#3 未知との邂逅(3)
更新ペース、1週間、1日遅れての更新です。
更新ペースは最大で2週間を目安に執筆していますので、もっと遅れる時もあるかと思いますが、その時は活動報告に記載致しますのでよろしくお願いします。
家を出た俺は村の付近の森の大樹様の所に向かった。道中、村人と挨拶をかわしながら、森に向かう。
森に入ると、何故か森がざわざわとしているような不思議な感覚がある。具体的にどの様に言えばいいのか分からない。ただ、何かが違うと言うことだけは分かるので、本能的なもので感じているのかなと思うと、俺って実は凄いんじゃね? とか思ってしまう。
くだらない事を考えているうちに、大樹様の下へとやって来た。
《あ、きたきた》《あの子が噂の?》《なんかカッコよくないなぁ》《びっくりするだろうなぁ》《あの子、良くお漏らししてたらしいよ?》 《え!? 本当に!? アハハっやっぱりカッコよくなーい》
ざわざわと、樹々が枝を揺らして葉が鳴るのと同時に、森の声が微かに聞こえる。
ん? ちょっとまて。お漏らしは余計だろ。みんなもちっさい頃とか良くあったよね? 昔「布団に世界地図描いて凄いね!」 とか母さんに言われてたけど。褒められない事だと気付いた時は7歳の時だった。母さんは本当に凄いと思っていたそうなんだが。普通ならもっと怒るもんなんじゃないの?
微かに聞こえてくる声を無視して、俺はティアから渡された女神像を大樹様の下に行き、掲げる。
すると
《よくぞ参った。今からこちらに招き入れる。そこで待っておれ》
その言葉の後に大樹様の根元に扉らしき物が現れた。
それを見て疑いながらも立ち止まっていると
《何をしておるのじゃ、早よう入らんか!》
と聞こえてきたので慌てて扉を開け中に入る。
扉の向こうは薄暗い一室だった。大樹の中かと思ったが、おそらく別の場所の様だ。
目が暗さに慣れていき、部屋を見回す。壁には苔が張り付いていて、それが光っている。おそらくこれが部屋に窓もない状態であるにもかかわらず、暗闇になっていない理由だろう。
そうして見回していると咳払いが聞こえた。その音の方に視線を移すと、綺麗な翡翠色の髪に黄金色の眼、胸の先端と局部だけ草で隠されていて、ほぼ全裸のグラマラスな女…性が草で…出来た椅子に座って…いた。……ん? ココハドコデスカ?
イッタイナニガオコッテイルノデショウカ。
「ぬぅ、なんじゃそんなにじろじろ見おってからに。流石に精霊のわしでもそこまで見られると恥じらいと言うものは感じるぞ? ん?
お主、聞こえておるかの? 」
訪れる静寂。
「はぁ。無視とは酷いもんじゃの」
再度静寂。
「いい加減にせぬか! 」
ペシッと乾いた音がしたのと同時に、俺は我に帰る。
頬が痛い、あ、叩かれたのか。どうやら俺は目にした状況に混乱と刺激が大きくて戸惑うのを通り越して、思考が停止してしまったて固まっていたようだ。
「お主、大事ないかえ?」
「あ……はい、すみません。目の前の状況に混乱してしまって」
「そうか、全く返事がないからどうした物かと思ったが、大事ないなら良いのじゃ。
とりあえずそこに座れ」
俺は言われた通りその場に腰を降ろしていくと即座に草が集まり椅子が形成されていき、その座面は俺の臀部を捉えた。
俺は対面にいる未だほぼ裸の女性に告げる。
「あのー、服を着てもらっていいですか? その、目のやり場に困ってしまうんで」
「ぬぅ、なんじゃこれでは不満かの?」
「不満ですよっ!」
そう言うと彼女の周りを草が多い尽くし、そして弾けた。するとさっきまでほぼ全裸だった彼女は草で出来たワンピースを纏っていた。
「これでよいかの?」
「出来るなら最初からそうしてて下さい!」
「それはすまんかった。いや、人族の男に会うのが久方ぶりじゃったもんでの。テヘッ」
「はいそうなんですか。ってなる程俺はそんなに人間出来てねぇよっ! 」
頭に片手をつけ舌を出している彼女に怒鳴りつける。テヘッとかしても可愛くねぇぞ。
「まあまあ、そうかっかするな少年。これも歓迎の内と大目に見てくれ。さっきも言った通り久方ぶりの来客でな、楽しくてしょうがないのじゃ」
まぁ久しぶりで楽しくなるのは、分からなくもない。まあ久方ぶりに会う従兄弟とかと会うのは楽しいしな。それよりも何で裸で居たんだよ。
「それは人の男は女の裸を見ると喜ぶと聞いたもんでの」
てっきり裸でいるのが好きなのかと思ったけど。……それよりいま考えてる事が伝わったの?
「その通りじゃよ」
は? ……いまなんて言った?
