

 1人の少女と、1人の精霊。


 2人がカインに向けて何か言う。

 しかし内容は分からない。

 カインはただ、放心していた。


 銀髪の妖女は、赤髪の少年に近付こうとするも、その場で崩折れた。


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