「ワシは普段から裸だしの」
と笑う彼女。裸族って本当に居たのか……それより……
「そっちじゃねぇ!」
怒号に彼女は驚くが、こんな事に一々反応してたら疲れると思い俺は諦め、本題への切り替えを促す。
「うむ、そうか、つまらんのう。まぁよい。それでは改めて。既に気付いておるかと思うが、わしが植物の精霊、ドリアード族の大精霊フィオじゃ。お姉さんと呼んでくれても良いぞ?」
まじかー、薄々感じていたけど、こうも明言されるとほかの大精霊もこんな感じなのかと思えて来る。それにしたってお姉さん呼びは流石にむりだろ。大体そんな年齢なのかよ。
「いや、他の大精霊達はそんな事はないのう。
しかし歳の事を言われるのは少し傷つくのう」
あぁ、やっぱり気になる。さっきからずっと俺の考えている事が筒抜けだよな。
「無論じゃ。この空間はわしの個人的な空間じゃからの。お主は丸裸も同然じゃ」
カハハと軽快に笑う大精霊。正直信じられない現象を体感している。まぁでも精霊なんだから何が起きてもしょうがないとさえ思えてしまう俺がいる。俺も能天気なのか?
「さて、今回こそ本題に入ろうかのう。お主を呼び出した理由はの、世界の敵を倒せということじゃ」
世界の……敵…? 世界の敵って魔族なのか?
「そうじゃ。近々、と言っても数年の内にじゃがの、その魔族の王が復活するという兆しがでた」
魔王復活の噂は本当だったのかと少し戸惑う俺。
そして彼女は続ける。
「しかし魔王の復活はわしらでも感じられていない、もしかすると既に復活をしているやも知れぬ。その場合、放置してしまえば世界は滅んでしまう。故に魔王を倒すしか、世界が救われる道はない」
それを俺にやれって……言うのか?
「何もお前一人だけでやれとは言っとらん。じゃからの仲間を探すのじゃ。仲間なんてどこで探せば良いんだよと思っておるなら安心せい。お主の運命に導かれる者達がおるからの。その時になれば自ずと向こうからやって来おる。面倒事もな」
最後は小声でよく聞こえなかったが、旅か。……ちょうど良いかもな。俺は旅をして見識を深める為に、成人すれば村を出るつもりだったので、良い時期だったのかもしれない。魔王を倒すという大きな目標 (半ば命令の様なもの) が出来たし。まぁ素直に従うのも悪くない。それに未だ見ぬ仲間というのが気になるしな。
「と、伝えたい事はそれだけじゃが、もう決意は出来とる様じゃの。なら餞別をやろう」
そう言って俺の目の前に現れたのは、若草色の鞄と透明な水晶の様な宝石のペンダント。……これだけ? 武器とかないの?
「これだけとは失礼な。それらは一国の国宝級じゃぞ? これでは満足行かぬか?」
マジかっ! って事は売ればかなりの大金がっ……いやっそんな罰当たりな事はしない。
考えていた事が、伝わったみたいで大精霊の顔が歪む。
「それでこれらに付いてる国宝級の付与効果は何ですか?」
俺は食い気味に詰め寄る。
「説明してやるから落ち着け。それにそこまで近寄られると照れるのじゃ」
あわあわと慌てながらも、そう言って頰を少し赤らめる大精霊。いや、その反応は意外だわ。
「まず鞄の方じゃが、大きさはそこまで大きくないが、容量は使用者の魔力量によって変わるのじゃ。次に、そのペンダントじゃが、精霊の加護が込められる様になっとる。今は何の加護もないがの。これらはわしが作ったんじゃがの———」
と言って長々と説明をしだした。正直どうやって作ったのかとか難しくてよく分からないんだけど……要するに、これらは使用者の魔力量によって発揮される効果の差があるらしく、鞄は容量上昇。ペンダントは属性精霊達の加護を集められるといった効果があるらしい。
またペンダントは今後、属性大精霊に出会う時に、これに力を込めて貰えばその加護を得られるということだ。因みに道具などに魔法効果を付与された物があるが、加護は精霊の力による効果らしい。精霊によって効果は様々であり同じものは二度とないとされている代物だそうだ。
鞄は俺にどの位の魔力量があるか分からんし、容量が把握出来ないな。ネックレスの方はおそらく、旅の途中に仲間を探すとともに、精霊達の加護を集めろっていう事なのかな?
「鞄が気になるなら魔力量を診てやろうか?」
と言われたので、是非お願いしますと、頭を下げる。
「ならそこに座って目を閉じておれ、そして呼吸を落ち着けてリラックスするのじゃ。」
言葉通り指示に従う。すると俺の頭には手を置かれた。刹那、ムムムッ! と言った声が聞こえた。その後、もう目を開けても良いと言われ、少し警戒しながらも目を開ける。
するとそこには、ほぼ裸の女性……ではなく、綺麗な若草色のワンピースを着た女性が立っていた。俺をからかう為に服を脱いだかと警戒したが、無駄でよかった。
「お主の魔力量じゃが、かなり多い様じゃ。だから鞄の容量は普通に旅をする分には問題無かろう。」
大精霊からのお墨付きを貰えたので安心する。ところで魔力量が多いって事は、魔法も使えたりするのかな?
そう考えているとフィオさんは言葉を続ける。
「魔法の行使には、大気中のマナを魔力に変換したり、体内で作られる余分な魔力をマナに変えて大気に放出したり、魔力を属性魔力に変換する為の器官であるチャネルと言うのがあるのは知っておるかの?」
小さい時から、普通に暮らしていく上で最低限の知識を村の教会から教わってはいるが、正直、真面目な子供では無かったので、覚えている事は少ない。その為、魔法の仕組みなどはさっぱり分からないが、家にある赤魔石は魔力を流すだけで、魔法が使えずとも風呂を沸かしたり、加熱調理などに昔から使って来たので魔石なら何となくわかる事を告げると。
「そうだったんじゃな。まぁ簡単にいうとじゃな、体内にある魔石と思ってくれればよい。魔石はそれ自体に魔力を流せば魔法を発動出来るじゃろ? つまり、魔法行使の為にはチャネルが無ければ使えないという事だ。
お主にはそのチャネルが【風】【火】【土】【水】【陽】【月】6属性ともあるが、分かりやすく言えば排水口が詰まってうまく水が流れない様な状態なのじゃ。つまりお主に属性魔法は難しそうじゃの。だが、気を落とすのは未だ早い—」
と言って説明を続けた。長いなぁ。まぁでも魔法を使えるようになっといた方が良いよな。だって最終的には魔王を倒すのが目的だし、強くなっておくことに越したことはないしな。
「—その理由は、精霊にある。わしら精霊には、(例えとしては癪じゃが、説明するにはこの上ない) チャネルの機能を備えておるのじゃ。
例えば魔法を行使したい者が精霊に魔法を発動してと頼むとする。そして精霊は周囲のマナか術者の魔力を貰い、頼まれた魔法を発動する。これを精霊魔法と呼び、精霊魔法は精霊との契約が出来るかどうかで決まる。それらの条件の最低限としてチャネルの有無があり、条件を満たした場合のみ契約を結べるという事だ」
と説明を受け、魔法についての仕組みは大方理解出来た。しかし精霊魔法ね、フィオさんと契約すれば魔法使えるかな?
「わしと契約を結んだとしても属性魔法の行使は出来んからな? 強いて使えるのは植物を急成長させる魔法じゃな」
ホッホッホと笑うフィオさんは、契約の仕方は教えてくれない様だ。まぁ何でもかんでも教えて貰うのも良くないな。旅は長くなりそうだし、旅先で出会うだろう人か、自分で調べていく事にしよう。
それからまた、長い長い魔法についての詳しい知識を話された。そんな一気に詰め込む様にされたって分からん物は分からんよ。
そうこうしていると、フィオさんは長い間話し過ぎたのに気付いたのか、俺が退屈そうにしていた事に気付いたのかは定かではないが。拷問じみた説明の嵐から解放されて凄く嬉しい。
「いやぁ、すまんすまん、話し込み過ぎた様じゃな」
「久しぶりに長々と話せるのが楽しかったんですよね」
俺の言葉が琴線に触れたのか、フィオさんは凄く嬉しそうにしている。
「そうじゃそうじゃ、お主よくわかっておるのう。しかし本当に話し込み過ぎたのじゃ、楽しい時間はここで終わりじゃ」
「こっちも鞄とネックレスをありがとうございました。それに魔法についても教えていくれて助かりました」
「もっと話して居たかったが、お主にはやる事があるしの、引き留めるのは悪いからな。」
そう言って含みのある笑顔を見せるフィオさん。やる事っていっても、目標が大きすぎるのは気のせいか……いや、気のせいじゃないな。
「さて、わしに付きおうてくれた例に、帰りは直接家まで届けてやろう。それではな、わしはいつでもここにおる。再び会いたくなれば、会いに来る方法を探して来るが良い。その時は大歓迎しよう。」
そう言って手を振るフィオさんに俺も振り返す。次第に俺の足元が円形状に淡く光り出し、徐々に明るみを増していく。一際大きく輝いたあと、目の前に映るのは、日は落ち、暗い風景のなかに見慣れた家屋、庭がある。どうやら本当に直接家まで送ってくれたみたいだ。
ふと向こうに行っていた間どの位、時間が進んだのか気になったので今の刻は何だろうと首に掛けられた時珠を見ると、暗めの水色だったので、今は月水の刻の終わりに近づきつつあるという事だ、向こうに行く前は陽土の刻の中頃だったので、かなり時間が経ったていた。
今は月水の刻の終わりか、という事は父さん、母さんはもう家にいるかもしれないな。
そう思い、俺は家のドアを開ける。
「ただいまー!」
余談ですが、先日友人から、「更新ペースを1日にしてそれを7日間チャレンジをしてみて」との要望があり、やってみようかと思ったんですけど。
一部一部、読みごたえある物にしようとしているのもあって、大体5000文字は超える様に執筆してますが、毎日5000文字もの物語ってかなり無理だよな。とか思いつつも、来週からチャレンジしようと思います(笑)
一部の長さは多少短くなるかも知れません。




